舌戦白熱!プレミアリーグの名物監督・キャラクター&名言集

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舌戦白熱!プレミアリーグの名物監督・キャラクター&名言集

スポーティ

「私は問題を抱えている。何もかもが上手くいっているんだ」

冒頭のうらやましい言葉は、チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督が今年の4月に残したものです。昨季のプレミアリーグを制覇し、わが世の春を謳歌していた名将は、半年経った今、別な問題を抱えているようですが、会見におけるコメントの切れ味は失っていません。

最新の名言は、9月16日に飛び出しました。チャンピオンズリーグのグループリーグ初戦、マッカビ・テルアビブとのゲームでPKをクロスバーの上に打ち上げてしまったアザールについて、意見を求められてひとこと。

「あのPKは、彼ががラグビーワールドカップをPRするために、スポンサーと契約でもしていたんだろう」

モウリーニョ監督の口から粋なコメントがどれだけ出てくるかが、チェルシーの強さのバロメーターなのかもしれません。

「この国にはクリスマスなどない。ただフットボールあるのみ。選手にはリスペクトがふさわしい(2014年12月)」(PHOTO by Tsutomu Takasu)

「この国にはクリスマスなどない。ただフットボールあるのみ。選手にはリスペクトがふさわしい(2014年12月)」(PHOTO by Tsutomu Takasu)

引退したサー・アレックス・ファーガソン、アーセナルのヴェンゲル監督、リヴァプールのロジャース監督、マンチェスター・シティのペジェグリーニ監督。

最近では、2014年の夏にオランダ代表をワールドカップ3位に導き、意気揚々とイングランドにやってきたファン・ハール監督や、岡崎慎司所属のレスターを率いる百戦錬磨のラニエリ監督など、プレミアリーグの監督はキャラクターが立っており、その名言やトークバトルはファンを楽しませてくれています。

この記事は、いわば「名言&迷言ベストセレクション」。数多くの言葉から、選りすぐりの名言を紹介させていただこうという趣向です。

チョイスにいちばん迷うのは、やはりバトル仕掛け人のモウリーニョ監督です。

「私のいうこと、なすことはすべてマインドゲーム。そうでないのは唯一、試合の結果だけ」と豪語するポルトガル人監督には皮肉っぽい発言が多く、ときに哲学的なキャラクターは、日本代表監督だったオシム氏に血の気の多さと破壊力を加えた感じと表現すればいいでしょうか。

過去率いたクラブで、就任3年めのシーズンに調子を崩すと指摘された際には事実を並べて否定し、「愚かな質問はやめて、グーグルをクリックして調べなさい」とバッサリ。レアル・マドリードの監督に就任したラファエル・ベニテス監督の奥さまに「ラファがジョゼ・モウリーニョの古巣を率いるのはこれが3チームめ。いつも彼が散らかした後を片付けているのよ!」といわれれば、

「実際には彼が私の後を継いだのはインテルだけだが、半年でチームを壊してしまった。私よりも旦那を気にしたほうがいい。彼の健康管理に気を遣うなら、私について話をする必要はないはずだ」

と鋭いカウンター攻撃を発動しています。どこまで相手にするんだ?と守備範囲の広さに感心してしまいますが、ベスト・オブ・モウリーニョはこれではないでしょうか。試合中に「Boring, boring Chelsea(退屈な、退屈なチェルシー)」とチャントを歌ったアーセナルサポーターに対して、すかさず反撃。

「彼らの意見には私も賛成だ。私は(アーセナルと)過去10回戦って、一度も負けたことがない。それなら他に、私のことをどう表現すればいいんだ? 『愉快な、愉快なジョゼ』か? 10戦してひとつも勝ってないのに」

「If you love football, you love Rosicky」

そんなモウリーニョ監督に、一方的に攻撃された被害者たちの名言を紹介しましょう。「失敗のスペシャリスト」といわれたヴェンゲル監督、「イギリスに5年いたのに、おはようとこんばんはをいうのにも苦労している」といじられたラニエリ監督です。

