面白くて、胸を打つ。「事実にインスパイアされた」最近のアメフト映画5選

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面白くて、胸を打つ。「事実にインスパイアされた」最近のアメフト映画5選

スポーティ

野球ってスポーツは映画との相性が抜群ですよね。『がんばれベアーズ』、『フィールド・オブ・ドリームス』、『マネーボール』、『プリティ・リーグ』、そして私の一番好きな『メジャーリーグ』など、野球を題材とした名画は数えきれません。ポジションが個性豊かで人間関係を描きやすいこと、試合の途中に「間」や「見せ場」が多いのでドラマにしやすいこと、その他にも理由があるのかもしれません。

実はアメフトも野球に負けず劣らずたくさんの映画になっているのです。日本ではあまり知られていませんが、コメディ映画『ロンゲスト・ヤード』、人種差別とスポーツを描いた『タイタンズを忘れない』、プロリーグの裏側をリアルに切り取った『エニイ・ギブン・サンデー』などの作品は、もはや古典と呼んでよいでしょう。

とくに最近のアメフト映画には「事実にインスパイアされた」と謳う作品が目立ちます。スポーツそのものの臨場感だけではなく、「挑戦」や「家族」や「友情」といった普遍的なテーマを扱ったものが多く、私はどれも興味深く観ています。

そんななかから、ここ数年のうちに公開されたアメフト映画の注目作、というか私のお気に入り映画5選を紹介します。順番に意味はありません。

『The Senior』(2023年)

実在の人物マイク・フリント氏(Mike Flynt)をモデルにした映画です。2023年に一部の地域で初公開されましたが、2025年9月にあらためて全米で劇場公開されました。

フリント氏は大学アメフトの選手でした。しかし、最終学年のときに喧嘩が原因で退学になりました。当然、チームからも離れることになり、アメフト選手としてのキャリアもそこで終わったはずでした。1971年のことです。

それからなんと36年後、59歳になっていたフリント氏が母校のアメフトチームに選手として復帰します。ポジションはラインバッカー。卒業はしていなかったため、まだ学生アスリートとして試合に出場する資格が残っていたのです。まるで荒唐無稽とも思えるストーリーなのですが、これが実話なのです。

当然、フリント氏の家族は驚きます。チームの監督・コーチ陣、そしてチームメイトも困惑します。それでも自分の意志を貫き通し、仲間や家族との信頼と絆を深めていく。そんなフリント氏の姿を描いた作品です。
アメリカでは高校や大学の最終学年をSeniorと呼びます。それとは別に、本来の意味で高齢者をSeniorと呼ぶこともあります。タイトルはその2つの意味を重ねたものだと思います。

作品とは直接の関連はありませんが、驚くべき後日談もあります。2025年にオハイオ州のジョン・キャロル大学に編入し、アメフトチームに入部したトム・シロ氏(Tom Cillo)は現在58歳なのです。年齢を重ねても挑戦を続ける。『The Senior』が描いたフリント氏の姿を現実の世界で再現しようとしている人がいる。そのことに、彼らと同年代の私はとても勇気づけられているのです。

『American Underdog』(2021年)

NFL史上きってのシンデレラ・ストーリーの体現者と称されるカート・ワーナー氏(Kurt Warner)の半生を描いた伝記作品です。

ワーナー氏は最優秀選手賞(MVP)に2度選ばれ(1999、2001年)、2000年の第34回スーパーボウルでも優勝リングとMVPを獲得しました。NFL史に残る名QBです。

なぜそのワーナー氏が「Underdog」(格下とか賭け率が低いチームや選手のことを指します)と呼ばれるのか?それはこのワーナー氏が大学卒業後にドラフト入団したグリーンベイ・パッカーズを数週間で解雇され、スーパーマーケットで働いたことや、屋内フットボールのリーグでプレイしていた時期があるからです。

逆境の中、家族を養うために懸命に生きるワーナー氏の姿が感動的に描かれた作品です。迫力ある試合のシーンも大きな魅力です。

『The Underdoggs』(2024年)

こちらも「Underdog」という言葉がタイトルに使われていますが、よく見るとスペルが微妙に異なります。“dogg” という部分に反応した人は、きっと音楽好きですね。

そう、この映画はヒップポップ界の大御所、スヌープ・ドッグ氏(Snoop Dogg)が製作を手掛け、自ら主演した作品なのです。

ドッグ氏は2022年のスーパーボウルでハーフタイムショーに出演したこともあります。アメフト好きで知られ、都市部の貧しい子どもたちを対象にしたアメフト・リーグ「Snoop Youth Football League」を主宰しています。

少年たちとドッグ氏演ずるヘッドコーチがともに成長していく過程を描いたこの作品。ドッグ氏自身の体験に基づいているとのことですが、楽しいコメディ映画でもあります。アメフト版『がんばれベアーズ』と言えば、当たらずとも遠からずだと思います。

『Home Team』(2022年)

こちらも少年アメフトチームの指導者が主人公ですが、モデルはもっと大物です。現在NFLデンバー・ブロンコスのヘッドコーチを務めるショーン・ペイトン氏が自分の息子が所属する少年チームを「オフェンシブ・コーディネーター」として指導した実話を基にしているのです。

舞台は2012年。ニューオーリンズ・セインツのヘッドコーチだったペイトン氏はすでにスーパーボウル制覇の経験を持つ名将として知られていました。しかし、「Bounty Scandal」と呼ばれるチームの不祥事を受け、ペイトン氏も1年間の活動停止処分を課されました。

シーズンを全休することになったペイトン氏は、離婚後に元妻に引き取られていた息子に会いに行きます。すっかり疎遠になってしまっていた息子との絆を取り戻すために、彼が所属する少年アメフトチームの指導を手伝うことを決めました。

親子の絆が主要なテーマではあるのですが、いわゆる「泣ける」感動作のような重さはありません。コメディタッチの楽しい作品に仕上がっています。あくまでも私が受けた印象ですけど。

『80 for Brady』(2023年)

順番に意味はないと述べましたが、もし個人的にもっとも好きな作品をひとつだけ選ぶとしたら、この『80 for Brady』です。

舞台は2017年にテキサス州ヒューストンで開催された第51回スーパーボウル。トム・ブレイディ率いるニューイングランド・ペイトリオッツが第3Q中盤で3-28の圧倒的な劣勢から大逆転勝利を挙げた、NFL史上に残る名勝負です。

作品の主人公は80歳前後の女性ファン4人。実在の人物です。念願のスーパーボウルを観戦するため、ペイトリオッツの地元ボストンからヒューストンまでの長い旅をします。スーパーボウルは試合の1週間前から開催地がお祭り騒ぎになる大イベントなのです。

なにしろ「実話にインスパイアされた」ストーリーですので、ストーリーの基本的な枠組みはあらかじめ決まっています。むろんハイライトはペイトリオッツの大逆転劇です。そこにこの4人の高齢女性がどのように絡むのか? はネタバレになるので、これ以上は述べません。とにかく面白い映画ですと申し上げておきます。

主演はリリー・トムリン、ジェーン・フォンダ、リタ・モレノ、サリー・フィールドという往年の名女優たち。ブレイディも本人役で出演しています。

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