バスケ界にもビッグデータ導入。NBAトラッキングデータの読み方を完全解説!

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バスケ界にもビッグデータ導入。NBAトラッキングデータの読み方を完全解説!

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世界最高峰の実力と人気を誇るアメリカプロバスケットボールリーグ・NBA。その公式WEBサイトであるNBA.comでは、2013-2014シーズンより大流行中のビッグデータを活用した「トラッキングデータ」の一般公開をスタートさせました。NBA発の”新たなスタッツデータ”の読み解き方をご紹介します。

そもそも「ビッグデータ」って?

総務省のサイトでは、以下のように定義づけられています。

「ビッグデータは、典型的なデータベースソフトウェアが把握し、蓄積し、運用し、分析できる能力を超えたサイズのデータを指す」

元々はITビジネス界から登場した言葉ですが、最近では「膨大な情報量を活用する」という広義の捉え方でスポーツ界にも派生しています。集められた情報を分析・解析し、パフォーマンス向上に生かす取り組みが目立つようになってきました。

トラッキングデータの読み方

それではNBAで導入されたビッグデータ「トラッキングデータ」の解説に移りましょう。

トラッキングデータとは、コート上の選手やボールの動きを撮影し、それを細かくデータ化したもののことを指します。NBAにおいては、コート周辺に設置された6カ所(ハーフコートに3カ所ずつ)のカメラで、1秒25コマで撮影したものをデータ化。その膨大な情報量の一部をファンに向けて公開しています。

NBA.comのアメリカ版サイトを開いてみましょう。上部に横並びになったメニューの「Stats」をドラッグし、上から7番目の「Player Tracking Data」をクリックすると、以下のようなページが出てきます。

出典:NBA.com

出典:NBA.com

ここでは8つのスタッツデータが公開されており、それぞれの数字に秀でた選手をランキング形式で紹介しています。スタッツと各項目の意味、上位5選手のプレースタイルを鑑みたデータの解読の参考例を紹介していきましょう。(ランキングデータは2014年2月末現在)

◆Speed and Distance

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
試合中の移動距離と平均スピードに関するスタッツ。ダッシュ、ジョグ、歩行といったすべてのコート移動を含める。

【項目(左から順に)】
「移動距離の総合計」「平均移動速度」「1試合の平均移動距離」

【データから読み取れるもの】
シューティングフォワードやスモールフォワードという「点取り屋」ポジションの選手が5位以上に名を揃えていますが、ケビン・デュラント(オクラホマ・サンダー)やカーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス)、レブロン・ジェームス(マイアミ・ヒート)といった圧倒的スコアラーではないというのがポイントです。では彼らはランキングのどこらへんにいるのかというと、実は5位以下の上位。このことから推測するに、上位の選手たちはこれら圧倒的スコアラーを抑える「ディフェンス」に、多くの移動距離を費やしている言えるかもしれません。そういう意味で、ハードワーカーの指標となりそうなスタッツです。

◆Touch/Possession

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
ボールに触った/持った回数に関するスタッツ。

【項目(左から順に)】
「1試合の平均ボールタッチ数」「1回のボールタッチが生み出す得点」「総ボールタッチ数」

【データから読み取れるもの】
ボールを回してゲームを組み立てるポイントガードの選手が上位に入る傾向が強いスタッツです。若い選手はボールを持ちすぎるきらいがあるので、総ボールタッチ数の多さは必ずしもポジティブなランキングを示しているとは言えません。「1回のボールタッチが生み出す点数」に着目して5位以下のランキングを見てみると、チームへの貢献度が分かりやすいものになります。

◆Passing

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
得点機会(シュート、フリースロー、アシスト)に結びついたパスに関するスタッツ。

【項目(左から順に)】
「1試合の平均パス数」「1試合でその選手のパスが生んだ平均得点」「総アシスト数」

【データから読み取れるもの】
従来のアシスト(フィールドゴールに直結したパス)だけでなく、「シュートを打ったパス」「シュートは外れたけどフリースローで得点できたパス」「アシストにつながったパス」を含めることによって、バスケットで大切だと言われる「アシストのアシスト」、つまり「得点チャンスを作ったパス」の精度を把握することができます。クリス・ポール(ロサンゼルス・クリッパーズ)はアシスト数では5位ですが、「パスが生んだ平均得点」ではダントツの1位。彼が名ガードと評価される理由がよく分かります。

