見るスポーツからやるスポーツへ。フラッグ・フットボール人気が急上昇中。

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見るスポーツからやるスポーツへ。フラッグ・フットボール人気が急上昇中。

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NFLスーパーボウルLIXは思わぬ大差がついたワンサイドゲームになってしまいましたが、その前週末に開催されたプロボウルのことはご存知でしょうか?いわゆるオールスター・ゲームです。日本プロ野球でもMLBでもオールスター・ゲームはレギュラーシーズンの真ん中で行われますが、NFLのそれはポストシーズンの最終盤に行われます。

プロボウルはNFC, AFC両カンファレンスから選ばれたスター選手たちが一堂に会するイベントなのですが、翌週のスーパーボウルに出場するチームの選手は出てきません。いわばスーパーボウルの前座試合、もっとはっきり言えば、本番まで選手たちを休ませる時間つぶしのような印象をもたれがちです。

そんなわけでプロボウルに選出されることは大変な名誉であっても、試合そのものの人気は下降気味でした。これではいかん、とNFL経営陣が考えたのかどうかは分かりませんが、3年前のプロボウルから通常のルールによるアメフトに代わってフラッグ・フットボールの試合が行われるようになりました。

フラッグ・フットボールとは、単純に言えばタックルのないアメフトです。似て異なるスポーツです。まるで野球のオールスター戦に三角ベースのルールを採用するような違和感は拭えませんが、NFLは近年このフラッグ・フットボールの普及にとても力を注いでいます。

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競技化と国際化が同時進行中

高校女子フラッグ・フットボール公式戦

NFL公式ウェブサイトにはフラッグ・フットボールのセクションまでがあります(https://operations.nfl.com/learn-the-game/flag-football/flag-football-growth/)。それによりますと、アメリカ国内ではすでに17歳以下の競技人口が240万人に達したとのこと。その多くはこれまでにアメフトとは無縁だった女子選手たちです。

女子のフラッグ・フットボールを高校や大学の正式競技種目に加える州も増え続けています。下のNFL公式動画を見てもらえると、その辺りの雰囲気がよく伝わると思います。スーパーボウルのテレビCMにも登場しました。

NFLのyoutubeチャンネルで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=GsqhcNnxfv4

かっこいいですよね。フラッグ・フットボールは2028年ロサンゼルス・オリンピックで初めて競技種目になります。こんな逞しい選手が集まるだろう米国代表チームと競うのはさぞ大変でしょうが、日本代表チームの健闘を祈りたいと思います。

レクリエーション・スポーツとしての可能性

ビーチの砂の上で試合を行うフラッグ・フットボール

女性や子どもの競技だけではなく、フラッグ・フットボールは幅広い年代のレクリエーションとしても拡大しつつあります。

そもそもアメフトとは大多数のアメリカ人にとっても「見る」専門のスポーツでした。上の動画で面白く描写してあるように、アメフトは高校の花形スポーツではあります。しかし、そのタイミングを逃すと一生プレイする機会がない人も多かったのです。草野球やストリート・バスケの機会はあちこちにありますが、アメフトで同じようなものを見つけることはとても困難だからです。

通常のアメフトは身体的接触による怪我のリスクが高いこともありますし、ヘルメットやプロテクターなどの装備を揃えるのはお金がかかりますし、試合をするためには大人数をそろえなくてはいけません。フラッグ・フットボールではそうしたハードルがぐっと低くなります。

私の近所でも初心者の大人用にフラッグ・フットボールのリーグができました。週1回の試合に、さまざまな年代の男女が集まってきます。私も参加してみました。

男女混合レクリエーションの試合

このリーグには男女混合部門と男性だけの部門があります。女性だけの部門はありません。女性競技スポーツとして発展しているとはいえ、一般的な人気はまだまだ男性主体のようです。

私が参加したのは男女混合部門。攻撃側と守備側がそれぞれ8人で試合を行い、常に女性が3人以上出場していなくてはいけないというルールでした。

やってみると意外に大変でした。20分ハーフという短い時間ですし、私が実際にボールに触る局面はごく少なかったのですが(ヘタクソなので、あまりパスを投げてもらえない)、試合が終わるとヘトヘトになりました。

仮に10回のプレイで1回しかパスを受けなかったとしても、残りの9回を休んでいるわけではありません。相手のディフェンスをかわしながら、パスが通るようなスペースに走り込みます。守備側にまわったときは相手にそうはさせまいとカバーに走ることになります。

プレイごとに短い休みが入るとはいえ、いわば鬼ごっこのような動きを40分間繰り返すわけです。疲れないわけはありません。

それでも実際にフラッグ・フットボールをやってみると、改めてアメフトの楽しさに気がつきました。ルールや戦術への理解度も増し、NFLのテレビ観戦もさらに楽しくなりました。オリンピックも今から楽しみです。

草野球やサッカーと比べても、フラッグ・フットボールは試合をするための人数が少なく、試合場のサイズも小さくて済みます。ボールが1個と、全員が腰に巻くフラッグ以外には道具もいりません。あとは平坦な場所にラインを引けば準備OKです。レクリエーションとして広めるための条件は揃っています。

オリンピック種目になったことで、アメリカ以外の国でもフラッグ・フットボールの知名度は上がるかもしれません。日本でも大いに可能性があるのではないでしょうか。

バナー写真:”Flag football champs crowned” by USAG-Humphreys is licensed under CC BY 2.0.

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