自転車競技・今村駿介選手 ーチームでの役割を100%果たすためにー
WATCH自転車競技・今村駿介選手 ーチームでの役割を100%果たすためにー
オリンピックが開催されるのは、4年に1度。アスリートにとって、4年の月日は決して短いものではありません。
そのためオリンピックは、ベテランのアスリートにとって、その競技人生のすべてをかけた現役最後の大舞台となることも珍しくありません。しかし、その一方で、若い選手には世界で活躍するための第1歩となることもあります。
今回のパリオリンピックでチームパーシュートに出場する、チームブリヂストンの今村駿介選手は、これからの日本自転車界を牽引するであろうサイクリストの一人です。今村選手にパリオリンピックへの意気込みと、将来に向けた目標などを聞きました。
TOP写真:今年2月にインドで開催されたトラックアジア選手権大会のエリミネーションで優勝した今村選手。Photo by 日本自転車競技連盟
日本代表レベルのチームに加入し、意識が変わる
ーー今回のパリオリンピックではチームパシュートで出場されますが、今村選手の考える目標を教えてください。
今村駿介選手(以下、敬称略)「タイムとしては、予選で日本記録の3分48秒に迫るようなタイムを出すことが、目標となります。より現実的には3分50秒を切るような走りをしなければ、一回戦以上の戦いではよいリザルトを残すことができないので、まず、日本記録に近いタイムをコンスタントに出していくことで、最終的には上位入賞というのが目標になります。」
ーーその目標に向けて、今村選手が果たすべき役割はどのようなものだと、ご自身は考えていらっしゃいますか。
今村「今までのチームパーシュートで、私は一番最初にチームを引っ張ることが多かったんです。チームパーシュートは4人で走りますが、私以外の3人は、中距離が専門の選手です。私は彼らと比べると短めの距離の方が得意なので、一緒に走るときには彼らが作ったスピードにしっかりと乗せてもらって、最後の場面までしっかりとチームのスピードについていく、ということが私ができることかな、と思います。もし、私が一番最初に先頭を走ることになったなら、少しでも長く先頭を引いて、確実にラップタイムを刻んでいくことが、私の役割になりますね。」
ーーかつて今村選手がジュニアからシニアにカテゴリーを変えたとき、成績が伸び悩んだと伺っております。その状況を変えるきっかけとは、どのようなことだったのでしょうか。
今村「トレーニング自体は大きく変わったわけではないので、むしろ自分の意識が変わったのだと思います。
東京オリンピックが近づいていた時点で、私はチームブリヂストンに加入し、日本代表レベルの選手がより身近にいる環境になりました。そうした環境にいるうちに、私自身が『この強いチームメイトたちに負けたくない』という気持ちが出てきました。高いレベルの選手と一緒にいることで、自分が目指したいレベルがクリアになり、自分の競技に対する意識が変わっていきました。
トレーニングにフォーカスすること自体は得意な方なので、トレーニング自体が何か大きな変化があったということはないと思います。やはり、高いレベルの選手と一緒にいることで、自分の競技への意識が変わったことが変わったことがすごく大きいと思います」
パリではチームパーシュートに出場する今村選手。Photo by 日本自転車競技連盟
「本気度」を高めた東京オリンピックでの悔しさ
ーー東京オリンピックでは、悔しい思いをされたチームブリヂストンの選手が多かったと思います。そうした共通の悔しい経験が、今回のパリオリンピックに向けてチームを良い方向に動かした要因になった可能性はありますか。
今村「はい。前回は東京オリンピックの1年半ほど前からチームパーシュートのタイムを縮めることはできていましたが、その一方で選手自体の本気度と言いますか、『自分は東京オリンピックでどれだけ活躍したいのか』という思いは薄かったように、今は感じています。
東京オリンピックの時にも、チームパーシュートでオリンピック出場を目指していました。実際のオリンピックで走ることはできませんでしたが、オリンピックの直前まで出場に向けてチームとして努力を積み重ねることで、タイムは確実に縮まりました。
この経験があったので、東京オリンピックが終わってから今までの3年間、次のパリオリンピックではチームとして結果を出そうと、気持ちを入れ替えることができたのだと思います。
東京オリンピックに、チームパシュートという種目で出場できなかったということに、チームとして非常に悔しさを感じていたのは事実です。でも、あの時に悔しさと手ごたえの両方があったから、パリオリンピックに向けてチームの結束が一層強くなったような気がします。」
ーー今村選手の年齢を考えると、おそらくパリの次のオリンピックの出場を考えることも可能かと思います。パリの次のオリンピックでは、トラック競技だけでなく、ロードレースでも出走することは考えられていますか?
今村「今の時点ではまずはパリオリンピックが第1目標です。でも、次のオリンピックでは、個人種目で日本代表になってみたい気持ちもあります。チャンスがあればロードレースでもオリンピックに出たいですし、海外にも挑戦してみたいです。
トラックで戦える力を持っていて、かつロードレースでも力を出せる選手でありたいです。また、ヨーロッパではロードレースとトラックの両方で実績を残しているサイクリストもたくさんいます。自分も、将来的にそのような選手になりたいと思っています。」
今回がオリンピック初出場となる今村選手。パリオリンピックで自分の役割をしっかりと認識する一方で、将来は海外で活躍する目標も見据えています。このオリンピックで日本代表のサイクリストとして結果を出すことが、実力を海外へアピールするチャンスとなるであろうことを、誰よりも理解している様子でした。
INFORMATION
今村駿介
パリオリンピック出場予定種目:チームパーシュート
プロフィール:
1998年生まれ、福岡県出身。競輪選手だった父親の影響で幼少期から自転車に慣れ親しみ、高校入学と同時に自転車競技を始める。高校3年生の夏にジュニアトラック世界選手権(2015年)ポイントレース種目で優勝し日本人中距離選手初のマイヨ・アルカンシエルを手にした。中央大学在学中も全日本選手権優勝など数々の成績を収め、2018年チームブリヂストンサイクリングに加入。日本ナショナルチーム中距離選手として活躍する傍ら、チームではロード・トラックの二刀流をこなしている。2022年ブリヂストン・アスリート・アンバサダーに就任。
INFORMATION
TEAM BRIDGESTONE Cyclingとは
東京1964オリンピックが開催された同年にブリヂストンサイクル自転車競技部として設立したブリヂストンの自転車競技チームで、2024年で創立60周年を迎えます。
様々な困難を乗り越えながら夢に向かって挑戦し続けるすべての人の挑戦・旅(Journey)を支えていく、というブリヂストンサイクルの思いを表現した「CHASE YOUR DREAM」を体現するべく、「チームブリヂストン アスリート・アンバサダー」を中心に、各々の競技で表彰台を目指し挑戦するアスリートが所属しています。