甲子園未経験・育成ドラ4位がMLBの注目株!?千賀滉大がWBCで大活躍したわけ

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甲子園未経験・育成ドラ4位がMLBの注目株!?千賀滉大がWBCで大活躍したわけ

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TPO画像 : Photo by Sakuraikubuki

3月21日、ロサンゼルス・ドジャースタジアムで衝撃が走りしました。2017WBC準決勝アメリカ戦において、無名の日本人投手がMLBの強打者たちを鋭いピッチングでねじ伏せていきました。大リーグを代表するスラッガーたちを翻弄した投手の名前は、福岡ソフトバンク所属の千賀滉大選手です。2イニングで4者連続奪三振(合計で5奪三振)と2安打1失点、普段は先発投手であることを考えると7回からの登板でこの数字は上出来としか言いようがありません。そんな彼は甲子園に出場したことがなく、プロ入りも育成枠4位というスタートでした。さらに2016年に25先発12勝3敗という成績を出すまでは、それほど注目されていなかったのです。なぜ、彼がWBCで大活躍できたのかに迫っていきます。

プロになるまでの生い立ち

千賀投手は1993年1月30日に愛知県蒲郡市で出生しました。小学2年生から野球を始め、中学生時代は軟式野球部でサードを経験。この選手が日本を代表するピッチャーになることを予想していた人は、当時は誰もいなかったのではないでしょうか。愛知県立蒲郡高校進学後は、投手に転向。高校進学後は甲子園に出場することなく、3年の夏も県予選3回戦敗退と輝かしい実績を残したわけではありません。転機は「アマチュア球界に詳しい」スポーツショップ経営者が、ソフトバンクのスカウトである小川一夫氏に千賀投手を推薦してからでした。それから小川氏の御眼鏡にかなう形で、2010年の育成ドラフトで4位指名を受けて入団することになるのです。


蒲郡高校時代の千賀投手

プロ入り後は三軍も経験、苦しみながら歩み続けた4年間

2011年の入団初年度は、三軍が主な舞台となりました。翌年は二軍が主戦場となり、18先発7勝、勝率.700防御率1.33、83奪三振とウエスタン・リーグ屈指の活躍を披露。2013年は救援投手による公式戦無失点イニングのパリーグタイ記録を樹立、51登板1勝4敗1セーブ17ホールドと一軍中継ぎ投手としてチームに貢献しました。しかし、ここから右肩の故障に苦しみます。2014年から2015年のペナントレース終わりまで、調整不足による二軍降格や右肩の痛みにより一軍で出場する機会が激減。さらに一軍の先発投手の層の厚さもあって、二軍で好成績を出してもなかなか定着することができませんでした。それでもクライマックスシリーズや日本シリーズでは、素晴らしいピッチングでチームの日本シリーズ制覇に貢献。来シーズンに向けて、実力の片鱗をアピールすることに成功しました。そして、2016年には今までの鬱憤を晴らすような活躍をします。

日本を代表するエースへ。育成選手のシンデレラストーリー

2016年のシーズン前に一軍の先発ローテーション入りを果たした千賀投手。彼は4月14日の西武戦で一軍初の完投勝利を収め、それから先発8連勝と破竹の勢いで白星を重ねていきます。同年9月3日の楽天戦で完投勝利を果たし、勝利数12でNPB育成ドラフト出身投手による一軍公式戦におけるシーズン最多勝利記録を達成。この成績が評価されて侍ジャパン入りを果たしました。甲子園未経験者であり、育成枠から日本を代表する投手に成長。こんなシンデレラストーリーはなかなかありません。現代野球における「今太閤」と言ってもいいかもしれません。

WBCで活躍した理由は魔球「お化けフォーク」!?

ここまで千賀投手が大活躍できた理由は、魔球「お化けフォーク」に理由があります。彼の投げるフォークは打者の手前で鋭くストーンと落ち、打者からは消えるように見えるため「お化けフォーク」と評されています。通常のフォークボールは、ボールに回転をかけないよう縫い目を避けるように人差し指と中指でボールを挟みます。しかし、千賀投手の「お化けフォーク」の握りかたは人差し指だけを縫い目にかけてボールを握ります。なぜ、この握り方に至ったかというと、両指をかけずに投げるとボールがスライダー回転を起こして落ちないとのことでした。そのため、両指のバランスを鑑みてこの握り方になったのです。この握り方は「浜の大魔神」こと佐々木主浩氏の「2階からのフォーク」に類似しています(速球とフォークで投げるスタイルも酷似しています)。下記のスロー動画でどれだけ落ちるのかをご確認ください。

この「お化けフォーク」と最速156kmのストレートを組み合わせることで、打者は狙いを絞るのが難しくなります。WBCの成績は、オーストラリア戦で2回1安打無失点、4奪三振。2次リーグのオランダ戦では2回3安打無失点の3奪三振、イスラエル戦は5回1安打無失点で4奪三振。最終ラウンドのアメリカ戦では被弾してしまいますが、計16奪三振に防御率0.82と堂々たるピッチングを披露しました。

WBCを終えてから不調気味。今後はどうなる?

今季の千賀投手は苦しんでいる状況です。4月18日23時の時点では、投球回数20で防御率3.60の2勝1敗であり、被安打数17、失点10、自責点8とあまり調子が良くありません。これはWBCに出場した主力陣も同じことが言えて、筒香選手(横浜D)、中田選手(日本ハム)、菅野投手(巨人)と調子が上がらない状況です。以前、中田選手がWBC出場前に2013WBCに出場した坂本選手(巨人)などが調整に苦しんでいたからと危惧する発言をしていました。今回のケースにおいて、2017WBCの権藤博・侍ジャパン投手コーチは以下のように選手たちを見ています。


2013 WBCの侍ジャパン。調整に苦しむ選手が続出した。 Photo by kennejima

権藤コーチ曰く、選手の不調はWBCの疲れではなく、仕上がった状態で同大会に挑んだために力押しでシーズンを過ごしていることに問題があると発言しています。本来はバットコントロールや投球における「強弱」をつける場面で、WBC出場選手たちは力押しをする場面があるようです。本来この時期のペナントレースは徐々に調子を上げていく選手が多いのですが、仕上がった状態でシーズンを迎えたために身体と心が一致していない「不調」が起きてしまっているのだと仮定しています。つまり身体の調子と心の調子が一致すれば、苦しんでいる選手たちも本来のパフォーマンスに戻る可能性があります。

まだまだ本調子ではないとは言え、WBCでの活躍からアメリカのスポーツメディアはこぞって、彼のMLB入りの可能性を示唆しました。今後継続的に印象的な活躍を残していけば、日本人育成ドラフト出身選手初(外国人選手では、元広島カープのエスマイリン・カリダ投手がシカゴ・カブスでMLBデビューを果たしている)のメジャーリーガーが誕生するかもしれません。彼のシンデレラストーリーは始まったばかりであり、どこまで大成するのかに目が離せません。


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