フルマラソンの筋肉痛を半日で消す回復法の理論と実践

フルマラソンの筋肉痛を半日で消す回復法の理論と実践 DO

フルマラソンの筋肉痛を半日で消す回復法の理論と実践

スポーティ

冬になり本格的なマラソンのシーズンになりました。目標とする本番レースへ向けて、練習に熱が入っている人も多いでしょう。ところで、マラソンや練習で長い距離を走った後でやってくる筋肉痛はランナーにとって悩みのたねです。

レースの翌日は、階段の昇り降りがつらいというレベルから、ひどいときは1週間以上もまともに歩けなかったりする人もいます。筋肉痛はランナーの勲章で、それも含めてマラソンの醍醐味だと言うことも出来ますが、なるべくなら日常生活に支障をきたしたくない人、あるいはすぐにでも次のレースに向けて練習したい人も多いでしょう。

そういう人は可能な限り、筋肉痛を低いレベルに抑えたいですし、もし筋肉痛になってしまった場合は、出来るだけ早く回復する必要があります。

一般的な回復方法の理論と、それを実際にレース後に実行してみた体験談を併せて紹介します。

筋肉痛=怪我であることを認識しよう

そもそも筋肉痛とは、過度の負担により筋線維が傷ついて、その筋線維を修復するために炎症が起こることが原因だと考えられています。つまり、筋肉痛が出ると言うことは、体が損傷から自然に回復する、いわば体が持つ自然治癒力のメカニズムが働いている証でもあり、一概に悪いこととは決めつけられないとも言えます。

それでも、何しろ筋線維が傷ついて炎症が起きているわけですから、筋肉痛とは、体へのダメージという意味では打撲などで怪我をした場合と本質的には変わりません。従って、筋肉痛から回復するためには、怪我をした際の応急処置のやり方と基本的には同じ考え方で臨むことになります。

RICEからPRICE, MICE, そしてPOLICEへ

スポーツに限らず、怪我をした際に行うべき応急処置の基本原則は「RICE処置」だと長い間言われてきました。Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)、これらの頭文字をとったものです。

RICEをランニングからくる筋肉痛に当てはめますと、脚を休め(安静)、氷などで冷やし(冷却)、テーピング(圧迫)をして、さらに寝転んで脚を心臓より高い位置に置く(挙上)、ということになります。

安静だけでは損傷した筋線維を充分に保護できないことから、RICEにProtection(保護)を加えて、PRICEという説を提唱する学者もいます。

さらに近年になって、Rest(安静)に疑問を投げかける学説が出てきました。休むより軽く動いた方がむしろ回復が早まるという考え方です。

そこから、RICE のRest(安静)をMove(動作)に置き換えたMICE, 同じくPRICE のRest(安静)をOptimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという言葉がスポーツの現場で市民権を得つつあります。

ここでもMICEやPOICEをランニングからの筋肉痛に当てはめまてみますと、完全に安静にしているより、ウォーキングやジョギングなどで動いた方が回復が早まる、ということになります。

休むか動くか、それは筋肉痛の度合いや周囲の状況で判断するとして、残りの3つ、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)は今でも筋肉痛から回復するための基本処置として認識してよいでしょう。

栄養補給―体の内側から治す

傷ついた筋線維を内側から修復するための材料として、栄養補給も忘れてはいけない重要な要素です。筋肉の元となるたんぱく質はもちろんですが、水分と糖質もしっかり取る必要があります。そして栄養素は出来るだけ運動後の早い段階で、つまり筋線維が損傷してからすぐに摂取することが望ましいとされています。

実践例―あるクロスフィット・トレーナーはいかにしてフルマラソンの翌日にスクワットをやったか

筋肉痛から回復するための理論は上の通りですが、それを実行するとなると、ランナー1人1人によって、あるいはレースによって状況は様々です。脚を冷やしたくても氷が近くになかったり、休みたくても最寄り駅まで歩かなくてはいけない、なんてこともあります。

専属のメディカル・スタッフがついたエリートランナーとは違い、市民ランナーは限られた状況下で取り得る最善の方法を自ら探さなくてはいけません。ここでご参考までに紹介するのは筆者が以前フルマラソンを走ったときに取った実践例です。

筆者が問題のフルマラソンレースを走ったのはある日曜の朝で、ゴールしたのは午前11時頃でした。その翌日の月曜早朝6時、つまり20時間以内にはクロスフィットのクラスを教えることになっていました。

あくまでコーチ役で、自分がワークアウトをするわけではありませんが、コーチたるものメンバーに見本を見せなくてはいけませんし、そのためには脚を引き摺っているわけにはいきません。途中で脚が攣りそうになったほどですので、ゴール直後は激しい筋肉痛でした。

それを半日で傍目に気がつかれない程度には脚を戻す必要があったわけですが、そのために筆者が取った方法は、以下の通りです。
 

1) ゴール直後(午前11時)、まずは会場で水とバナナとプロテインバーをもらって緊急の栄養補給をまず行いました。

2) その後で駐車した場所まで歩き(約10分)、すぐに両脚に冷却スプレーを過剰なぐらいたっぷりかけて冷やしました。

3) 30分ほど車を運転して帰宅。運転中も太ももには冷却パッドを乗せて、その上からテーピングで固定していました。家についた時点ではまだまともには歩けない状態でした。

4) 帰宅後、すぐに冷水シャワーを浴びました。片足づつ交互に冷水をかけることの繰り返しで、合計20分ぐらいでしょうか。

5) その後で昼食とビールを飲みながら、両足を氷パックで冷やしつつソファーでウトウトしました。ビールは余分ですが、昼食も一度にたくさん食べるのではなく、だらだら食べ続けるような感じでした。途中で1時間ほど気絶したように眠っていたようです。ちなみに精神的なリラクゼーションを別にして、損傷した筋線維の回復という意味ではアルコールは百害あって一利もありません。

6) その後は夕方から夜にかけてソファーでゴロゴロしながら氷パックで両脚を断続的に冷やし続けました。10分冷やして10分やめる。それを繰り返す感じです。足の下にクッションを置いて、少しでも足が高い位置にあるようにもしました。

7) 夜になりゴールから6~7時間経過した時点で、少しはマシになりましたが、まだ筋肉痛は残っていました。夕食も過剰なぐらい食べました。マラソンの後の栄養補給は大事ですね。この日は普段の2、3倍は食べたと思いますが、それでも翌朝には体重が2キロほど落ちていました。

8) 夕食後にフォームローラーでセルフマッサージ。思わずうめき声が出るほど痛かったのですが、これをやった後で随分筋肉痛は軽くなりました。

9) 後はもう寝るだけ。翌朝4時の起床に備えて8時にはベッドに入りました。昼寝しているわけですし、いくらなんでもそんなに早く眠れるわけはないだろうと思いきや、殆ど記憶がないぐらい、あっという間に寝入ってしまいました。

結果として翌朝には、筋肉痛は殆ど消えていました。少し脚が重い気はするものの、軽く走ることも出来ましたし、クロスフィットのクラスではスクワットの見本を見せてもメンバーには気づかれないほどでした。

勿論こんなことにならないように、レース前はしっかり準備して、そもそも筋肉痛にならなければよいのですが、人には色々事情があります。フルマラソンを完走しても筋肉痛にならないレベルまで脚を鍛えようと思ったら、一体そうなるまでにどれだけのきつい練習をしなくてはいけないのでしょうか。普通の人にはそんなことはまず出来ません。

筋肉痛になってしまったら、とにかく回復すること。そのためには冷却、栄養、睡眠(安静)、マッサージが有効ではないでしょうか、と体験からお勧めします。

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