ヴェンゲル監督は、まっすぐというか天然というべきか、正しいと思えばいいにくいことでも正面からいうのが特徴。リアクションしづらい正論の迫力は、2003-04シーズンにアンリ、ベルカンプ、ヴィエラを擁して無敗優勝し、「インヴィンシブルズ」と呼ばれたチームの中央突破を思い出します。

「チームをサポートするということは、選手の後ろに立つことだ。サポートというのは、選手たちを信じることだ(2015年9月)」

「チームをサポートするということは、選手の後ろに立つことだ。サポートというのは、選手たちを信じることだ(2015年9月)」



「批判をはねのける唯一の方法は、試合に勝つことだ」


「仕事では誰でも尊敬しているし、自分が好きなものに集中している。もちろん、それはサッカーだ。その他のことにはあまり興味がない」


「(開幕が1週間早まったことについて)スケジュールの前倒しは、プレシーズンに多大な影響を与える。プレミアリーグは誤った判断をした。選手たちが休む期間はどこにあるんだ?」

いかがでしょう。ツッコミづらいと思いませんか。このように会見ではとにかく率直な方ですが、選手思いで、会った人に対する気遣いにあふれた素晴らしい人格者でもあります。こちらの名言からは、ヴェンゲル監督のユーモアセンスがご理解いただけるのではないでしょうか。

「真に恐ろしいのはイギリスの食生活だ。この国の人々は一日じゅう、ミルクを入れた紅茶を飲み、ミルクを入れたコーヒーを飲み、ケーキを食べている。スポーツ選手が食べてはいけないものを集めた夢の国があるとすれば、ここだ」

最後にもうひとつ、これこそが選手への信頼が厚いヴェンゲル監督の真骨頂でしょう。昨シーズンのFAカップで素晴らしいプレイを披露したロシツキを評して。

「If you love football, you love Rosicky(あなたががサッカーを愛しているなら、ロシツキを愛するでしょう)」

岡崎慎司選手が入団したレスターのラニエリ監督は、御年63歳。チェルシー、アトレティコ・マドリード、インテル、ユヴェントスなどトップクラブで酸いも甘いも噛み分けてきたベテラン指揮官は、「私がチームを変えようとしたら、どうせ君たちはティンカーマン(チェルシー監督時代につけられたニックネーム。『下手な修理屋』『こねくりまわし屋』の意味)などと書くんだろう?」と余裕たっぷりです。今季から率いるレスターが失点が多いのを課題と捉えた監督は、イタリア人らしいおちゃめな発言をしておりました。

「私たちが無失点で勝てたら、ピザをおごると選手たちにいったんだ。でも、すぐに効果は出ないかもしれない。彼らはピザを欲してがっているようには見えないんだ。ピザが好きじゃないのかもね。もしかしたら私がオファーをよくするのを待っているのかもしれない。ホットドッグを追加する、とね」

チェルシーで指揮を執った経験があるラニエリ監督は、英語はうまく使えなくても、ヴェンゲル監督のようにイギリスの食生活については学んだほうがよかったのではないでしょうか。このとき記者に提案されたステーキのディナーに、ミルクたっぷりの紅茶とケーキをつけてオファーしていれば、「ピザおごる発言」から間もなく5失点を喫したアーセナル戦は違う結果になっていたかもしれません。

「握手したくないからしなかった。モウリーニョと私とは違うタイプの監督だ(2013年10月)」(PHOTO by Ben Sutherland)

「握手したくないからしなかった。モウリーニョと私とは違うタイプの監督だ(2013年10月)」(PHOTO by Ben Sutherland)

プレミアリーグ史上最高の盛り上がりを見せた「仔馬論争」

レフェリーのミスジャッジで負けても怒りを見せず、モウリーニョ監督に突っ込まれたときだけ過剰に反応するソフトな物腰のペジェグリーニ監督と、まじめで熱い42歳の若き指揮官ロジャース監督(リバプール)には、秀逸なジョークは少ないのですが、モウリーニョ監督と2人がユニットを組めば爆笑必至です。

