車いすバスケでもっと上へ。土田 真由美選手インタビュー

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車いすバスケでもっと上へ。土田 真由美選手インタビュー

スポーティ

車いすバスケットボールプレイヤーとして第一線で活躍する土田真由美選手。2017年2月より東京ファイターズに所属し、男子チームの中で奮闘しています。そんな土田選手のこれまでと、今後の目標についてお話を伺いました。

障がいがあるから、車いすバスケができる

ーーご自身の障がいについて教えてください。

私はスポーツが好きでトレーナーを目指していたので、体育大学に進学しました。
大学の授業で実技が多かったこともあり、腰痛を発症して整形外科に行ったとき、医師から「あなたは生まれつき股関節が悪く、将来的に歩けなくなる可能性がある」と言われました。その時は正直、将来歩けなくなると言われても実感がなかったです。日常生活は問題なかったので、そこまで気に留めていませんでした。
しかし、痛みは続き、授業で行うキャンプといった野外活動を行うのもきつくなり、トレーナーになる夢を諦めざるを得ませんでした。大学を卒業後、だんだんと長時間歩いたり、走るのが辛くなってきたこともあり、近くの専門病院で診てもらうことにしました。そこで、障がい者手帳がおりるくらい足が不自由になると診断を受けて…その時はショックでした。

ーー夢を諦める悔しい思いをされたと思いますが、その後、車いすバスケをしようと決めたきっかけなんだったのでしょうか。

車いすバスケは、障がい者スポーツの中でも漫画の題材になっていたり、花形と言われています。大学の授業で勉強したこともあり、存在自体は前から知っていました。障がいがわかって夢を諦めて、目標がなかった時に、足がわるくてもできることとして、車いすバスケに出会いました。もともと体を動かすことが好きだったので、最初は車いすの操作がうまくできない歯がゆさが悔しくて。悔しいから一生懸命練習して、できるようになるという、難しいことに挑戦し、達成する喜びの繰り返しが、もっと上を目指そうという気持ちにさせてくれました。
障がいがあるからこそ、パラリンピックを目指せるという発想の転換をさせてくれたのも、車いすバスケでした。


目標は日本代表として2大会越しのパラリンピック出場、そしてもっと上へ

ーー土田選手は日本代表として世界選手権やリオパラリンピックの予選会へ出場されています。トップレベルを意識し始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

まずは合宿に呼ばれ、日本代表の12人に選ばれることが目標ですが、12人に選ばれることに満足せず、もっと上を目標にしなければと思っています。
ただ現時点では、トップレベルということについては、正直、全く手応えを掴めていません。私はまだまだトップには入っていないので、これからもっと上を目指せるように頑張らないといけないと思います。

ーー2020年には東京でパラリンピックが行われますが、どのような期待がありますか。

障がい者スポーツの中では、車いすバスケは花形とは言え、試合会場で観戦したことがある方も少ないと思いますし、テレビで放送してもなかなか観てもらえていないのが現状だと思います。でも一度観にきてくれた人は、「思ったより迫力があっておもしろかった!」と言ってもらえるので、まずは興味を持ってもらう機会を増やしていきたいです。
今回、東京で開催することで、メディアでも取り上げてもらえる機会が増えてきたので、もっとたくさんの人に車いすバスケを知ってもらい、試合会場に足を運んでもらい、生でしか感じない迫力や面白さを知ってもらえると嬉しいです。
そして、私達の後に続く世代がもっと活動しやすい環境をつくっていくためにも、車いすバスケットボールを一つの競技として知ってもらいたいと思っているので、東京でパラリンピックが開催されることは、私たち選手にとっても、嬉しいことです。


5人それぞれの役割で活躍する車いすバスケ

ーー車いすバスケの魅力と、注目してほしい点を教えてください。

他の障がい者スポーツでは、障がいのレベルによってクラスを分けて試合する場合が多いと思いますが、車いすバスケは、色々な障がいの重さを持った人が1つのチームとして戦います。障がいの程度によって持ち点が与えられていて、1チーム5選手の合計が14点を超えない範囲で選手を構成します。
障がいによって、できるプレーの幅があり、5人それぞれが自分の役割を果たすことでチームに貢献していく。そういった視点は、車いすバスケを知れば知るほどわかってくる部分だと思いますが、そこに車いすバスケだからこそのおもしろさがあると思います。
注目してほしい点も、選手5人のそれぞれの役割です。障がいの軽い選手はプレーの幅が広く、シュートを打つ機会も多いので目に留まりやすいと思います。しかし、影では障がいの重い選手が、障がいの軽い選手が動きやすいように、道を作ったり、スクリーンにきたり、数々の職人技をこなしているのです。
初めて観るとシュートを打つような選手に注目が集まりがちですが、その活躍を支える選手がいることを知ってもらえると、見所は増えると思います。




ーー世界と比べて日本の車いすバスケの環境はどうでしょうか。

ドイツの車いすバスケの男子のリーグ戦では、女子が加わることで持ち点が1.5ポイントプラスの15.5ポイント*で参加できます。これまで日本では、男子の選手権に女子は出ることができなかったのですが、今年の5月の選手権から、ドイツと同じように女子が男子の大会に出場できるようになりました。女子選手の強化の機会がもらえる状況になったことはありがたいことです。
私自身、今年から東京ファイターズで、男子チームに参加しています。男子は、女子に比べると当たりが強かったり、高さもあるので、体格に恵まれている海外の女子選手と近しい部分があります。その中で、東京パラリンピックに向けて自分が習得していかないといけないスキルを磨かせてもらっている。今のこの恵まれた環境にとても感謝しています。

*車いすバスケのルールや持ち点については過去の記事で紹介しています。
>>漫画『リアル』の世界をリアルに体験!車椅子バスケを観にいこう!

ーー最後に、同じように障がいを持ち、これからスポーツでトップレベルを目指したいと考えている人たちへメッセージをお願いします。

私はトレーナーになるという夢を諦めなくてはならず、落ち込んだりもしました。でも、車いすバスケと出会って、新たな目標ができて、仲間ができて、いろんな方に支えてもらい、また新しい道を見つけることができました。
いろんな出来事があると思いますが、それをどう受け取るか。「障がいを持ったけれど、車いすバスケができる。」といったように、捉え方一つで変わってきます。感謝の気持ちを忘れず、自分が前向きでいれば、また違った道が見えてくるのではないかと思います。そう私は信じています。






インタビュー:萩原拓也(Sportie編集部)
文・インタビュー中写真:五十嵐万智(Sportie編集部)

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