ユーロ2016で大健闘!「ウェールズって、どんな国?」

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ユーロ2016で大健闘!「ウェールズって、どんな国?」

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イングランドの上をいく4強進出に世界が騒然!

ユーロ2016が始まる前、ウェールズがイングランドよりも上位に進出すると予想した人は、どれだけいたでしょうか。

欧州のトップクラブに所属しているのは、レアル・マドリードのガレス・ベイル、アーセナルのアーロン・ラムジー、リヴァプールのジョー・アレン、トッテナムの左SBベン・デイヴィスのみ。ガレス・ベイル以外はクラブのレギュラーとはいえず、大半の選手はスウォンジー、ウェストハム、クリスタル・パレスなどプレミアリーグの中堅クラブで活躍している選手です。右SBとして活躍したガンターは、チャンピオンシップ(2部)18位のレデイング所属、2トップの一角だったハル・ロブソン・カヌは、そのレディングとの契約が切れ、7月以降は無所属でした。

スロバキアとロシアに勝利し、イングランドをかわしてグループB1位通過を果たしたウェールスは、北アイルランドとの「英国対決」を1-0でしのぐと、ベスト8ではベルギーと対決。FIFAランキング2位の強豪から3点を奪って完勝しました。見事なフェイントでベルギーのDF2人を置き去りにしたロブソン・カヌの決勝ゴールは話題となり、プレミアリーグのクラブからオファーが集まるのではないかといわれています。

アイスランドに敗れてベスト16止まりだったイングランドを尻目に、ウェールズはベスト4。彼らはスコットランド、北アイルランドといった他の英国勢に実績で後れをとっており、このたびのユーロ2016は、1958年のスウェーデンワールドカップ以来2回めの国際大会出場でした。58年ぶりの小国の奮闘をみて、昨季のプレミアリーグで奇跡的な優勝を遂げたレスターとオーバーラップさせながら、ガレス・ベイルやラムジーを応援した人も多いのではないでしょうか。

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2009年に世界遺産に指定されたポントカサステの中心にある水道橋。北東ウェールズにあるこの橋は、1805年に完成し、地上からの高さ38m、全長307m。イギリスで最も高く長い水道橋として知られ、ウェールズ観光の見どころのひとつ

ウェールズ語で「Cymru」とは?

さて、そんなウェールズについて、みなさんはどのくらい知っていますか?「いわれてみると、サッカー選手の名前や、スウォンジーというクラブ名しか思い浮かばない」という方も多いのではないでしょうか。

ウェールズは、イギリスの正式名称である「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)」に含まれる4つの王国のひとつであり、カーウィン・ジョーンズさんという首相がいる「国」なのです。グレートブリテン島の南西に位置し、四国と同じぐらいの面積に300万人が住んでいます。首都カーディフはロンドンから西へ250km。所要時間2時間は、東京から浜松、福島、長野といった距離感で、人口30万人は青森、津、下関などの地方都市のサイズです。

「城密度」が世界一の国として知られ、その数600以上。天然の湖が398もあり、ゴルフ場が200以上あるといえば、雰囲気をつかんでいただけるでしょうか。公用語は英語とウェールズ語ですが、国民のほぼ全員が英語を話せるのに対して、難解なウェールズ語を話せるのは5人にひとり。英語でWalesは、現地語ではCymru(カムリ)。スウォンジーはAbertawe(アベルタウェ)と呼ばれ、この国には至る所に英語とウェールズ語を両方表記した看板があります。

イギリスでいちばん長い地名はウェールズにあり、北端の小さな町の綴りは「Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch」。英語とはまったく違う言葉だということが、これを見てもよくわかります。

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スウォンジーの本拠地リバティスタジアム。Ticket Officeの文字の上にはウェールズ語が表示されています

スウォンジーとカーディフがウェールズの2強

そろそろサッカーの話に戻りましょう。ウェールズには、イングランドのプレミアリーグと同じ1992年に創設された「ウェルシュ・プレミアリーグ」があるのですが、古くからイングランドのリーグに加盟している6クラブは、創設時の母国からの勧誘を断り、現在も隣国で戦っています。

有名クラブは、ウェールズ人女優キャサリン・ゼタ・ジョーンズのお気に入りであるスウォンジーと、首都の名門カーディフ・シティ。

スウォンジーでプレイした有名選手といえば、なぜか1年だけ在籍したフランク・ランパード、2011-12シーズンの途中から加わり、クラブのプレミアリーグ残留に貢献したギルフィ・シグルズソン、ユーロ2016で自国代表として活躍したアシュリー・ウィリアムズ、ジョー・アレン、そして現代表監督のクリス・コールマンです。

カーディフでは、元イングランド代表FWロビー・ファウラー、暴れん坊クレイグ・ベラミー、昨季プレミアリーグで奇跡的な優勝を遂げたレスターのシュマイケルとドリンクウォーター、アーセナルで活躍する代表の司令塔アーロン・ラムジー。そう、忘れてはならない人が、もうひとりいました。カーディフは、元日本代表MF稲本潤一が、2004-05シーズンに半年だけ在籍したクラブでもあります。

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代表でもキャプテンを務めるアシュリー・ウイリアムズやニール・テイラーが所属するスウォンジーは、2011年にプレミアリーグに昇格。これは、1992年のプレミアリーグ創設以降、ウェールズのクラブとして初の快挙でした

1部リーグに初めて昇格したのは、カーディフが1961-62シーズン、スウォンジーは1981-82シーズン。カーディフは1927年にFAカップで優勝しており、歴史と伝統ではリードしているものの、スウォンジーは2012-13シーズンのクラブ創設100周年にキャピタルワンカップを制覇し、現在もプレミアリーグに所属。チャンピオンシップ(2部)で中位のカーディフより完全に上にいっています。

ウェールズならではのスタジアムの雰囲気を愉しもう

もし、イギリスに1週間以上滞在できるチャンスがあれば、スウォンジーの本拠地、リバティ・スタジアムでプレミアリーグを愉しんでみてください。

ウェールズ南部にある人口22万人のスウォンジーは、のどかな港町。吊り橋を渡った先に静かに佇むスタジアムは美しく、地元のオールドファンが集まるスタンドには、ロンドンやマンチェスターの熱狂とはひと味違う空気が漂っています。

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ウェールズは、人口の5人にひとりが65歳以上の高齢化社会。おじいちゃんおばあちゃんがゆったり試合を愉しむスタジアムの雰囲気は、ロンドンの洗練された雰囲気とはまた違った中小規模のクラブらしい趣です

メガクラブの巨大なスタジアムに足を運び、ワールドクラスの選手が揃うホームチームを応援するのはもちろん盛り上がるのですが、小規模クラブのスタジアムのゴール裏に席を取り、アウェイチームとして乗り込んできた強豪クラブを倒せと声を張り上げるのもまた、プレミアリーグの愉しみ方のひとつです。

ユーロ2016で、ウェールズの大奮闘にいつしか感情移入してしまったように。

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