ボクシングの不思議「減量って何でやるの?」

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ボクシングの不思議「減量って何でやるの?」

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今年、世界バンタム級で山中慎介選手と戦ったルイス・ネリ選手や世界フライ級チャンピオンだった比嘉大吾選手と、計量失敗のニュースで焦点が当たるボクサーの「減量」。ボクサーは試合数週間前から食事制限を行い、水分までも絞り体重を落としていきます。

今回は、現役ボクサーである筆者が、そもそも減量とは何か、なぜ減量が必要なのかを解説します。

試合の階級に合わせて体重を落とす

ボクシングは、階級制のスポーツです。全部で17階級あり、基本的に、それぞれの階級に合わせた体重で試合を行います。その試合に合わせるために、体重を落とすことが「減量」と言えます。現在の計量は、試合の前日に行われ、試合当日には、体重が大きく増えている選手もいます。ライトフライ級で試合をしている筆者自身も試合当日には五キロほど体重が戻ります。※48.9キロ(計量時)→54キロ以上(試合当日)

漫画の「明日のジョー」や「はじめの一歩」などのボクシング漫画で描かれるような減量は過酷ですが、決して現実とかけ離れたものではありません。サウナスーツを着込み、水を飲むことを我慢しながら練習をして脱水症状が出てしまうほどの過酷な減量を行っているも選手もいます。試合の計量が終われば、「試合の半分が終わった」と言われるほど減量は重要なものです。

※ボクシング階級表

減量は体格を活かす、試合に集中するため

なぜボクサーは、減量をせずに、今の体重に合った階級で試合をしないのでしょうか。これはボクシングを観ている多くの人が気になるポイントだと思います。そこで、先日(6月9日)メキシコでタイトルマッチを行った三迫ジム所属の元日本スーパーフライ級チャンピオン戸部洋平選手。輪島ジムの会長であり、元世界スーパーウェルター級チャンピオンの輪島功一氏にインタビューしました。


右 戸部洋平選手(元日本スーパーフライ級チャンピオン)

ーーどのくらい減量しますか?

普段が63キロほどあるので10キロ以上行います。
※スーパーフライ級は52.16キロ

ーー減量はどのように行っていますか?

一か月前から食事の量を減らし、脂質を減らすなど食事の内容にも気を付けます。
また、一日に20キロ以上走り、体脂肪を落とすために普段より運動量も増やしていき、計量の二日前ぐらいから6キロぐらいの水抜きをします。

ーー水抜きはどのように行うのですか?

メキシコでの試合ではジムで暖房をつけてもらい、サウナスーツを着て動きながら汗を出しました。その後は唾を出したりしながら体の水分を抜いていきます。アフリカで試合したときは前日の唾出しで1キロぐらい出しました。

ーー聞くからに過酷ですが、なぜ行うのですか?

僕はプロデビューからスーパーフライ級ですが、自分のパワーと体格が生かせる階級だと思っています。階級を上げてしまうとパワー負けしてしまいます。あとは、減量することで試合が近づいていると実感でき、試合に集中できるというプラスの面もあります。

輪島功一氏


元世界スーパーウェルター級チャンピオン 輪島ジム会長

ーー輪島さんが現役の時、どのように減量していましたか?

87キロ以上あったから食事をほとんどせずに練習して、水分も節制するから最後の一キロは唾も出なくて大変だった。
※スーパーウェルター級は69.85キロ

ーーなぜ減量を行うのですか?

はっきり言って減量しなくていい階級が選手にはある。でも、それでは勝つ可能性が低いから減量をするわけ。ボクシングは減量があるということで大変だと思われるかもしれないけど、しなくてもいいわけ。食事も好きなもの食べてもいい。でも、勝つ可能性を上げるために減量をする。だから、減量、減量言うなと。
なかなか皆は言わないけれど、減量っていうのは自分よりも小さい相手、やりやすい相手と戦うためにするもの。だから減量がつらいとかは言い訳になるから言うなと。自分が勝つために、僕はリーチがなかったから戦える相手とやるために減量した。減量というのは勝つためにやるもの。

減量の目的は勝つため

今回二人の日本、世界チャンピオンの話を聞く中で共通しているのは、自分が勝てる階級で試合をするために体重を落とすこと。それが「減量」であるということでした。戸部選手は、自分の体格を活かし、輪島氏は、リーチの差を克服するために「減量」を行いました。

「減量」のつらさはクローズアップされますが、「減量」は勝つための手段であり、つらさ、過酷さを表明することは、負けた時の言い訳にしかならないという言葉が筆者の印象に強く残りました。

変わり始めている今の「減量」

冒頭でも触れたように、「計量失敗」はボクシングでは、世界戦だけではなく日本ボクシングの試合でも「計量失敗」が多発し、大きな問題となっています。「計量失敗」は、階級制のスポーツとしてあってはならないことです。この問題に、日本ボクシング協会も動き始め、前日計量に合わせて、当日計量においても体重の増加を管理し、無理な減量をさせるのではなく、適正な階級を定めていくよう協議しています。

これからのボクシングは、今までのボクシングにあった「過酷な減量し、試合に臨む」のではなく、「選手自身のベストな体重で試合に臨む」という本来のあるべき形に変わり始めています。「減量」は、選手がベストパフォーマンスで試合に臨むための手段であり、そのことをボクサーも観ている観客も理解しなければなりません。

これからは、ボクシングの試合を「つらい減量を乗り越えた選手」ではなく、「勝つために万全の準備をした選手」の戦いとして是非観戦してほしいと筆者は考えます。


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