500kgの競走馬を華麗に操る姿はまさにアスリート!騎手の実態
WATCH500kgの競走馬を華麗に操る姿はまさにアスリート!騎手の実態
先月行われた第95回凱旋門賞が、競馬ファンのみならず注目を集めていたのをご存知だったでしょうか。それは国内からでも海外主要レースの馬券が購入できるようになる改正競馬法が成立してから、初となる対象レースだったからです。日本から出場したマカヒキ(父はあのディープインパクト)は残念ながら14着という結果に終わってしまいましたが、日本競馬の歴史に新たな1ページが刻まれました。
今回はこれにちなみ、500kg近くある競走馬を操る過酷なアスリート、騎手について紹介していきたいと思います。
騎手ってどういう職業なの?
広い意味では馬に乗って操縦する人という意味がある騎手。そのため、競馬の騎手は一般的にジョッキーと呼ばれます。ジョッキーは、時速60kmで走るサラブレットを操る高度な騎乗技術と常に体重50kg前後に維持する厳しい自己管理能力が求められる職業です。
凱旋門賞でマカヒキに騎乗したクリストフ・ルメール。フランス生まれの騎手で、世界的に活躍した実績を持っています。2015年からはJRA初の外国人騎手として活躍中です。
落馬の際に大怪我をおうこともあるため、ジョッキーが大会に出るには免許が必要です。競馬法という日本の競馬全般についての法律にも記されており、免許は国家資格に該当します。日本中央競馬会(JRA)と地方競馬全国協会(NAR)が試験の実施と免許の交付を行っています。
ジョッキーになるための試験では、競馬に関する知識や騎乗技術を問う試験が行われるため、JRAの競馬学校やNARの地方競馬教養センターで騎手課程を学ぶのが一般的。これらの入学試験には、受験資格がいくつか定められており、年齢、体重、視力などで制限されています。
中でも年齢と体重は細かく指定されていて、年齢は入学時に20歳未満、体重は年齢区分ごとに上限指定(44kgから46.5kgまで)となっていて、これらを満たせないといかなる理由でも応募ができません。年齢が上がるほどに体重も増えていくため、若ければ若いほど有利であると言われています。
養成学校の入学倍率はなんと30倍にも!
前述したようにジョッキーを目指す人たちは騎手養成学校へ通うのがメジャーですが、毎年応募が殺到する養成学校の入学倍率は15〜30倍ととても高くなっています。そんな狭き門をくぐり抜けたジョッキーの卵たちが通う騎手養成学校では、どのようなことが行われているのでしょうか。
騎手養成学校では最初の1年間で、競馬に関する基礎を徹底的に体に覚えこませます。乗馬や走行練習の実技や乗馬していても簡単に落馬しないようにするフィジカルトレーニングなどを始め、競馬法などの法律関係、馬術などの理論を学ぶ座学の授業もあります。
1年かけて基礎を覚えた次は、トレーニングセンターでの実習が行われていきます。ここでは、馬の調教方法を学んで実際のジョッキーと同じ仕事を体験。他にも、より実践的な乗馬技術を学んでプロとして生きていくための心構えを育てていきます。
その後は模擬レースなどで、実際の大会に近い雰囲気を経験します。基本的には校内で行われる模擬レースですが、レース開催日の競馬場で行われることもあるそうです。
こうして3年間の騎手課程を終え、無事に騎手免許を取得した人たちがプロとして活躍するチャンスを手に入れられるのです。ただしどんなに活躍しようとも、毎年1回試験を受けて免許を更新しなければいけません。
模擬レースはレース日の競馬場で行われることもあるそう。
最悪の場合死に至る!?騎手の身に起こる怪我
500kg近いサラブレットを扱う騎手には常に危険がつきまといます。落馬した際に最悪の場合死に至ることもあり、まさに命がけのアスリートである騎手。死に至らずとも擦り傷や打撲に始まり、骨折や脱臼、さらには脳シントウを起こして全治数カ月の重体に陥ってしまうケースもあります。
落馬は馬が石に躓くなど予想できず、起こるかわかりません。そのため非常に危険をはらんでおり、落馬した際には打撲などで済んでいたとしても後続の馬に頭を蹴られてしまえば死に至ってしまいます。これから騎手を目指そうとしている人はしっかりとこれらの危険性があることを理解しておきましょう。
命がけである反面、競馬の騎手はトップ選手になると年収がとてつもない額になっています。JRAの開催する大会では賞金金額も大きく、過去には年間で約30億円稼いだ騎手もいます。これはあくまでもトップ騎手の話ですが、一般的なJRAの騎手でも平均年収1000万程度と高額。30億円と比べると少なく感じますが、年収5000万を超えるジョッキーが多数存在しているとても高収入な職業です。G1レースと呼ばれる最高峰の大会では1回のレースで1000万円以上稼ぐこともできます。
1987年に騎手デビューを果たした武豊は、これまで国内外で2万回以上騎乗し、その獲得賞金の総額は780億円以上と報じられています。騎手である武豊には約39億円(賞金額の5%)が取り分になるというので驚きです。
このように、一流のジョッキーになるためには過酷な道のりが待っています。養成学校に通って免許を取得するだけでも大変で、プロになった後も大怪我をする危険性があります。これらを乗り越えられた者だけが莫大な賞金を得られる騎手は、非常に過酷なアスリートと言えます。
(Photo by nilulu and double-h_by_phone)