メキシコサッカーの開拓者 日本人初メキシコリーグプレイヤーが語る パチューカでの本田選手の活躍と期待
WATCHメキシコサッカーの開拓者 日本人初メキシコリーグプレイヤーが語る パチューカでの本田選手の活躍と期待
先日、衝撃のデビュー戦初ゴールを決めた本田圭佑選手。その本田選手が加入したメキシコ最古のサッカークラブであるパチューカ、そして本田選手のメキシコでの今後について、日本人で初めてメキシコでプロ選手となった百瀬俊介さんに伺いました。
TOP画像 De Nan.P.182 – Trabajo propio, CC BY-SA 4.0, Enlace
ここがすごい!実はハイレベルなメキシコサッカー
メキシコリーグは、国際経験が豊富な強豪クラブが数多くあります。
今年行われるクラブワールドカップ(以降CWC)への出場が決まっているパチューカはもちろんですが、去年CWCに出場したことで、日本でもよく知られているクラブ・アメリカ。デポルティーボ・トルーカFC、UANLティグレスなども国際舞台での優勝経験があります。北中米クラブNo.1を決定するCONCACAFチャンピオンズリーグでは、メキシコチームは他国のチームを圧倒し、過去33回もの優勝を飾ってきました。
北中米で圧倒的な強さを誇るメキシコで本田選手がプレーするのは、1部のリーガMX。リーガMXは、前期・後期の2ステージ制です。18チームが参加する前期、後期に分かれています。まず総当りのリーグ戦を行い、上位8チームがプレーオフとしてホームアンドアウェー形式で優勝をかけてトーナメント戦を戦い、前期優勝チームと後期優勝チームを決めます。
去年Jリーグで行われたような前期後期の優勝チームが年間王座を争うような試合は行いません。
実際にメキシコでプレーしていた百瀬さんはメキシコサッカーの特徴をこのように語ります。
パスサッカーが主で、リズミカルにボールを繋いでいきます。前がいなければ後ろに戻し、立て直す、という選択をとり、時間をかけて丁寧にボールを運んでいきます。同じスペイン語圏であるリーガ・エスパニョーラに比べてドリブルでの局面打開という場面は少ないです。
資金力に関しては、全体的に潤沢であると言えます。Jリーグの平均年俸が約2,000万円である一方、リーガMXは3,300万円超。他の中南米に比べて、給料や待遇の面でも恵まれているため、わざわざヨーロッパに移籍する必要がないと考えるメキシコ人選手は多いそうです。
なぜ潤沢な資金があるのか、その秘密はチームの経営戦略にあると百瀬さんは言います。
メキシコのクラブチームは多角経営でしているところが多いです。例えば、パチューカは、クラブの他にホテルやレストラン、ショッピングモール等も経営しています。メキシコではクラブの財務状況の審査が厳格なため、サッカー以外で稼いでクラブに還元する、というビジネスモデルが出来ています。
パチューカの施設に関しては本田選手も絶賛
パチューカが本田選手に求める、日本人らしさ
パチューカのヘスス・マルティネス会長は元々本田選手に興味を持っていて、モスクワ時代から本田選手の活躍を見ていました。そこで、ヘスス会長は本田選手についてよく知る元日本代表監督のハビエル・アギーレ氏に本田選手の人となりや能力について尋ねたそうです。ヨーロッパでの実績とアギーレ氏から聞いた情報を踏まえて、本田選手を欲しいと考えたようです。
パチューカとして本田選手に期待しているのは、日本人としての規律や文化です。ヘスス会長は新日家で、来日時には、ゴミが落ちていない日本のスタジアムを見て、日本人のマナーの良さに感心していました。本田選手が加入することで、試合時のパフォーマンスだけでなく、模範となるような振る舞いにより、他の選手に与える影響も大きいと考えているはずです。
パチューカでの今後の本田選手の活躍
現在、パチューカを指揮するのは、ウルグアイ人のディエゴ・アロンソ監督。アロンソ監督は、本田選手がもっているスキルを十分に見極めながら、グラウンドで使いたいと考えています。パチューカの基本のフォーメーションは4-3-3。トップ下か、左右のウィング、あるいは中盤の底か、どこに本田選手がフィットするのかを考えながら起用していくようです。
また、2400メートルというパチューカの標高も大きなポイントになりそうです。
百瀬さんは、パチューカよりも高い、標高2667メートルのトルーカでプレーしていました。
高地でプレーをするということについて下記のように話してくれました。
高地で普段プレーする選手が平地に行くと有利とは感じはないけれど、平地の選手が高地にいくと辛いです。あと高地はかなりボールが伸びるます。フリーキックが武器である本田選手は、順応していくのに少し時間がかかるかもしれません。
アロンソ監督は、練習する選手達の姿を見て調子の良い選手だけを試合に出す監督です。非常にフラットに全員を見ているので、特定の選手を特別扱いする、ということはありません。そのため、本田選手も今後は熾烈なポジション争いをしていくことになるようです。
一方で、パチューカからの本田選手への期待は大きいと百瀬さんは言います。
国内リーグ戦はもちろんですが、彼らのCWCにかける想いは強いです。過去にメキシコのチームが決勝にいったことがないので、今回決勝進出、優勝とメキシコの歴史に名を刻みたいと思っています。その原動力となることを期待されているのが国際舞台での経験、ヨーロッパでの経験が豊富な本田選手です。そういう意味で、彼が背負うものは大きいと思います。
メキシコで日本人プレイヤーの道を切り開いた百瀬さんも、同じく本田選手に大きな期待を寄せています。
自分が関わってきた場所で、日本人として初めて一部リーグで本田選手が活躍することは嬉しいです。どれだけ活躍できるかこれから楽しみで、同じ日本人として応援していきたいです。」
日本ではまだまだあまり認知されていないメキシコサッカー。一方で背があまり高くない中、パスを繋ぐ組織的なサッカーをするということで、以前より日本サッカーがモデルとすべきと言われてもいます。
メキシコサッカーに注目をするとともに、初のメキシコ1部リーグプレイヤーとなった本田選手に大いに期待しましょう。
INFORMATION
百瀬俊介(ももせ しゅんすけ)
1976年5月31日生まれ。
中学卒業後にメキシコのデポルティーボ・トルーカFCのユースチームに入団。1993年に同クラブのトップチームと契約し、日本人初のメキシコリーグ所属のプロサッカー選手となる。メキシコやエルサルバドル、アメリカのチームでプレーした後、2001年にデポルティーボ・トルーカFCで現役引退。
現在コネクト株式会社の代表取締役会長。ブラウブリッツ秋田のクラブアドバイザーも務める。