冬のマドリードがレースの舞台、メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ

冬のマドリードがレースの舞台、メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ WATCH

冬のマドリードがレースの舞台、メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ

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毎年11月にマドリードで開催されるメモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ(Memorial María Isabel Clavero)は、クリテリウム形式の自転車レースです。

今年で28回目の開催を迎えたこの大会は、こじんまりとした家庭的な雰囲気が特徴ですが、参加するサイクリストの顔ぶれはなかなか豪華。今回は、このレースの様子をレポートします。

TOP写真:この日がエウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス(Euskadi Basque Country Murias)のジャージで走る最後のレースとなったセルヒオ・サミティエル選手(Sergio Samitier/写真中央)とフェルナンド・バルセロ選手(Fernando Barceló/写真右)。そしてカハ・ルラル・セグロスRGA(Caja Rural Seguros RGA)のジョナサン・ラストラ選手(Jonathan Lastras/写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

11月のマドリードに、サイクリストが大集合


カハ・ルラル・セグロスRGAは選手5人を送り込み、必勝体制でこの日のレースに臨みます。Photo by Yukari TSUSHIMA.

11月ともなると、自転車のロードレースはシーズンオフに入ります。この間、多くの選手は、ジムでのトレーニングやマラソン・トレッキングなどのトレーニングに汗を流します。

しかし、28年にもわたり、毎年この時期に開催されるロードレースがマドリードにあります。それが、このメモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ。「クリテリウム」と呼ばれるレース形式で、サイクリストたちは街の中に設定されたサーキットコースを何周も走ることになります。

このレースのカテゴリーは、マスターズ・元プロサイクリスト・現役プロサイクリストの3種類。現役プロ選手だけでなく、引退した選手も真剣勝負でこのレースに挑みます。

とは言っても、こじんまりとした家庭的な雰囲気が特徴のこのレース。久しぶりに顔をあわせたサイクリスト同士が、それぞれの家族を交えながらおしゃべりを楽しむ風景が見られる大会なのです。

スペイン里帰り中のサイクリストの姿も


現役プロサイクリストのカテゴリーのスタート直後。Photo by Yukari TSUSHIMA.

シーズンオフのこの時期には、多くの自転車選手にとって、スペインで家族と一緒にのんびりすごすことができる貴重な時間です。

そのため、この大会では、選手のご家族が総出で応援に駆け付けることも、めずらしくはありません。そんな中、今年は日本のチームに所属する5人のスペイン人選手が、このレースに出走しました。


フランシスコ・マンセボ選手(写真右)と笑顔のパブロ・トーレス選手(写真中央)Photo by Yukari TSUSHIMA.

まず、今年の日本のレースで大活躍した、大ベテランのフランシスコ・マンセボ選手(Francisco Mancebo/マトリックス・パワータグ)。

今年42歳のマンセボ選手は、日本でのシーズン終了後に奥様と日本旅行を満喫した後、スペインに帰国。この日のレースに出走しました。来年もマトリクス・パワータグで走ることが決定しており、次のようにコメントしました。

多分、来年の僕のレースカレンダーは、今年と同じような感じになると思うよ。

一方、今年はインタープロ・サイクリング・アカデミー(Interpro Cycling Academy)に所属し、ツアー・オブ・ジャパンでステージ優勝したパブロ・トーレス選手(Pablo Torres)は、レース前にコメントしました。

来年はヨーロッパのチームで走ります。子供が生まれるので、家族の近くにいたくてね。

トーレス選手には、近日中に男の子が生まれるとのことで、観客席から暖かな「おめでとう」の拍手が送られました。


マルコス・ガルシア選手(写真中央)とサルバドーレ・グアルデォラ選手(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

キナン・サイクリング・チームのスペイン人コンビ、マルコス・ガルシア選手(Marcos García)とサルバドール・グアルデォラ選手(Salvador Guardiola)の2人は、毎年このレースに出走しています。

ガルシア選手のご自宅は、このレース会場からすぐ近くのため、ご家族みんなで応援に駆けつけました。一方のグアルデォラ選手には、ご自宅で飼っている2匹の愛犬も応援に参加し、大所帯の応援団となりました。


