スウェーデン発!木を投げ合うスポーツ『クッブ』が持つ魅力と可能性

スウェーデン発!木を投げ合うスポーツ『クッブ』が持つ魅力と可能性 DO

スウェーデン発!木を投げ合うスポーツ『クッブ』が持つ魅力と可能性

スポーティ

ヨーロッパやアメリカを中心に、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の人たちの間で親しまれているスポーツ、『クッブ』。
日本ではまだあまり馴染みのないスポーツですが、公園で気軽に楽しめることもあり、ここ数年で一気に広がりを見せています。
レクリエーションやアウトドアの要素を兼ね備えた、スウェーデン生まれのスポーツ『クッブ』の魅力と可能性について、先日行われたスプリングカップの様子とともにご紹介します。

木を投げ合う、エコロジカルなスロースポーツ

まずは、クッブのルールを簡単に説明します。

  1. クッブは、木の棒を投げ合って木の的を倒していく、2チーム対抗の的当て・陣取りゲームです。
  2. コートは8m×5mの長方形。
    中央にセンターラインを引き、2チームが向かい合って試合をします。
  3. 両チームのベースライン(5m)にベースクッブ(四角柱の木片)を5本ずつ並べ、コートの真ん中に、キングと呼ばれる大きい木片を1つ置きます。
  4. 相手コートに並んだベースクッブをめがけて、先攻のチームから交互に、カストピンナ(円筒の形をした木)を6本ずつ投げていきます。
    投げ方は下手投げで、ベースラインより後方から投げます。
  5. 自分のコートのクッブが倒されたら、次のターンで、倒されたすべてのクッブを相手コート内に投げ入れてから攻撃をします。これをフィールドクッブと呼びます。投げ入れたフィールドクッブは、その場に立てて、新たな的にします。
  6. フィールドクッブが相手コート内にある場合は、ベースクッブより先に、フィールドクッブを倒さなければなりません。
  7. また、相手チームが投げ入れたフィールドクッブが倒されずに自分のコート内に残っている場合は、センターラインに一番近いフィールドクッブの位置まで前進して攻撃をすることができます。
  8. 相手のコートにあるクッブをすべて倒すと、中央にあるキングを倒すことができ、先にキングを倒したチームの勝ちとなります。
    ただし、相手コートのクッブを全部倒す前に誤ってキングを倒すと、負けとなります。


クッブの試合風景

細かいルールについては、日本クッブ協会のホームページなどに掲載されています。

試合が拮抗していると、一向に決着がつかないこともしばしば。そのため、実際の大会では、時間を区切って、試合終了時に残ったクッブの数で勝敗を決めることが多いようです。

カストピンナがクッブに当たる瞬間は、木と木がぶつかり合って「カーン」という心地よい音が鳴り響き、何とも言えない爽快感に浸ることができます。
激しいスポーツと違って、パワーやスタミナは一切不要。力の差を気にすることなく、色んな人が一緒に楽しめます。また、相手コートに投げ入れるクッブの位置など、戦術や駆け引きもポイントとなり、ゲーム性も非常に高いスポーツと言えます。


狙いを定めて…


えいっ

スウェーデンの暮らしの中で生まれたクッブ

クッブ(Kubb)とは、スウェーデン語で“薪”を表します。
その昔、ヴァイキング時代に、スウェーデンのゴットランド島で、当時どの家の軒下にもあった薪を使って遊び出したのがクッブの起源ではないかと言われています。

そのスウェーデンのゴットランド島では、1995年より世界選手権が行われており、北欧やバルト海沿岸諸国を中心に、欧米から多くのチームが参加しています。
2007年から毎年ウィスコンシン州で開催されている全米大会も、参加チーム数は初年度の15チームから右肩上がりで増え続け、今では120を超えるチームが参加するほどの大きな大会となっています。

スイスのバーゼルやアメリカのウィスコンシン州を始めとした欧米の各地では、勝ち点制度のリーグ戦や、チャリティーのトーナメント戦など、様々な形でクッブが行われており、一般市民から広く愛されているスポーツであることが伺えます。


カストピンナの行方は…?


お父さん、ナイスヒット!

レクリエーションとしても、パークスポーツとしても

日本でも、レクリエーションの愛好家たちによって、2009年に日本クッブ協会が設立されました。
その内の1人、日本クッブ協会で事務局を務める高橋伸さんは、クッブの魅力について次のように語っています。

まず、ゲーム自体が楽しい。ルールもすぐに覚えられます。そして、お互いのチームが向かい合って試合をするし、相手の一投一投が戦局に影響するから、攻撃・守備に関係なくその場にいるみんなが常に試合に参加できて楽しめるスポーツなんです。また、子どもからお年寄りまで年齢に関係なく楽しめて、チームメイトが当てた時には思わずハイタッチをしたくなるから、知らない人ともすぐに仲良くなれる。こんなスポーツ、他にはないと思います。


思わずみんなでハイタッチ

高橋さんは、大人たちが公園で楽しく過ごすライフスタイル“Park Sports Lifestyle”も提案しています。これは、大人たちが公園に集い、クッブをしたり、薪ストーブを使ってクッキングをしたり、思い思いの楽器を演奏したりして、公園で過ごす時間をゆったりと楽しむというライフスタイル。体を激しく動かさなくてもゲーム性を楽しむことができるクッブを、スローライフに溶け込む新しいパークスポーツとしても紹介しています。

クッブで日本中の人たちを元気に!

4月22日には、国際基督教大学のキャンパス内で、『第4回ICUスプリングカップ・クッブ大会』が開催されました。


今大会の舞台となったのは、国際基督教大学(ICU)のアーチェリー場

会場は大学内ですが、誰でも参加できるこの大会。三重県からの参加もあり、昨年の2倍以上となる19チーム・約120名の参加者たちで賑わいを見せていました。

文部科学省が日本レクリエーション協会に委託し実施している『ニューエルダー元気塾』(元気な高齢者を増やす事業)の中で、スマートスポーツの一種としてクッブが紹介されていることもあり、ここにきてその楽しさが一気に広まったのでは。また、高齢者を始め、最近は小学校の学童などでも行われています。

クッブの人気が高まっている秘訣について、高橋さんはこのように話しています。


地域の人たちで休日に練習を重ね、見事準優勝を果たしたチーム

大会の参加者も、子どもや大学生からシニア世代まで様々。昨年行われた希望郷いわて国体で、デモンストレーションスポーツとしてクッブが実施されたこともあり、日本でも、世代や地域を超えて広まりつつあるようです。


2021年の三重国体に向けて、今から気合が入ります

クッブで日本中の林業も元気に!

もともと薪で行われていたこともあり、木さえあれば楽しむことができるクッブ。日本各地の林業を盛り上げるべく、大会には、林業の関係者も多く参加していました。地域の木を再生利用するためにクッブを作って遊ぶイベントを行ったところ、大好評だったこともあるそうです。


静岡県小山町のチームは、お揃いのハッピを羽織って参加

日本中の林業を元気にするスポーツとしても、ますますクッブへの期待が高まります。


仮装をして楽しむ参加者の姿も

年齢に関係なく楽しむことができ、初めての人ともすぐに打ち解けられる。そして、日本中にある「木」を活かして作れるから、日本の林業の活性化にも繋がる。

日本で働き方や生き方が問われている今だからこそ、クッブを体験し、北欧のスローライフに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。大会は、初心者でもエントリーできますので、気軽に参加してみてください。

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