◆Defensive Impact

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
ブロック・スティールなど得点を阻止したディフェンスに関するスタッツ。その選手がゴール、シューターともに5フィート以内の距離にいる場合に限定する。

【項目(左から順に)】
「相手選手のフィールドゴール(フリースロー以外の得点)成功率」「相手選手のフィールドゴール(フリースロー以外の得点)の1試合平均成功率」「ブロックの合計」

【データから読み取れるもの】
ゴールに近いところのディフェンスに限定されていることもあって、インサイドプレーヤーが上位にランクインしやすい傾向にあります。ブロック数とフィールゴール成功率の割合を見ることで、その選手が一発勝負のシュートブロック先行型か、地道に守るディフェンスマンかを分析することができるでしょう。デアンドレ・ジョーダン(ロサンゼルス・クリッパーズ)は前者、ロイ・ヒバート(インディアナ・ペイサーズ)は後者の傾向が強いです。

◆Rebounding Opportunities

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
リバウンド機会に関するスタッツ。ここでは「選手の3.5フィート以内に落ちた、競り合いの中でのリバウンド」に限定する。

【項目(左から順に)】
「1試合におけるリバウンドのチャンス数」「リバウンド成功率」「総リバウンド数」

【データから読み取れるもの】
オフェンスリバウンド、ディフェンスリバウンドのスタッツと合わせて読み解いていくと、とても興味深いデータが出てくるスタッツです。ただ、リバウンドは一試合欠場で10本以上差がついてしまうので、そういったところも鑑みてデータを見ていく必要があるでしょう。

◆Drives

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
ドライブに関するスタッツ。ここでは「ゴールから20フィート〜10フィートの距離のドリブル(ただし速攻は除く)」に限定する。

【項目(左から順に)】
「ドライブからの平均得点」「チームでのドライブからの平均得点」「ドライブからの総得点」

【データの読み解き方】
スピードで勝負するガードと、パワフルにゴール下を割っていくスコアラーが上位にランクインしているスタッツです。このスタッツはドライブ以外でも得点を獲得している総得点数と合わせて分析すると面白いでしょう。1位のモンタ・エリス(ダラス・マーベリックス)は平均得点18.9のうちドライブでの平均得点が7.3。「ドライブでの得点に比重を置いている選手」という特徴がデータから読み取ることができます。

◆Catch and Shoot

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
キャッチ&シュートに関するスタッツ。ここでは「ゴールから10フィート以上離れた距離から、パスを受けて2秒以内に打ったシュート」に限定する。

【項目の意味(左から順に)】
「キャッチ&シュートの1試合平均得点」「キャッチ&シュートの1試合平均3ポイント成功数」「キャッチ&シュートの総得点」

【データの読み解き方】
味方からパスをもらって、シュート。得点機会を味方に演出してもらいスコアリングするため、外角シュートに強い「ピュアシューター」が上位に集まる傾向が強いスタッツです。ここでも興味深いのは、リーグ屈指のスコアラーがほとんど上位にいないこと。トップスコアラーたちはあまりこのシュートで得点を多く稼いでいないようです。

◆Pull Up Shots

出典:NBA.com

出典:NBA.com

【スタッツの意味】
ゴールから10フィート以上離れた場所からのプルアップショット(ドリブルシュート)に関するスタッツ。

【項目の意味】
「プルアップショットの1試合平均得点」「プルアップショットの1試合平均3ポイント成功数」「プルアップショットの総得点」

【データの読み解き方】
Catch and Shootとは対照的に、1on1やドリブルワークで自ら得点機会をクリエイトする選手が上位に集まる傾向が強いデータです。現在得点王をひた走るケビン・デュラントはDrivesに引き続いての上位ランクイン。得点パターンの豊富さが、彼の大量得点の秘密と言えるのかもしれません。また、ステフィン・カリー(ゴールドステイト・ウォリアーズ)はPassingでも上位に食い込みつつ、得点に関するスタッツにも顔を出しています。攻撃における貢献度の高さがうかがえます。

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NBAでは今回紹介した8つのスタッツ以外にも、様々なスタッツを公開しています。これらを上手に組み合わせて読み取ることによって、NBA観戦がより一層楽しいものになることでしょう。ここで紹介した読み解き方はあくまでも一例。みなさんも独自の分析でバスケットボール観戦を楽しんで下さい!

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