体の土台が強化できる!走れるサンダル“ワラーチ”

体の土台が強化できる!走れるサンダル“ワラーチ” DO

体の土台が強化できる!走れるサンダル“ワラーチ”

スポーティ

ランニングシューズの主流は、ここ5年で大きく変化し、以前はシリアスランナーほどレースで履くのはソールの薄いシューズというのが常識でしたが、今では初心者からシリアスランナーまで多くのランナーにソールの厚いシューズが選ばれるようになっています。

そんな今でも、根強く支持されるのが、厚底とは真逆の”裸足(ベアフット)ランニング”です。2017年にテレビドラマが放映されて話題になった『陸王』の足袋型シューズも裸足感覚に近付けたシューズの一つです。芝生の上など安全な場所であれば、実際に裸足で走るのも良いですが、地面には危険な物が落ちていることもあるので、裸足感覚で走れるシューズを履けば場所も選ばず安心して走ることができます。

そこで、今回紹介したいのが、走れるサンダル“ワラーチ”です。走るためのサンダルと言った方が適切かも知れません。

「え、サンダルで走るの!?」「鼻緒のところで足が擦れて血まみれになるんじゃない!?」と、疑問がたくさん出てきそうですが、見た目にもオシャレで快適です!可愛いネイルをしてワラーチを履く方も多いです。

ランニングシューズにはたくさんの機能が備わっていて、体への負担を軽減してくれますが、その分シューズに頼った体の使い方、筋力になっています。ワラーチは人間が生まれ持つ機能や筋肉をより使える体になるといった効果が期待できます。スポーツ傷害を起こさないために注意が必要な面もあるので、ワラーチを知って、普段の生活やランニングに取り入れながら、強い体を手に入れましょう!

今回、裸足愛好家であり、ワラーチのワークショップを開催されている草木雅史(通称:くさぽん)さんにお話を伺いました。独自で研究しソールに溝を入れたり、紐(パラコード)のきつさを調節できる結び方なども考案されています。現在ワークショップは、月に一回告知にて開催されていて、部材の販売のみも行っています。今後ネット販売も視野に入れて準備をされているそうです。

ーーワラーチを作り始めたきっかけは何ですか?

走り始めたのはダイエット目的でしたが、大会で記録を残したいと思うようになり、ランニングシューズで頑張っていた時、足に合っていないシューズで無理をして、足を故障してしまいました。病院で「走ることはもうできません」との診断を受けましたが、諦めきれず色々調べていると“ワラーチ”というキーワードが目に留まり、現在のワラーチ師匠でもある板井麻恵さんに出会いワラーチを製作するようになりました。
ワラーチは、自分の足に合ったソールを自分で製作でき、オリジナルでオンリーワンのサンダルができるというところが素晴らしいと思いました!ワラーチを作り、その足で近くの山に裸足で歩く機会もあり、その気持ち良さからすぐに山裸足にものめり込みました。
シューズ選びは、足幅が広かったり甲の高い方などは、特に、合うシューズを探すのは大変ですが、ワラーチは誰でも合うものが作れて、価格もシューズに比べると大変手頃なので、多くのランナーさんにお勧めしたいです。

ーーワラーチには、どんな種類がありますか?また、違いは何ですか?

ワラーチは市販として販売されている“ルナサンダル”が代表的ですが、自作製作できるワラーチも製作者の思いが詰まった様々な種類があります。
足にまとわりつかず、常に裸足感覚でゆるく履くことができる、ゆるふわりんで有名な“マンサンダル”
山でもハイキングなどでも不安なく履けるお洒落なワラーチ、私の師匠でもある板井麻恵さんが考案された“アサーチ”
製作者の方のお名前から名称となっているワラーチが様々にあります。
私のワークショップ独自のものとしては、ソールとパラコードのみで作る”93結び”です。こちらはマンサンダルのゆるふわりんが好きだけど、調節ができるように甲の結び目を上下スライドさせることで、緩くも締めて履くこともできるワラーチです。

ーー実際にワラーチを履いてきて、どんなメリットを感じていますか?また、注意すべき点はありますか?

ワラーチは、速く走る為に作られたものではなく、薄いソールを使って足の指や骨の使い方を見直し、長く負担をかけず歩いたり走ったりできるようにするアイテムの一つです。最初、この薄いソールでは足裏が痛いんじゃないのかな?と思っていましたが、痛いということは、ちゃんと足裏を使っていない証拠。色々模索しながら骨を使って歩くことで、疲れが出ない身体作りができます。足趾(足の指)をしっかりと使うことと、日々の足から股関節、骨へのアプローチ、メンテナンスによって少しずつ変化が出てくるので、じっくりと身体のメンテナンスもプラスして考えていただくと効果が上がります。

気を付けなければいけないことは、靴に慣れた生活から薄いソールになると、ダイレクトに地面からの衝撃が足にきますので、痛めてしまう可能性があります。最初はウォーキングから慣らして、徐々にペースを上げるやり方が望ましいです。走られてきたランナーさんは筋力があるので、筋肉でいきなり走れると思いますが、それは後々、脹脛や膝に負担をかけることになります。できればワークショップや、経験者のアドバイスを受けていただくことをお勧めします。
また、ワラーチは素足で履くことが多いので、雨天の際や、川などに入る時にも気兼ねなく仕様できます。岩などの凹凸や木の根っこ、鉄板の上は滑りやすいので、シューズ同様に十分気を付けてお使いください。

ーー寒い時期でもワラーチを履きますか?

足趾を使って歩くことで、足裏から血行も良くなり、寒い時期でもポカポカとして過ごすことができます。冷え性が改善したという方や、1年を通して素足で履いている方もおられます。素足で履くことに抵抗がある方は5本指ソックスを使用して履かれている方もいます。私は普段から裸足でいることが多く、足趾を使って生活しているので血流が良く、冬でも山は裸足で歩いたりしています。

ーーソールや紐(パラコード、PPテープ)の寿命は、およそどのくらいですか?