プレミアリーグ史上に残るトークバトルを再現してみましょう。2014年2月、モウリーニョ監督の第二次チェルシー初年度。当時のモウリーニョ監督は、チェルシーは発展途上だと繰り返し語り、アーセナルとマンチェスター・シティこそが優勝争いの本命であると力説していました。

「われわれは、ミルクが必要な乳離れしていない仔馬だ。優勝は『2頭の大きな馬』によって争われる」

これに異を唱えたのがペジェグリーニ監督。「今季、新戦力獲得に最も多くの投資をしたのはチェルシーだ。仔馬というが、リッチな仔馬だ」。これを受けたモウリーニョ監督は、自分から持ち出しておきながら「仔馬の話は終わりにしよう」。次に何がくるのかと思いきや、今度は高級車です。

「マンチェスター・シティはジャガーだ。ジャガーに仮免のプレートを貼って走るなんてできないだろう?」。馬を車に言い換えただけで、ペジェグリーニ監督の投げかけには応えておらず、話はスタートに戻ってしまいました。ここで終わっても充分おもしろかったのですが、さらに記者に焚きつけられたロジャース監督が乗っかります。

「私は馬の話をするつもりはないけどね。そういうのはジョゼ(・モウリーニョ)の得意なことだろう。われわれは馬の脚の間でじゃれるチワワかもしれない」

ロジャース監督も、「つもりはない」といいながら、確実に話を膨らませています。

本当に乗りたくない方は、こういう発言をするものです。ヴェンゲル監督は、「(モウリーニョ監督が)そういう発言をするのは、失敗に対する恐怖があるからだろう」とコメントしました。アーセナルの監督には決して攻撃する意図はなく、外野から率直な感想をいっただけなのだと思われますが、やや不用意だったこのボールがモウリーニョ監督の足元に飛んでしまい、ここから「彼こそが失敗のスペシャリストだ」というカウンターにつながってしまったわけです。ピッチに入る気がなかったヴェンゲル監督は、沈黙を続けたほうがよかったのではないでしょうか。

遅れてきた大物、ファン・ハール監督にはとかく尊大なイメージがついてまわりますが、日本でよく伝えられる「激怒」「主張」といった表現とはほど遠く、彼の記者会見は「表情を変えずにボソボソと話し続けるだけ」の退屈なものが大半です。規律を重んじる管理型の監督においては、「選手のために指揮を執るのではなく、チームのために指揮を執るのだ」という発言こそが、最もわかりやすい自己紹介でしょう。

しかし、2年めを迎えたこの夏、ファン・ハール監督は珍しく記者の爆笑をゲットしました。

「私の哲学では」といつもの強面で話し始めたマンチェスター・ユナイテッドの指揮官。「選手はキャプテンを受け入れるべきだ」。何のことはない話です。

「第1キャプテンはウェイン・ルーニー。第2キャプテンはマイケル・キャリック、そして第3キャプテンは昨年もやってくれた、ミスター・『マイク』・スモーリング!」横に座って困惑していたのは、ファンのみなさんならご存じの、「クリス」・スモーリングでした。室内は爆笑、ファン・ハール監督は普段なかなか見せない満面の笑顔でスモーリングの肩に手をかけ、しきりに謝っていました。これをきっかけに、マンチェスター・ユナイテッドのCBは、一部のサポーターからマイクと呼ばれるようになってしまったのでした。

いかがでしょうか。最後は、この方の名言で締めたいと思います。引退の3年前にあたる2010年の秋、69歳だったサー・アレックス・ファーガソンの言葉です。

「私は引退を考えるには、歳を取り過ぎたようだ」

今シーズンも、ピッチが盛り上がるのはもちろんですが、場外でもエキサイティングなトークバトルが展開されることを期待します。監督のみなさま、よろしくお願い申し上げます。

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