大学サッカー界を率いる明大・神川明彦監督「人間性を鍛え抜く」その手腕とは

大学サッカー界を率いる明大・神川明彦監督「人間性を鍛え抜く」その手腕とは SUPPORT

大学サッカー界を率いる明大・神川明彦監督「人間性を鍛え抜く」その手腕とは

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関東大学1部リーグの名門、明治大学サッカー部。長友佑都(インテル)を輩出した名門で、現在もU-21日本代表のDF室屋成が在籍するなど、世界に通用する人材を送り出している強豪チームです。

そんな明大サッカー部を2004年から指揮するのが神川明彦監督。2009年には天皇杯で学生サッカー史上初めてJ1チームに勝利し、2013年からは全日本学生選抜(ユニバーシアード)の監督も兼務するなど、その手腕に注目が集まっています。

人を作りながらサッカーチームを作る

神川監督は「18歳で大学に入学してくる選手たちに足りないものは人間性、精神性」だと考え、そんな選手たちの“人間力”を育てることを指導の中心としています。これは幼少期からサッカーだけをやってきた選手が多すぎることの裏返しだと言います。

特に“スポーツ推薦で入学する選手達は、日々練習漬けでテスト前だけ大学に来る”ことが慣例となっている現在の大学スポーツ界。しかし神川監督はこの悪しき慣例を改革しました。

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チームの練習は、なんとセカンドチームは朝6時、トップチームは朝8時から行なわれます。2時間程度の練習を終えた選手達は、一般学生と同じように授業へと向かいます。 


「はっきりいって朝6時からなんて非科学的な練習方法です(笑)。でも、学生の本分は学業ですから、授業に行かないサッカー部の学生は学生と呼べないわけですよ。練習しかしていないサッカー部員なんて、明治大学にいる意味がない」


「ここに来た意味」をひたすら考えさせる

明大サッカー部には毎年10人前後のスポーツ推薦で入部してきた選手と、一般入試で入学し、セレクションを経て入部する選手がいます。サッカー技術はもちろん、意識の高さや育った環境など背景は様々ですが、そんな彼らに対して神川監督は「自分が明大サッカー部にいる意味」を常に考えさせると言います。

神川監督の試算によると明大サッカー部で4年間活動するとかかる費用は約1,500万円(学費、生活費含む)。これだけの時間と費用をかけてまで、自分が明治でサッカーをやりたい理由とは何か。そこをとことん考え抜くことで、自ずとやるべきことが見えてくると言うのです。

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教え子である名古屋グランパスの矢田旭選手、柏レイソルの藤田優人選手に「明大サッカー部で何を身につけたか」を聞いたところ、こんな答えが返ってきたそうです。

「人間性が磨かれたとか、考える力が身に付いたとか、そういうことばかり話していました。二人とも高校卒業時点ではプロからオファーがない選手だったので、4年間で自分を見つめ直して、人間を磨くことが出来たからこそ今がある、って」

大学という一種のモラトリアム期間だからこそ、時間の使い方や意識の持ち方は全て自分次第。4年間をどう使うかを神川監督は選手に問い続けます。

プレッシャーに打ち勝ってこそ価値がある

人間性だけでなく結果が求められるのも名門サッカー部の宿命。2004年に監督に就任した際に目標に掲げたプレースタイルは「大学サッカーにおいて失点は、得点すること以上にデリケートなもの」という考えに基づいた「0−0でも勝ち点1」でした。

「攻撃は極端な話、メッシみたいなのが一人いれば得点出来ますけど、守備は組織なんですよ。選手が自分で考えて組織的に動けないと必ず失点してしまいます」

失点した時の心理状態がプレーに出やすい大学生の試合においては、失点を極力抑え、メンタルを平常に保ちながら試合を支配することが必要不可欠だというのです。その上で、組織での自分の役割を考えさせることが、神川流の実践的選手育成術です。

「どの練習もどのカテゴリーも必ず指導者が見続けることが大切」と話す神川監督

「どの練習もどのカテゴリーも必ず指導者が見続けることが大切」と話す神川監督


「選手には大学サッカー界を背負って戦えと話しています。プレッシャーに打ち勝って勝つからこそ価値がある」

明大サッカー部の監督をする傍ら、2015年のユニバーシアード大会に向けて全日本学生選抜の代表監督も務める神川監督。未来の日本代表を目指す選手達には精神力の強さを求めます。“背負うものが大きいほど人は頑張れる”という信念を持つ神川監督は、選手達にことごとくプレッシャーをかけ続けるといいます。

「さとり世代」にどう向き合うか

「冷めている」「さとり世代」と評される最近の若者ですが、熱意があり、能力に長けた選手はたくさんいるといい、大切なことは指導者がいかに引き出すかだと話します。

「今の日本の若者って色々言われるけど、真面目だし、チャレンジ精神もあるし、昔じゃ考えられないような可能性もあるわけで、そうゆうものに対して、大人達がどう向き合うかじゃないですか?」

今年3月に行なわれたタイでの遠征中、現地の日本人学校の子ども達のためにサッカー教室を開催したユニバーシアード日本代表。気温35℃のうだるような暑さの中、照り返しの強い土のグラウンドで4時間に渡り子ども達にサッカーを教え続けた選手達のひたむきな姿に心を打たれたと言います。

「22人の大学生が一言の弱音も吐かず、きちんと子ども達にも大人達にも向き合って、素晴らしいサッカー教室をやったんです。みんな子どもたちとかお母さんたちの人気者になっちゃってね。俺、感動して。今の大学生、捨てたもんじゃないなって」

暑さや疲労と戦いながらも、子ども達に笑顔を絶やさない優しさ、弱音を吐かない強さをもつ選手達に感動した監督は、その後のデンソーカップ日韓定期戦の直前ミーティングでもこの時の話をして、その精神力の強さを絶賛し、自信を付けさせたといいます。その結果、見事6-0で韓国に圧勝しました。

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日頃から大学生と間近で接している神川監督は、彼らの潜在能力の高さを高く評価しています。変に気を遣わず、たくさんの苦労をさせて、自分の将来に対しての危機感を持たせて、選手の「気付き」を伸ばす指導こそ、真の人間育成に繋がると語ります。

日本サッカー界の選手育成にもまだまだ課題が多いと話す神川監督。自身の信念と哲学に基づいて、未来の日本を担うトップアスリートを鍛え続けます。


サッカー 大学 日本代表 明治大学 長友佑都