3度目の全日本チャンピオンへ!モトクロス竹内優菜選手インタビュー

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3度目の全日本チャンピオンへ!モトクロス竹内優菜選手インタビュー

スポーティ

2014年、2017年の全日本モトクロスレディースチャンピオンに輝いた竹内優菜選手。若くして常に優勝争いに絡んでくる速さと強さを兼ね備えたトップライダーです。

ランキング4位に終わった去年の雪辱に燃える竹内選手に、自身のモトクロスをはじめたきっかけからレースに対する考え方、モトクロスの普及活動、今シーズンの意気込みについて聞きました。

「空を飛ぶ父」に憧れた幼少時代

ーーモトクロスを始めたきっかけを教えてください。

赤ちゃんの頃からお父さんのモトクロスの練習について行ってました。5歳の頃にお父さんがジャンプを飛ぶ姿を見て「私も空を飛びたい!」と思ったのがきっかけです。

ーーモトクロスに興味を持ってからプロを目指すきっかけは何だったのですか?

小学校1、2年生の頃に海外の女性モトクロスライダーの動画を見てかっこいいと思い、憧れました。その選手がアシュリー・フィオレク選手なのですが、当時私は小学生だったので、ただ単にかっこいい女性がいるなという認識でした。

アシュリー選手は、実は聴覚障害を持っていて耳が聞こえません。視野はヘルメット、ゴーグルがあるので首を傾けないと横も見えません。モトクロスは、後続の位置やバイクの調子など耳で感じ取らなければいけないので、大きなハンデです。それにも関わらず活躍している彼女を見てすごいなと思いました。アシュリー選手をきっかけに、自分はモトクロスで女の子の世界1位になりたいなと思いました。アシュリー選手の凄さを理解し、彼女みたいになりたいと思ったのがプロを目指すきっかけです。

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視覚障害を持ちながらもWoman ‘s Motocross Championshipのチャンピオンを4度獲得したアシュリー・フィオレク選手

ーープロになりたいと思ったのは早かったのですね。

周りに男の子が多くみんな速かったので、そのライダー達に負けないようにしようと意識して、性別関係なく誰が相手でも勝つぞと思っていました。私は昔からモトクロスに限らず、負けん気がすごい強いので。チャンピオンは常に目標でした。キッズスーパークロスというレースで50ccで一番上のクラスで女の子初のチャンピオンを獲って、そこからは自分の中の課題をクリアしていきましたね。

ーーお父さんの指導がかなりスパルタだったそうですが、モトクロスを始めた当時から厳しかったのですか?

そうですね。お金がかかるスポーツですし、お父さん自身モトクロスをやっていたので、やるからにはという感じで昔から厳しかったです。始めた頃は練習をする度に泣いていました。最初はお父さんに怒られたくなくて頑張っていましたが、だんだん自分でも負けたくないと思えてきましたね。

ーーバイクに乗ることが一番のトレーニングだと思いますが、何かバイクに乗る以外にトレーニングはされていますか?

ボクシングジムにも行っていましたが今はやっていないです。腕の筋肉はつき易いですが、モトクロスの場合、腕の筋肉は基本的にいらないんですよ。

バイクを腕で抑え込むイメージがあったので意外でした!

バイクを足でホールドするため、腕の力ではなく重要なのは足です。今はジムに行って足腰を筋トレコーナーで鍛えてからラン、足が痛くなったら自転車に乗るというメニューをこなしています。とにかく足だけを集中してトレーニングしています。
ただお世話になっている*¹カッピングの先生によると、自分の体が疲れすぎていて悪いものを排出しきれていないと言われました。
*¹ガラスの容器等を皮膚にあてうっ血させることにより、汚れた血液(不用物や老廃物)を取り除く治療法。

ーーSNSでもあげてましたよね。

あの時が一番酷くて、1日目よりも2日目に動けなくなるほど全身が痛くなります。しかしそれを越えるとすごく楽になりますね。



ジムが休みの時は、家の前で50メートルを休みなしで20本走ったりしています。スクワットもできないほど膝が悪いので、先生に負荷がかからない走り方を教えてもらって取り組んでいます。シーズンが4月に始まって10月に終わりますが、後半になると、どの選手も今までの蓄積があるので体がガタガタになります。トレーニングと同じくらい体のケアも重要です。

ーーご自身のライディングスタイル(強み)について教えてください。

ジャンプが得意で体力もあるので、攻めた走りが特徴です。モトクロスをやっている以上かっこいいと言われたいので、攻めるが自分のモットーです。自分には飛ぶことに対する恐怖心がないので大きなジャンプができます。ジャンプでひねる(スクラブというスピードを落とさず低く飛ぶ技術)とタイムが縮まるのでそこで差をつけます。ジャンプという強みを持ち、苦手がないのが私の強みです。


モトクロスが好きで走れることが嬉しいので苦手なコースはありません。得意なコースを強いて挙げるならばここ3、4年負けてない広島の弘楽園。最初のチャンピオンも広島で決めました。

強くなるきっかけになった大怪我

ーー2015年第8戦で鎖骨骨折という大怪我がありました。初めての大怪我で考え方やスタイルは変わりました?

