日本代表になれるかも!?キング・オブ・スポーツ近代五種

日本代表になれるかも!?キング・オブ・スポーツ近代五種 WATCH

日本代表になれるかも!?キング・オブ・スポーツ近代五種

スポーティ

これまで、Sportieでは飛び込み水球射撃とオリンピック競技について紹介してきました。今回は、少し前にタレントの武井壮さんが東京オリンピックでの代表を目指すと発言し話題となった、近代五種について紹介したいと思います。

オリンピックにおける由緒正しきスポーツ


近代五種とは、フェンシング、水泳、馬術、射撃、ランニングの5種類の競技を一日で行う競技です。近代オリンピックの父であるピエール・ド・クーベルタン男爵が、”古代オリンピックで行われていた古代五種(レスリング・円盤投げ・やり投げ・走幅跳・短距離走)になぞらえた競技を近代オリンピックでも”と考案・提案したことが始まりとされています。このような背景や、極めて過酷な競技であることから、優勝者は「キング・オブ・スポーツ」と讃えられます。

ちなみに、優勝者が『キング・オブ・アスリート』と讃えられる『男子10種競技』、『女子7種競技』という種目もオリンピックにありますが、近代五種とは全くの別物。こちらは、陸上競技カテゴリーの競技種目であって、2日間で、短距離走、中距離走、長距離走、投てき、跳躍を競うものです。


最初の種目はフェンシングから。決闘に近い形で行われるエペのルールで1分間一本勝負の総当たり戦を行います。その後、水泳200m自由形、馬術障害飛越と続きます。馬術中に選手が騎乗する馬は、抽選で決まるようになっています。

3種目が行われた所で一度得点を集計。残りの射撃とランニングは、この時の得点が上位の選手からスタートします。以前は射撃とランニングは別々に行われていましたが、2009年北京オリンピックから競技時間の短縮等の理由により、ミックスして行うコンバインド競技に変更されました。コンバインド競技では、レーザーピストルを使用し、制限時間の50秒以内に的に5発当て、800mのランニングに入ります。これを1セットとして、4回繰り返すとゴール。この時の着順がそのまま順位になります。

近代五種にプロ選手は存在しません!


近代五種競技は、運動の基礎的能力を問うランニングと水泳、技術的能力を問うフェンシングと馬術、射撃という全く性質の異なる5種目をこなす総合的な能力が試されます。このように競技自体が過酷であることに加え、馬術や射撃などがあり練習環境に恵まれることも難しいため、競技人口が極めて少ないのが実情です。日本での競技人口は、男女共に数十人。男女合わせても100人に満たないと言われています。世界的には人気のあるスポーツと言われながら、世界の競技人口も決して多いとは言えません。

近代五種競技のプロ選手は世界的にも存在せず、5種目のうち幾つかの競技を得意としている選手が多いのです。そのため、これまでオリンピックでは様々な国籍の選手がメダルを獲得しています。特に2000年シドニー大会から五輪競技に採用された女子で、これまでメダルを獲得した選手は全員違う選手というのは驚きです。

このような現状のため競技経験が浅くとも、日本代表になることも夢ではありません。今から猛特訓を始めれば、2020年東京オリンピック出場できるかもしれません。

リオ五輪女子日本代表は巡査長!

先に説明した実情があるため、現在の日本代表選手も彗星の如く現れました。リオオリンピックで近代五種女子日本代表に内定している朝長なつ美(ともながなつみ)選手です。

近代五種日本代表朝長なつ美(ともながなつみ)選手。普段は警視庁に勤務する巡査長。

朝長選手は、警視庁第四機動隊に所属する巡査です。階級は巡査長。朝長選手は3歳から中学まで水泳競技を続け、高校では陸上競技を行っていました。警察学校では、1500m走の学校新記録を出しています。警視庁五種競技部監督の目に止まり、誘いを受けて、近代五種を始めることになりました。この時の朝長選手には、五種競技の知識はまったくなかったそうです。

このスカウトから2年後の2014年全日本選手権大会に出場し、みごと優勝。翌2015年5月に行なわれたリオ五輪予選兼アジア・オセアニア選手権でアジア勢5位、総合6位となり、日本人初のリオオリンピック近代五種代表に決まりました。その後も、2015年秋の日本選手権に連勝、2016年2月にはワールドカップ6位と好調を維持しています。

なお、男子の三口智也(みぐちともや)選手も先の大会で9位となり、リオ五輪出場を決めています。三口選手は1986年和歌山県生まれ、自衛隊体育学校に所属しています。

リオ五輪では近代五種を応援しよう

朝長選手らは、今年3月に開催されていたワールドカップエジプト大会への出場を、昨今の中東・北アフリカ情勢を考慮して参加を中止し、リオ五輪本番を目指して調整を続けています。

朝長選手は、子どものころから続けてきた水泳や、高校時代に鍛えた長距離走には自信があるようですが、経験の浅い馬術やフェンシング、さらに、射撃の腕を鍛えて、ずばり、メダルを狙うと言い切っています。伸び盛りの朝長選手に期待して、心からの声援を送りたいものです。


リオ五輪の近代五種競技は、女子が日本時間2016年8月20日の03:00、男子が8月21日03:00から開始が予定されています。始まりのフェンシングから応援したいところですが、近代五種は丸1日かかる競技なので、起きていられない人は朝早起きして観戦してはいかがでしょうか。水泳、馬術と進み、後半のコンバインド競技の頃には、日本の夜も明けて、応援しやすい時間帯になっています。

近代五種は知名度や競技人口の少ない競技ですが、それゆえに日本代表を本気で狙える競技です。過酷なスポーツではありますが、運動神経に自信のある方は、ぜひとも東京オリンピックを目標に今から始めてみてはいかがでしょうか。

(ヘッダー画像は、Rachel ClarkeSingapore 2010 Youth Olympic Gamesの写真より著者作成)

オリンピック フェンシング ランニング 射撃 水泳 近代五種 馬術