自転車競技・太田りゆ選手 ー自信と楽しさを支えにオリンピックの大舞台へー

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自転車競技・太田りゆ選手 ー自信と楽しさを支えにオリンピックの大舞台へー

スポーティ

2024年の夏を彩るスポーツイベントの一つ、パリオリンピック。そのパリオリンピックの自転車のトラック競技に、チームブリヂストンから太田りゆ・橋本英也・今村駿介の3選手が日本代表として出場します。

今回の記事では、パリオリンピック日本代表である太田りゆ選手に、この夏のオリンピックに向けた目標や、前回の東京オリンピックから今回のパリオリンピックまでに経験したことなどについて、話を聞きました。

TOP写真:今年5月にカナダで開催されたUCI トラック・サイクリング・ネイションズ・カップで銅メダルを獲得した太田選手(写真右)。提供:日本自転車競技連盟、BSC

パリオリンピックのメダル獲得に向けて

ーーまず、パリオリンピックでの、太田選手の目標を聞かせてください。

太田りゆ選手(以下、敬称略)「目標は、自分が出走する種目(スプリント*1・ケイリン*2)でメダルを獲得することです。オリンピックの舞台で自分のベスト・パフォーマンスを発揮することが、私の最大目標になります。」

*1:スプリントとは、助走としてトラック3周を走ったあとのゴール前200mのタイムを競う競技です。予選と本選に分けて行われ、予選はタイムトライアル方式で本選に進む上位18名を決定し、本選では1対1の勝ち抜き戦となります。
*2:ケイリンとは、5人以上の選手が一斉にスタートし、決められた周回を走ってゴールした順位で勝者を決める競技です。

ーー前回東京オリンピックの時には、太田選手は補欠という立場でした。今回のパリオリンピックに出場するために、太田選手が意識して変えたことなどはありますか。

太田「3年前から大きく意識を変えたことの一つは、自分に自信を持つようにしたことです。というのも、それまでは競技の結果次第で、私自身が自分の価値を評価しすぎていたんです。そのことに気が付いて、自分を様々な面で正しく評価しようと決めました。日々のトレーニングに関して、集中して行うという姿勢には変化はありません。でも、いまは競技を楽しくやっていくということも意識しています。」

ーー自転車競技は体力・精神的にも厳しい競技だと思います。太田選手の考えるこの競技の楽しさはどんなところにありますか。

太田「普通の状態の自分では考えられないような、強烈な興奮状態でレースができることです。レースで結果が出たときももちろん楽しいのですが、特にそれまでの自分自身を超えることができた瞬間が、とても楽しいと思っています。」

ーーレース前の緊張状態ですら楽しめるような感じでしょうか。

太田「そうです。おそらく、自転車選手としての私を知る方のほどんどが、『太田りゆは、気が強い選手だ』と考えていらっしゃると思います。でも、例えば、今お話ししているこの状態で私がレースをするとなると、まず最初に私が感じることは『怖い、どうしよう』という恐怖感なんです。
でも、ウォーミングアップを終えてスタートラインに立つ頃には、アドレナリンが体中に充満して、自分じゃない全くの別人になっている感じがします。その時の感覚が癖になって、自分はこの競技を続けているのだと思います。」

パリオリンピックにはスプリントとケイリンの2種目に出走。提供:日本自転車競技連盟、BSC

将来の女性サイクリストのために

ーー前回の東京オリンピックでチームブリヂストンサイクリングの選手は、太田選手のように、悔しい思いをされた選手が多かったように見受けられました。そうした共通の悔しい経験が、今回のパリオリンピックに向けて、ご自身や他のチームメイトの意識を変えたようなことはありますか。

太田「はい、東京オリンピックの時の悔しさというのを、みんなが忘れずに、いままでチームとして活動することができたと思っています。またこの3年の間に、個人的にも、ブリヂストンのメンバーの中でかつてオリンピック出場経験のある選手と、お話をする機会があったりしました。
そこで私が思ったことは、まず、スポーツ選手が過去の悔しさを払拭するには、やはりレースに出るしかないということです。また、オリンピックに出られなかった悔しさは、オリンピックに出ることでしか晴らすことができないと私自身も考えたので、いままで日々を積み重ねることができました。そうした意味でも、チームブリヂストンの活動が自分を支えてくれたと言えるのではないかと思います。」

ーー日本の自転車界(トラック・ロードレース・その他の種目を含む)では、今でも女性のサイクリストの数は少ないと思います。太田選手はSNS等でいろいろな情報を発信していますが、ご自身が女性プロサイクリストの代表的な選手の一人であると、意識されることはありますか。

太田「あります。まず、自分の実感として、とてもありがたいことに、同じ女性からとても応援されていることを感じることが頻繁にあります。例えば、私のインスタグラムのフォロワーの男女比は、最初は男性90%に対して女性10%くらいの割合でした。でも今は、女性が20%くらいを占めています。

また、以前競輪のレースで、スタート前に選手みんなでバンクの中に入場した時、他の女子選手へは男性ファンからの声援がほとんどだったのに、私が入場した途端に、自分が男子選手なのかと思ってしまうくらいのたくさんの女性ファンの黄色い声援をいただいたことがありました。その様子には、同じレースを走る他の女子選手もびっくりしていました。

こうした経験しているので、自分が女性サイクリスト・女性ファンから注目されていることを日々感じています。」

ーー近い将来「大きくなったら太田りゆ選手みたいな自転車の選手になるんだ」と話す女の子を増やすために、太田選手はこれからどのような活動ができると思われますか。

太田「すでに行っている活動の一つに、サイクリングキャンプという自転車に乗る機会を作るイベントがあり、そちらに私も定期的に参加しています。
実は私が最初に自転車競技に触れた機会が、7年前に開催されたこのサイクリングキャンプだったんです。私自身、7年前のサイクリングキャンプに参加する時には相当な勇気が必要でしたが、その時に踏み出した小さな一歩が、今回のオリンピック出場へとつながりました。
そうした経緯を、私がその場に行って話すことで、あるいは私の存在を実際に見てもらうことで、『自分には無理じゃないか』と思ってしまうようなことにも、女の子たちがチャレンジする後押しをしたいと思っています。
私がパリオリンピックから帰国してすぐに、またサイクリングキャンプが開催される予定です。そこには私も参加する予定なので、その時にオリンピックでの経験を皆さんにお話できれば嬉しいですね。」

前回の東京オリンピックでは、補欠という立場で、会場でレースを観戦していた太田選手。それだけに、今回日本代表としてオリンピックの舞台で走ることに大きな喜びを感じている様子でした。
念願のオリンピックのメダルに向けて、パリで太田選手の力走が見られることでしょう。