バスクの熱い名物レース イツリア・パイスバスク・カントリー

バスクの熱い名物レース イツリア・パイスバスク・カントリー
4月7日から4月12日の日程で、スペインで開催されたイツリア・パイスバスク・カントリーは、自転車レース界ではスペインの名物レースの一つである5日間のステージレースです。
スペイン北部のバスクとナバラの2つの地方を舞台に繰り広げられたこのレースの様子を、現地からレポートします。
TOP写真:今年のイツリア・バスク・カントリーを総合優勝したホアホ・アルメイダ(左から2人目)と彼を支えたUAEエミレーツのチームメイト。第6ステージスタート前に、みんなで上空の黒い雨雲を眺めている様子。Photo by Yukari TSUSHIMA.
バスケットボールのスタジアムから今年のイツリアがスタート
ビトリアのフェルナンド・ブエサ・アリーナからタイムトライアルがスタート。Photo by Yukari TSUSHIMA.
今年のイツリア・バスク・カントリーは、ビトリアの個人タイムトライアルからスタートしました。大きな上りや下りがない平坦な道続く約16.5kmの第1ステージは、タイムトライアルのスペシャリスト型の選手に有利なコースです。
第1ステージのスタート地点は、ビトリアのバスケットボールチー・バスコニアの本拠地である、フェルナンド・ブエサ・アリーナの内部に設置されました。ちなみにバスコニアはスペインのバスケットボールのトップリーグに所属する強豪チームです。そのアリーナも15000人以上を収容可能な大きなもので、そのアリーナの真ん中に設置されたスタート台から、選手たちはレースを始めることになりました。
この日は天気もよく気温も高い日でしたが、選手がスタートするころには、若干風が吹き始めました。この風はレース前半は向かい風ですが、レース後半には追い風になるもの。その結果、 この日の第1ステージを勝ったマキシミリヤン・シャックマン(ソウダル・クイックステップ)選手は時速53kmを超えたスピードでコースを駆け抜けました。
ステージ優勝者が一旦取り消し、その後復活
最終的に第3ステージの優勝者となったアレックス・アランブル(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
今年のイツリアで最も話題となったのが、第3ステージのゴールシーンでした。バスクの港町のサラウツから山間の村のベアサインへの156kmは、8か所の上りがあるバスクらしいハードなコースでした。
ベアサインのゴール前1kmの最後のランドアバウトで、この日1位でゴールしたアレックス・アランブル(コフィディス)選手だけは、公式のルートブックに記載されている通りランドアバウトを右に回り込みますが、ほかの選手は現地にあったサイン通り左側を走りました。このアランブル選手の走りを現地の審判団は「コースを短縮した」と判断し、アランブル選手のステージ優勝を一旦取り消します。その結果、2着でゴールしたローマン・グレゴリエ(FDJ)選手が、この日のレース後にステージ優勝者として表彰されました。
しかし、この日の表彰式後に再度審判団が協議し、アランブル選手の走りは問題ないものであったと正式に判断します。その結果、第3ステージの優勝者はアランブル選手に修正されることになりました。
実はアランブル選手は、この日のゴール地点から約10km離れたバスクの町の出身で、ベアサインの街は日頃からトレーニングで走っている場所でもあります。そのため、今回のステージ優勝は、彼の持っている地の利を十分に生かした地元での勝利となりました。
「ゲルニカ」の村がゴール地点に
ゲルニカの村で見ることができる「ゲルニカ」の壁画。Photo by Yukari TSUSHIMA.
第5ステージのゴール地点は、ゲルニカの村のメインストリートに設けられました。このゲルニカの村は、ピカソの「ゲルニカ」の舞台となった村として知られています。
1937年にこの村が襲われた無差別爆撃の様子をピカソが絵画にしたものが有名な「ゲルニカ」で、マドリードのソフィア王妃芸術センターで見ることができます。
ゲルニカの村にあるのは、このピカソの「ゲルニカ」を壁画にしたものです。選手たちはこのゲルニカの壁画の前をゴールに向かって走りました。
最終日は大雨の中でのレース
最終日のゴールは大雨の中。Photo by Yukari TSUSHIMA.
今年もイツリアの最終ステージの舞台となったエイバルの街には、昨年同様にたくさんの観客が集まりました。また、今年のイツリアは初日から5日目までは非常に天気に恵まれ気温も高い日が続いていたのですが、最終ステージは低温と大雨に見舞われました。
また、今年のエイバルのステージは、大小合わせて10か所近くの上りを走るサバイバルステージでした。その結果、この日は今年のイツリアで最も厳しいレースとなり、この日だけで40人以上の選手がレースをリタイアすることになりました。
今年も多くの選手の口から「厳しいレースだった」というコメントが聞かれたイツリアは、体調はもちろん気力もしっかり準備できないと完走できない本当にハードなレースであることを改めて思い知らされることになりました。