ホアン・ホセ・ロバート選手(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

そして、今年はニッポ・ビニ・ファンティーニ・ファイザーネ(Nippo-Vini Fantini-Faizanè)で数々のレースに出走したホアン・ホセ・ロバート選手(Juan José Lobat)。来期はフンダシオン・エウスカディへの加入が決まっています。

日本をやアジア各国で1年間レースを戦ってきた5選手は、この日のマドリードでのレースを本当に楽しみにしていることが伺えました。

元プロ・サイクリストのカテゴリーでは、イゴール・アントン氏が優勝


元プロ・サイクリストによるレース。Photo by Yukari TSUSHIMA

元プロ・サイクリストによるレースもあるこの大会。かつてのプロ・サイクリストたちは、現役時代に見につけた、ジャージを着てレースに臨みます。中には、「シエラ・ネバダ(スペイン・グラナダにある山脈。多くのスペインチームが高地トレーニングをする場所として有名)でトレーニングしてきました。」とジョークを言うサイクリストもいて、会場が盛り上がります。

現役を引退しても、ロードバイクに乗り続けている元選手たち。スタート前は旧友やライバルたちと再会し、和気藹々とした雰囲気です。

しかし、一旦スタートしてしまえば、本気でペダルを踏んでしまうのは、サイクリストの性と言うところでしょうか。カーブの多いサーキットコースを、現役時代さながらの猛スピードで曲がります。


豪華な顔ぶれが集まります。Photo by Yukari TSUSHIMA

今年の元プロサイクリストのカテゴリーで優勝したのは、2年前のブエルタ・エスパーニャが最後のレースとなった、イゴール・アントン氏(Igor Antón)。最後の周回で先頭集団を飛び出し、そのままゴールしました。

今年から地元のバスク地方で、子供たちのための自転車学校を運営しているアントン氏。

来年、このレースには、僕の自転車学校のチームジャージを着てくるよ。


と嬉しそうにお話をしてくれました。

ムーリアスのラストランは、サンミティエル選手の逃げ切り勝利。


ムーリアスの3選手。左からフェルナンド・バルセロ選手、一人おいてオスカー・ロドリゲス選手、そしてセルヒオ・サミティエル選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

現役のプロ・サイクリストたちは、それぞれのチームのジャージを着て、このレースに挑みます。その中に、今年でチームの解散が正式決定しているエウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス(Eusukadi Basque Country Murias)の選手たちの姿がありました。

今回出走したのは3選手。それぞれ、オスカー・ロドリゲス選手(Oscar Rodríguez)はアスタナへ、フェルナンド・バルセロ選手(Fernando Barceló)はコフディスへ、そしてセルヒオ・サミティエル選手(Sergio Samitier)は、モービースターへと来シーズンに移籍することが決まっています。

明るい笑顔でレース前のインタビューに応える3選手でしたが、観客席にはほんの少しの寂しさが感じられました。

しかし、現役プロサイクリストによるレースが始まると、ムーリアスのチームワークが炸裂します。まず、レース序盤でバルセロ選手が先頭集団に入り、レースを盛り上げたます。そのあとに、ロドリゲス選手がメイン集団のペースをコントロール。そしてレース終盤で形成された3人の逃げ集団の中には、しっかりとサンミティエル選手の姿がありました。

ゴールまでラスト2周となった時点で、サンミティエル選手がラストスパート。他の2人の選手は、彼のスピードアップについていくことができません。

そして、サンミティエル選手がムーリアスの最後のレースを、優勝で飾りました。


表彰台にて。左からペドロ・オリーリョ氏(Pedro Horrillo )、ジョナサン・ラストラス選手、イゴール・アントン氏(Igor Antón)、セルヒオ・サミティエル選手、ディエゴ・セビリャ選手(Diego Sevilla/Kometa Cycling Team)、ホセ・アルマグロ氏(José Almagro)。Photo by Yukari TSUSHIMA

すでにこの時期、現役の選手たちは来年に向けたトレーニングをスタートしています。来シーズンへの期待が選手たちにはもちろん、観客側にも十分感じられたマドリードでのレースとなりました。