考え方が変わりました。当時高校生で自分の気持ちだけで走っていたのですが、怪我をしてからは攻め方も自分で考え、頭の中で構成するようになりました。最後に一位になればいいと思えるようになりました。怪我をするまではずっと一位でないと嫌だと思っていましたが、最後に勝ったものが勝者なのでそこを目指せばいいやって思えるように変わりました。怪我の時は記憶がなくて、いまだにあの2日間の記憶が戻らない。レースに行ってたことは覚えてますけど・・・。

ーー年間表彰式などで他のモータースポーツに触れることがあると思いますが、他のカテゴリーに興味はありますか?

そういうの(年間表彰式)がきっかけでロードレースの選手がモトクロスコースに来てくれて話すようになりました。すると去年のお正月にロードレーサーの方からミニバイクに誘ってもらいました!ロードの知り合いも増えてやってみたいなと思ったタイミングで誘ってもらって改めてモトクロス以外でも2輪は楽しいなって思えました。ロードに興味を持ち始めて去年鈴鹿で行われた全日本ロードレース選手権の最終戦に始めて観に行きました。ジャンプはないけどロードならではの駆け引きがあって感動しました。

チームとHondaが開花させた才能

ーー竹内選手は現在Hondaのライダーとして活躍されています。Hondaや現在のチームとの関係はいつから始まったのでしょうか?

15歳までスズキで走っていましたが、実はその時にバイクを辞めるつもりでした。勝ちたいのにチャンピオンを獲れなかったのでやっても意味ないと思って。当時高校受験があったので、スポット参戦でホンダに乗り換える予定でしたが、その時に今のチーム(TEAM HAMMER)に入らないかと誘われました。スズキで走っていた時に、ジュニアライダーが飛ばないセクションを自分が飛んでいて、それをTEAM HAMMERの高濱監督が「あの子はガッツがある」と思って見てくれていて、そこからホンダにスイッチしました。

ーーメーカーやバイクの違いは大きいと思いますが、うまく適応できましたか?

2ストはクラッチが重要で4ストはクラッチがいりません。スズキ時代のクラッチ癖が抜けなくて始めは苦労しましたがそこだけですね。ロードはマシンの性能に左右される割合が大きいですが、モトクロスはとにかく乗り手次第です。メーカーは関係なく、速いライダーはどれに乗っても速い。いいマシンでも勝てないライダーはいます。

ーーこれまでの競技人生で印象に残ったレースはありますか?

初優勝した藤沢です。初優勝が15歳でそれまで長かったですね。ホンダに乗り換えた年で、ずっとその年2位で万年2位と雑誌で書かれたのがとても悔しかった。絶対勝つと意気込んだレースでした。スタートは一番イン側で不利でしたが、高濱監督が「ここにしろ。負けるなら負ける、これで決まるとなったらお前はどれだけ頑張れるか」と言っていただき、そこでスイッチが入りました。ずっと2位につけて巡ってきたチャンスを見逃さず、1位の選手を抜いて優勝。実力で勝ち取ったので嬉しかったです。



チャンピオンを獲ったときは4位以内に入ればよくて、ほぼ決まっていました。しかもその一戦を落としても次戦勝てば良いという状況でしたので、初チャンピオンより実力で勝ちとった初優勝の方が印象に残っています。

ーー競技と仕事の両立は苦労があると思いますが、普段はどのような生活を送っているのでしょうか?

父親が会社を経営していますが、甘えてしまうので自分で仕事を見つけたところで仕事をしています。モトクロスに対する理解があり、応援してもらっているので感謝しかないです。

ーー昨シーズンは序盤での不運に第7戦のキャンセルもあり苦しいシーズンとなりました。

開幕戦ではマシントラブルでリタイアだったのですが、マシントラブルはモトクロス人生で初めての経験で、誰のせいでもないことからメンタル的にも辛く、第2戦まで引きずってしまいました。そこで尊敬している方が声かけてくれて「ゼッケン1番の年に試練があるということは、今後ゼッケン1番を取れるように与えてくれた試練だから気持ちを切り替えていけばいい」と言ってくれて立て直すことができました。開幕戦のマシントラブルでのリタイアは自分の中で大きかったですね。ただポジティブにいようとは常に思っています。ネガティヴになると運を捨てているようなものなので。