走り方などによって変わってきます。パラコードやPPテープは事前に購入していただくか、メンテナンスで対応させていただいております。パラコードがレース中など切れないように、保護シールを貼ることもあります。ただし、ややボコッとした感覚が生じます。

ーーレースでもワラーチを使用しますか?

ワラーチでトレイルランニングのレースに出られる際は、ほとんどの大会で仕様禁止となっているので、参加される場合は確認していただくことが望ましいです。ロードでの大会は、ワラーチでの参加が認められていることが多いですが、こちらも大会参加前にご確認ください。

ワラーチを履いて実際にトレーニング!

筆者がコーチをしているランニングクラブでも、くさぽんさんにワークショップを行っていただき、ワラーチを作成しました。ソールにも様々な種類があり、厚さが選べるだけでなく、色も白・黒・グレー・濃い茶色・薄い茶色と選ぶことができ、色によって堅さも違うということでした。雨の中でも滑りにくいように溝を入れたものもあり、溝の柄も選べました。ロードを走るのに向いているものから、トレイルランニングに向いているものもあり、選択肢の多さに驚きました。

また、紐(パラコード)も何十種類もの中から選ぶことができて、こちらも色によって柔らかさや強度が変わってくるとのことでした。参加者は「あれも良いな、これも良いな!」と、ウキウキしながら選んでいました。

筆者は、やや厚みがあって、柔らかめだという白のソールと、キレイなエメラルドグリーン単色のパラコードを選びました。自分の足型をとって、余った素材を使って、子どもの分も合わせて作りました。親子で履くのもまた可愛いですね。

作成した7月の暑い時期から、ひんやり肌寒い日もあった10月上旬までの間、筆者は練習の9割近くをワラーチで走りました。

秋のフルマラソンに向けて、この期間は“土台作り・脚作り”から“走り込み”の時期としていたので、ワラーチは最適だと思い、できるだけ多く活用しました。

普段の練習は子どもを連れてのバギーランが主で、週に5日程度、月間でおよそ200km弱~250kmの距離を走りました。

■ワラーチを履いた感覚

ソールが薄いので、自分の脚が持っているバネを感じることができます。履いていくうちに、バネが強くなっていくのも実感できるでしょう。筋肉をより使っている感覚があり、トレーニング効果が上がっているように感じました。実際に、普段ワラーチを履いて走るのはゆっくりのペースのときで、速く走る練習もしていませんでしたが、シューズに履きかえてペースを上げてみたとき、スピードも以前に比べて上がっていました。

鼻緒のところも含めて、靴擦れのように、擦れて痛くなることもありませんでした。また、夏場は汗でシューズが湿ったり、汗っかきの方だとシューズに汗が溜まることもありますが、ワラーチは涼しく快適です!走る以外の普段履きとしても使えますし、靴紐を結ぶ必要もないので、簡単に履けるところも魅力だと感じました。

ワラーチの寿命としては、ソール(筆者の選んだ種類)はランニングシューズと変わらないくらいの持ちではないかと感じています。パラコードは、1ヶ月程度で半分くらいに擦り減りましたが、その後1ヶ月走り続けても切れることはなく持ち堪えています。走っている途中で切れてしまうと、ソールが地面に引っ掛かってしまい転倒の危険があるので、切れる前に交換することを個人的にはお勧めします。

■ワラーチに向いている時期・効果的な使い方

秋口になると、足指の冷えが気になることもあったので、5本指ソックスを履いて、ワラーチを履いて走ってみました。冷えはあまり気にならなくなりましたが、ソールの上で足がズレやすくなるので、裸足で履くよりもマメができやすいかも知れません。筆者は15km程度走ってみてマメはできませんでした。

ワラーチの使用時期は、夏場が断トツでお勧めですが、体の機能強化の面から考えると季節は関係なく効果があります。ただし、冷えによって足先が動きにくいような状態で走ってしまうと転倒などの恐れもあるので、寒い中で無理に履く必要はありません。

ワラーチでペースを上げて走ることにも怪我のリスクがあるので、使い方としては、レースに向けた“土台作り期”や“走り込み期”でのジョギングやLSD(Long Slow Distance)で使用すると効果的だと思います。ゆっくり走ると足が地面に接地している時間も長くなるので、より脚力の強化に繋がります。
マラソンシーズンが秋~冬と考えると、“土台作り期”~“走り込み期”に当たる春~秋頃がワラーチを活用するのに適した時期だと言えそうです。

■ワラーチを履いて変わったこと

ワラーチを履く以前は薄いと感じていたシューズでもクッション性をしっかり感じられるようになりました。また、足が解放されていた分、今まで履いていたシューズの中には窮屈だと感じるものもあり、足の形にも変化があったのかも知れません。

■ワラーチは子どもにも良い

体ができていく幼少期にも、人間本来の体の使い方を身に付けられるワラーチは良いということで、筆者の約1歳半の子どもにも履かせることにしました。普段から裸足が好きで、シューズを履かせても自分で脱いでしまうことが多いですが、ワラーチはすんなり履いてくれて、自然に走り回って遊んでいました。3歳の子どもにも作る予定です。

ワラーチは走れるだけでなく、トレイルランニングでも使用できます。どんな足型の方でも、ご自分に合ったもの、好みのデザインが作れます。きっとお気に入りのワラーチができるはずです!

ランニングシューズの価格は、厚底シューズが出る以前に比べて高額になっていますが、ワラーチはお手頃価格で手に入れることができます。

是非、お試しください!

サンダル トレーニング ワラーチ