サッカークラブのデータ分析術 勝つためにケガを”予防”せよ!サッカークラブのデータ分析術【前編】

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サッカークラブのデータ分析術 勝つためにケガを”予防”せよ!サッカークラブのデータ分析術【前編】

スポーティ

近年の世界のサッカーシーンでは、データ分析に急速に注目が集まっています。2014年のブラジルW杯で、ドイツ代表がSAP社の最新サッカー分析システム「マッチ・インサイト」を活用し優勝を勝ち取ったのは記憶に新しいところです。ヨーロッパの強豪クラブでは、監督がデータ分析専門のスタッフを腹心として抱えることも珍しくなくなりました。

Jリーグ公式戦でも2015年から選手のトラッキングデータを取得する動きが始まっていますが、一体どのようなデータがサッカーの分析にとって本当に役に立ち、またファンが楽しめるものなのか、まだまだ手探りの段階と言えます。

そんな中、2015年からJクラブに対して分析システムを提案し、普及に努めている方がいます。今回はその分析システムを提供するカタパルト社唯一の日本担当、斎藤兼さんに「現場で役立つトラッキングデータ活用術」をお聞きしました。前編ではサッカーにとって重要なデータとは何か、後編では実際にシステムを導入していく流れから、プロの現場で行われている分析活動を詳しく明かします。
これを読めば、あなたもサッカーアナリストとして活躍できるかも!?

カタパルト社の提供する「アスリートトラッキングシステム」とは

―斎藤さんの所属するカタパルトとはどのような会社なのでしょうか?

カタパルト社は一言でいうと「アスリートトラッキングシステム」を提供する会社です。本社はオーストラリア、その他世界の十数カ所に拠点をもっており、この分野で最も良いサービスを提供していると自負しています。

―「アスリートトラッキングシステム」とは何でしょうか?

「アスリートトラッキングシステム」は、選手の背中に取り付けてもらう小さなデバイスと、分析するソフトウェアで構成されるシステムのことを指します。選手の動きを非常に細かく計測し、そのデータを分かりやすく可視化することができ、それにより選手の評価やトレーニングメニューに活用してもらうことが目的です。サッカーでは世界の1000チーム以上に利用してもらっています。

―どのようなサッカークラブが導入していますか?

海外では昨シーズンに奇跡の優勝を遂げた岡崎慎司選手が所属するレスターや、香川真司選手が所属するドルトムントが有名です。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌、モンテディオ山形、柏レイソル、ジェフユナイテッド千葉、横浜FC、湘南ベルマーレ、清水エスパルス、名古屋グランパス、京都サンガFC、セレッソ大阪、徳島ヴォルティス。合計11クラブが導入しています(2017年4月13日現在)。


カタパルト社が提供するデバイス。選手の背中に挿してプレーしてもらうことで選手の様々なデータが取得できる

重要なのは「動きの量」と「動きの強度」

―ピッチも広く人も多いサッカーにおいて、重要なデータとは一体何でしょうか?

サッカーには沢山のデータがありますが、『動きの量』と『動きの強度』の2つを継続的に測っていくことが非常に大切であると私たちは考えています。
『動きの量』は走行距離の長さ、『動きの強度』は高強度での走行距離の長さ、加速・減速の度合いなどが代表的な指標です。どちらも大事なのは1試合の結果ではなく、ある期間でどのくらいの変動があったか、を見ていきます。

―これらのデータを継続的に測ることで、どのような成果を挙げられるのでしょうか?

データをもとに戦術分析を行うことももちろん大切ですが、現代のサッカーにおいては「ケガのリスクを軽減する」ことが非常に重要になってきています。「動きの量」と「動きの強度」という2つのデータを継続的に測っていくことで、選手の筋肉にかかっている負荷をコントロールし、ケガを未然に防ぐ有効な解決策となります。

現代サッカーでは、肉体の酷使によるケガを予防する方法に注目が集まっている。

例えば年俸10億円のスター選手を獲得できたとして、半年間のケガをされてしまったらどうでしょう。その選手は5億円分の働きしかできません。さらにはそうしたケガはサッカーに付き物と考えて、バックアップの選手も用意するでしょう。そうすると実は5億円分以上の余分な投資を行ってしまっているとも言えるのです。

Jリーグへやってくるスター選手、ルーカス・ポドルスキ。高年俸の選手のケガはチームにとって金銭的な打撃も大きい。

カタパルト社が大切にする「基準作り」

―ケガの予防は、具体的にどのような分析を行うと可能になっていくのでしょうか?

データを継続的に取ることで初めて「基準作り」ができます。具体的な基準として、選手のピークパフォーマンスが挙げられます。この選手は最速◯◯km/h、高強度での走行距離は●●kmという基準があれば、「ピークパフォーマンスからどれだけ落ちているか」によって疲労度を推し量ることができます。日々のトレーニングでだんだんと数値が落ちてきている場合、思い切って休養させるなど、思わぬケガが発生するリスクを回避する判断ができる。紅白戦や公式戦など実戦でのデータが積み上がれば、その選手は何分ほどでパフォーマンスが落ちてくるかの基準が明らかになり、選手交代などの戦術の方針や、選手評価にも利用できます。

―ピーク時のパフォーマンスを基準に置くと、トレーニング効果の可視化もできますね。

はい。サッカーはボールを使ったチームスポーツの特性もあって、選手個人の進歩が実感しづらい環境にあります。アスリートトラッキングシステムは、前日や数ヶ月前と比べてのパフォーマンスを比較できるようになるので、選手のトレーニングに対するモチベーション向上にもつながります。


サッカーにとって重要なデータとは何か、惜しげもなく披露してくれた斎藤さん。

カタパルト社が提供するアスリートトラッキングシステムは選手のケガを予防することから、試合結果やクラブ経営にも良い影響を与えようとする狙いが見えてきました。
後編では実際にサッカークラブがシステムをどのように導入し、分析活動を行っているのか、詳しく追っていきます。


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