『俺たちの「戦力外通告」』出版記念トークイベント開催

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『俺たちの「戦力外通告」』出版記念トークイベント開催

スポーティ

1月23日、野球殿堂博物館(東京都文京区)にて、元横浜ベイスターズの高森勇旗氏が著書『俺たちの「戦力外通告」』(ウェッジ)の出版記念トークイベントを行いました。

高森勇旗氏は、メジャーで活躍している田中将大投手や前田健太投手、巨人の坂本勇人選手らと同じ1988年生まれ。いわゆる“黄金世代”の選手でしたが、2012年に戦力外通告を受け引退。1軍での試合出場は2試合に終わりました。しかし、現在は企業のビジネスコーチング、アナリスト、ライターとして野球以外の才能も開花させています。

『俺たちの「戦力外通告」』も新しく開花した才能を活かして執筆しました。戦力外通告をテーマにウェブで記事をアップしたところ、1500万ビューを記録したことが出版のきっかけになったといいます。同書は、高森氏が戦力外通告を受けた元プロ野球選手25人に取材をし、通告を受けた時の状況や、その後の人生を綴っています。同じ経験を持つ著者だからこそ引き出せた元選手たちの本音と、前向きな視点が印象に残る1冊です。

石井琢朗コーチら豪華ゲストが登壇!

イベントには、同書に登場する石井琢朗氏(現東京ヤクルトスワローズコーチ)、G.G.佐藤氏(現測量・地盤調査会社 株式会社トラバース)、佐野慈紀氏(野球解説者)がゲストとして登壇。個性豊かな面々に集まった約70名の野球ファンは大喜びです。


左から石井琢朗氏、佐野慈紀氏、G.G.佐藤氏
佐野氏の「斎藤さんだぞ!」(芸人「トレンディエンジェル」のマネ)で、会場が笑いの渦に包まれたあと、トークは入団当時の衝撃的な思い出からスタート。

キャッチャーとして入団した高森氏は、初めてのキャンプをこう振り返りました。

最初は「プロはどんなもんかなあ?」というくらいの気持ちでいました。でもキャッチャーゴロを捕ってセカンドに投げる練習で、初めてプロのキャッチャーがセカンドに投げる様子を後ろから見た時に、「入るところを間違えたかもしれない、これは無理だ」と思いました。ボールがピストル弾のような速さに感じましたね。ドカーンって(笑)

内・外野手のイメージが強いG.G.佐藤氏も西武ライオンズ入団時はキャッチャーだったそうです。

当時いた松坂大輔(現中日ドラゴンズ)のストレートを「立ってなら受けられるだろう」となって受けた時、正直、怖かったです(苦笑)。「次、座りで」となった時は捕れませんでした。初日でキャッチャーはできないなと思いました

一番びっくりしたのは野茂(英雄)のボールですね。自分が今まで見てきた野球選手の球とは全然違う!ロケットランチャーで打ったかのようなボールを投げるんです。「こんなヤツがおるんや!」というのが最初の驚きでしたね

と、同級生の野茂英雄氏との出会いを語ったのは佐野氏。選手時代に一緒にお酒を飲みに行き、2時間説教をされたというエピソードも飛び出しました。

石井コーチは、入団当時の外国人コーチのもとでの練習量が少なく「こんなものなのか?」と思ったそうです。案の定、その年チームは断トツの最下位。

これを教訓にカープのコーチになった時は、これでもかというくらい選手にはバットを振らせましたね。ヤクルトにはもっと厳しいヘッドコーチ(宮本慎也)がいますけど

と、新しく就任したコーチの名前が上がり、球春を待つ野球ファンをワクワクさせる場面も。

それぞれの戦力外通告

トークテーマは「戦力外通告」と「第二の人生」へと移ります。クビを言い渡された後、すぐにスーツ姿でグラウンドへ行ったという高森氏。同僚との絆を語ってくれました。


著者の高森勇旗氏

同級生のカジ(梶谷隆幸)が走ってきて、抱き合ったんです。するとカジが泣いているんですよ。「お前が泣くな、俺の分まで長くやってくれ」と言いました。今でも仲が良くて、飲みに行くことがあるんですけど、アイツ酔っぱらったら必ず『あれで俺は絶対に1年でも長くやると決めたんだ』って言うんです

引退してから数年は現役選手がうらやましかったという佐野氏。今はずいぶん考え方が変わったようです。

クビになった時は、自分が何をしたいのか、どうすればいいのか、まったくわからなかった。その後テレビの仕事を頂いていたけれど、何となく一日一日を過ごしていた時期もあります。でも、これではだめだ、自分の基盤を作らなくてはいけないと思った時に、やっぱり野球の仕事がしたいと思いました。自分が大好きでやってきたことを仕事にできているのは、すごくラッキー。この喜びと感謝を忘れずに頑張っていこうというのが今の心境です

過去を振り返りながら話す石井コーチの言葉からは、今シーズンの意気込みも滲み出ていました。

選手時代から自分がやりたいと思っていた「走塁」を含めた攻撃をする野球に、去年、一昨年のカープで携わることができたのがすごくうれしかった。ヤクルトで同じことができるとは限らないけれど、プロデューサーの一人として、どうやって選手をグラウンドに送り出すのかを考えてやっていきます

人生のピークは常に未来にある

G.G.佐藤氏は、最後に所属していた千葉ロッテマリーンズからの戦力外通告を、2軍の優勝が決まり勝利の余韻が覚めぬうちに言い渡されたのだとか。自らを“ミスター戦力外通告”と呼ぶなど、笑いを誘いながらも、プロ野球選手のセカンドキャリアについて熱く語りました。

今、会社(トラバース)には計10人の元プロ野球選手がいます。僕らの合言葉は「人生のピークは常に未来にある」。野球選手としての終わりが人生の終わりではないことを見せていきたい。きつい練習に耐えてきたのだから、みんなやってくれますよ。

親御さんも子どもも安心してプロ野球を目指せるようにしたい。引退後、違う方面で活躍することによって、野球界を盛り上げたい。年間120人が戦力外通告を受けるので、将来的にはその全員を採用できるだけの組織、企業をつくっていくのが夢です

過酷な宣告をバネにして新たな道を歩む野球人のトークに、大きな勇気と少しの笑いをもらえたイベントでした。

現役時代のG.G.佐藤氏のものまねをする高森氏

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