スポーツとテクノロジーの交差点。屋内スポーツのデータ活用ワークショップ開催レポート

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スポーツとテクノロジーの交差点。屋内スポーツのデータ活用ワークショップ開催レポート

スポーティ

近年は世界的にスポーツでのデータ活用が盛んになっています。日本でもプロサッカークラブなどが徐々に活用し始めているカタパルト社のアスリートトラッキングシステム。以前Sportieでもカタパルト社の分析システムを利用しているサッカークラブについて紹介しました。
>>勝つためにケガを”予防”せよ!サッカークラブのデータ分析術

しかし屋内では人工衛星を利用したGPSが基本的に使えず、バスケットボールやハンドボールといった屋内スポーツでの実績はほとんどありませんでした。

そこでカタパルト社は、屋内でも高精度で選手の位置をトラッキングできるClearSkyというシステムを開発。日本でも今後本格的に展開していくにあたり、7月3日にこれらのシステムを利用している国内外のスポーツ・サイエンティストたちに活用事例を聞くワークショップを開催しました。

オーストラリアのバスケクラブの課題は「第3クォーターで数字が落ちる」

オーストラリアのプロバスケットボールリーグ(NBL)に所属するイラワラ・ホークスのアスレティックパフォーマンスコーチを務めるネイサン・スペンサーさんは、ClearSkyをどのように活用しているかを説明しました。

導入初期に取り組んだのは、監督やコーチ、そしてデバイスを常に身につけさせることになる選手たちへの理解を得ることでした。特に選手たちからは、このデータを「誰が見るのか」について質問を受けました。現場だけでなく強化部がデータを見ることで自分の契約に影響するのではないか、と気にしていたんです。

継続して計測することで見えてきたのは2点。1つ目は普段のトレーニングがどれも試合で要求されている動きの強度に達していなかったことで、メニューを再考するきっかけになりました。2つ目は試合の勝敗とデータを突き合わせたときに「第3クォーターで数字が落ちてくる試合は負けている」と見えてきたこと。これは選手采配やトレーニングでの評価基準に影響を与えています。

ノルウェーのハンドボール代表チームのトレーニングメニュー

ノルウェースポーツ科学大学に在籍し、ノルウェー女子ハンドボール代表チームにも帯同するマット・スペンサーさんが続きます。「ClearSkyでは膨大なデータを取得できるが、まずシンプルなところから取り組むべき」とのことで、プレーヤーロード(簡単に言うと選手の頑張りの量のこと。プレーヤーロードについての詳しい説明はこちら:https://youtu.be/Vuch8mU8VKk)と高い強度の動作(このチームでは毎秒2.5m以上の速さを高強度と定義しているそうです)の2つの差異や推移を見ています。




ハンドボールでは、試合の序盤は選手の動きの強度が高く、そこから徐々に低くなっていき、最後の10分で力を振り絞るように再び強くなっていく傾向が見えました。このフィジカルの傾向がどれだけ選手のテクニックやスキルに影響を与えているかはリサーチ中で、まずは選手交代をうまく使って主力選手のプレーヤーロードを下げない、つまり主力選手のパフォーマンスを最大に発揮させるようなマネジメントを行っています。

最近になって、トレーニングにおいては、ゲーム形式でよく行われる3対3、6対6のトレーニングが、試合よりも高い強度を計測できると分かりました。これは試合と同じような負荷をトレーニング中に選手に与えられることを意味しており、日々のトレーニングメニューを組むコーチ陣にとっての朗報であるとスペンサーさんは話します。

疲労度を知ることは、ケガの予防にも繋がる

パネルディスカッションではバスケBリーグ・シーホース三河に所属する松井啓十郎選手や、屋内スポーツトラッキングシステムでの日本で数少ない先行事例である早稲田大学バスケ部のトレーナー、佐々部孝紀さんも加わっての議論が展開されました。

早稲田大学バスケ部においても先の事例と同じくプレーヤーロードをどのように保つかを可視化・管理しており、また選手のリハビリメニューと実戦でプレーヤーロードに差がある場合にケガが再発しやすいという研究を挙げ、ケガを減らす予防にも取り組んでいます。

松井啓十郎選手からは、「自分の疲労度をコーチと見たい。どういった場面で自分の疲労が溜まるのか知ることで、ケガのリスクや強化すべきポイントが分かるはず」との話しもありました。

一方で、コーチに対しては「数値だけに囚われず、ゲームを読む能力など全体的な評価をしてほしい。徐々に人数が絞られていく日本代表合宿などで必死にアピールしようとする選手たちを数値で評価すると、選手たちも勝敗やチームへの貢献でなく、数値を上げることを目的にしてしまう危険がある」と警鐘を鳴らしました。

カタパルト社のシステムを利用する大きな魅力の一つは、世界各国の様々なスポーツで利用実績があることでコミュニティが形成され、データ利活用事例を広く学ぶことができることです。やや遅れていると言われる日本スポーツのデータ分析も、こうしたコミュニティを積極的に形成していくことで発展が期待できるでしょう。

今後もカタパルト社はこうしたワークショップを日本でも多く開催していく予定とのこと。興味を持った方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。


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