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クロスフィットが毎年開催している世界大会、クロスフィット・ゲームズ2023が8月1～6日に米国ウィスコンシン州マディソンで行われます。

その代表選手を最終決定する準決勝ラウンドを観戦してきました。世界を7つの地域（アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米東海岸、北米西海岸、オセアニア、南米）に分け、それぞれの地域を代表する選手を選ぶラウンドです。私が観戦した北米西海岸大会は5月25〜28日、米国カリフォルニア州パサデナで行われました。

参加者30万人超の頂点に立つのは誰か

さて、アスリートたちがこの準決勝ラウンドに辿り着くまでには約3か月間に渡る2段階の選考過程がありました。

第1段階は世界中から誰でもオンラインで参加できるクロスフィット・オープン（以下、「オープン」）です。

関連記事：「やる」クロスフィット。資格不問！世界最大のフィットネス競技「オープン」に参加しよう。

2011年に参加者数26,000人から始まった「オープン」は今年で13回目を迎えました。最初の8年間は参加者数が右肩上がりの成長を続けましたが、2019年はやや下降に転じ、新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた翌2020年はピーク時の約半分にまで落ち込みました。しかし、2021年以降は徐々に回復しつつあり、今年の参加者数は302,240人でした。

第2段階は「オープン」の結果が各部門（年代、性別）トップ10％以内だったアスリートのみが参加を許される準々決勝ラウンドでした。このラウンドも「オープン」と同じくオンライン形式なのですが、当然その内容ははるかに厳しくなります。

私は第2回「オープン」（2012年）に初めて挑戦して以来、2020年を除く毎年参加してきました。一般社会では体力オバケとか筋肉オタクとかの扱いを受けることが多い私ですが、この準々決勝ラウンドに相当する段階まで進めたことは一度もありません。クロスフィットの世界では、この段階でかなりの狭き門なのです。

そこからさらにほんの一握りのトップアスリートたちが進んだ準決勝ラウンドを私は観戦してきたというわけです。

超人たちが挑むワークアウトとは

準決勝ラウンド・個人ワークアウト＃2

北米西海岸地域準決勝ラウンドの一般部門で競ったのは男女60人のアスリートたちでした。このなかから男子10人、女子9人が8月の世界大会、クロスフィット・ゲームズ2023に出場します。

尚、準決勝ラウンドから選ばれる代表選手数は地域の競技人口やレベルによって異なります。たとえば、アジア地域の出場枠は男女2人ずつのみです。今年のアジア地域代表選手の国籍はロシア、中国、トルコ、そしてアラブ首長国連邦。残念ながら日本からは1人も選ばれていません。日本のクロスフィットも成長を続けていますが、世界の壁は依然として高いのです。

関連記事：大きな変革を遂げたクロスフィット・ゲームズ。その背景と2019年大会の見所。

その世界大会の出場切符にあと一歩まで迫った準決勝ラウンド出場アスリートたちは私から見れば超人です。ひとりひとりがスーパーマン、スーパーウーマンの集まりです。

ですから観戦中は「すごい」しか言葉が出てこなかったのですが、それではクロスフィットを見たことがない人には何がどれだけすごいかは伝わらないでしょう。私が実際に会場で見たワークアウトのひとつを例にして説明を試みてみます。

私が見たのは3日間で7つ行われたワークアウトの2番目でした。その内容は以下を3分1ラウンドとして、間に1分の休憩を挟んで、3ラウンド行うというものです。

•つり輪コンビネーション（トウ・ツー・リング、マッスルアップ、ディップ）を5回
•片足スクワットを20回
•残り時間でバービー＆ボックスジャンプを最大回数

つり輪コンビネーションのトウ・ツー・リングとはつり輪にぶら下がってから足を振り上げ、つま先をつり輪につける動作です。続いてマッスルアップで上半身を一気につり輪の上に持ち上げます。ディップは肘を肩と平行になるまで曲げて、また伸ばします。これで1セットです。

つり輪コンビネーション動作

3つの動作のうちマッスルアップはやや難易度が高いものになりますが、それでも体操競技ほどではありません。私でもなんとか一通りをこなすことはできます。

しかし、彼らはこれを5セット続けてやります。
しかも、20パウンド（約9キロ）の重量付きバックパックを背負ってやります。
しかも、そのすぐ後に20回の片足スクワットをやります。
しかも、またそのすぐ後に制限時間ぎりぎりまでバーピー＆ボックスジャンプをやります。
しかも、上すべてを1ラウンドとして、3ラウンド繰り返します。
しかも、それは3日間で7個あるイベントの1つでしかありません。

私が彼らを超人だと呼ぶわけを理解してもらえるでしょうか。

もちろん、超人とは言葉の綾で、彼らは紛れもない人間です。NBAや大相撲などとは違って、クロスフィットのトップ選手たちは体格だって一般人とそれほどかけ離れているわけではありません。2020年クロスフィット・ゲームズの男性トップ5選手の平均身長は173.3センチ、女性は167.3センチでした。

出番を待つ準決勝ラウンドのアスリートたち

いわば、普通に生まれついた人が極限のレベルにまで鍛え上げた姿を見ることができるのがクロスフィット・ゲームズです。8月1～6日の大会期間中、競技の模様は公式ウェブサイト でライブ中継され、日本からもオンライン視聴できます。

30万人超のクロスフィッターの頂点を目指して、男女40人ずつの選ばれたアスリートたちが最後の戦いに挑む1週間。クロスフィット・ゲームズ2023をどうかお見逃しなく。