ーー第8戦直前に腰椎分離症になったにも関わらず見事2位を獲得しましたね。

あれはやばかったですね(笑)。あまりにも痛くて病院に行ったら分離症と言われてテーピングでなんとかしました。モトクロスの疲労が原因で私生活にも支障が出るくらい痛かったです。ただ怪我をしていようがしていまいがスタートに並んだらみんな同じ条件。怪我を言い訳にするなら出なければいいだけの話。だからそれまでにできることをしました。

ーー不運だった序盤の2戦と第7戦がキャンセルになったことを考えるとシーズン4位は驚異的な成績ですね。

あと1戦あればチャンピオンに近づけたので悔しいですね。しかしシーズンで2勝してチャンピオンの意地を見せることが出来たと思います。

モトクロスの魅力を多くの人に伝えたい

ーー竹内選手は子供達やモトクロス初心者の為のスクールをオフシーズンを中心に行なっています。素晴らしい取り組みだと思うのですが、始まったきっかけを教えてください。

地元にコースがあり、知り合いの人たちが教えて欲しいということで、スクールというよりレッスンみたいな感じで教えていました。すると参加してくれた子供達がとても分かり易かったと言ってくれたのが広まって、スクールをやってくれないかと言っていただけたのがきっかけです。他のライダーはスクールをやってないので、自分で良ければと思ってはじめました。もともとサポートしてくれているコース場に、イベントやるなら使って欲しいと言ってもらいました。全て込みで1万円と値段も安くてやり易いと思います。

ーーもともと個人的なコミュニティから始まったのですね。なかなか触れる機会がないモトクロスを初心者が学べるのは素晴らしいです。しかもチャンピオンの直接指導で!

公道しか乗ったことがない初心者の方には、土の感覚を掴むところからスタートします。教えるには練習で乗るだけではなく考える作業が増えるので、自分もスクールをやりながら成長させてもらってます。とにかくスクール開催するときは少人数で男女年齢問わず、その人に合った教え方をしています。名前を呼んでコミュニケーションを取りたいのでゼッケンには番号ではなく名前を貼ってもらってます。スクールに参加してくれた人がモトクロス場に応援してくれるのは嬉しいですね!


3度目のチャンピオン、そしてその先へ

ーーもうすぐシーズンが始まります。今シーズンの目標やこれから先、チャレンジしてみたいことがあれば教えてください。

日本では敵なしというくらい強い走りをしたいです。いつか海外は行きたいですね。お金の問題はあるけれどずっと憧れです。今は日本での活躍と大きなバイク(日本のレディースクラスの排気量は150ccだが海外は250cc)に乗って海外に向けて取り組みをしています。ヨーロッパの選手を見て刺激されてきましたし、コースが広く、アグレッシブなスタイルは自分のスタイルに合っているのでヨーロッパに行きたいですね。

ーー最後にファンの皆さんへ一言お願いします。

去年はマシントラブルなどでチャンピオンを逃してしまったので、今年はチャンピオン奪還はもちろん、みなさんに楽しいんでもらえるような走りをしたいと思います。応援よろしくお願いします!



JAPEXのGAERNEのブーツを身につけてシーズンを戦います。GAERNEのSG12というブーツはカラーバリエーションが豊富で抜群の強度と履きやすさの両立を実現しており、竹内選手お気に入りのブーツです!


そして様々な競技で使われているスポーツアイウェアメーカー、SWANSとコラボしたゴーグル、竹内優菜モデルが2019年3月に発売決定。性別、ヘルメット・ウェアの色に関わらず合わせやすいニューモデルは竹内選手のこだわりが詰まっています。竹内選手と同じくとてもかっこいいレーシングギアを身につけて、スクールに参加するのもいいですね!現地で応援する時はこのレーシングギアが目印です!

編集後記

フレンドリーで優しい印象の竹内選手ですが、インタビュー中の言葉からはとても強い想いを感じました。トップアスリートは、競技のレベルで一流なのはもちろん、インタビューでのポジティブな発言やチームやファンへの感謝の言葉、チームメイトとのコミュニケーションを疎かにしないこと、何があってもネガティヴな発言をしないことを徹底することにより、運さえも味方につけ、絶対的な存在としてその世界の頂点に君臨しているのでしょう。

今回のインタビューで、竹内選手はこの先モトクロスにおいて絶対的な存在になる可能性を秘めた選手だと感じました。モトクロスをはじめ、モータースポーツはまだまだマイナーです。これから日本を代表する選手が出てきたときに、「ブーム」で終わるのではなく「文化」にしていくために、選手達をしっかり支える環境を整えることが必要だと有望なライダーのお話を聞いて改めて感じました。

2019シーズンは3度目のチャンピオンを目指す竹内選手の活躍に期待しましょう!


バイク モトクロス 竹内優菜