めざせ市民スポーツマンの二刀流!ベンチプレスで100キロ、フルマラソンでサブ4を同時に達成しよう。

めざせ市民スポーツマンの二刀流!ベンチプレスで100キロ、フルマラソンでサブ4を同時に達成しよう。 DO

めざせ市民スポーツマンの二刀流!ベンチプレスで100キロ、フルマラソンでサブ4を同時に達成しよう。

スポーティ

筋トレは、すっかり市民権を得て、ジムに通ってウェイトトレーニングに励む人が多くなりました。同じように、東京マラソンがきっかけとなったマラソンブームは、すっかり定着して、各地で行われるレースや市民ランナーの数も増えています。

筋トレもランニングもチームに参加する必要がなく、初心者から競技者までが自分のレベルに応じて楽しめるスポーツです。市民スポーツの王道として、これからも愛好者は増えることはあっても、減ることなないと思われます。そして、その2つともやってみたいと思う人が出てくるのも不思議ではありません。

筋トレで鍛えて、そして長距離も走る。そのような目標に挑む人達のコミュニティーやノウハウ、そしてトレーニング計画例を紹介します。

ボストンマラソンで達成されたある1つの偉業

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先日行われたボストン・マラソンでは、史上稀に見るゴール前のデッドヒートを制したローレンス・チェロノ選手(ケニア)が優勝し、幕を閉じました。残念ながら、前年度優勝の川内優輝選手は17位に終わりました。

毎年4月の第3月曜日、Patriots Day(愛国者の日)に行われ、今回で123回目の開催となったボストンマラソンは世界で最も有名なマラソンレース・シリーズかもしれません。「心臓破りの坂」に代表されるタフなコースもさることながら、一般の部の出場希望者にも厳しい出場資格タイムが求められることで知られています。

今年の出場資格タイムは18-34歳の男性で3時間05分、女性は3時間35分です。それより上の年齢は5歳ごとに5分ずつ長い時間に調整されますが、市民ランナーにとっては非常に高いハードルであると言えるでしょう。

そして、来年度からさらに5分ずつ短縮されます。つまり、来年から18-34歳の男性は、「サブ3*¹」を達成しないと、ボストンマラソンのスタートラインにすら立てません。

米国のランナー達の間では、このボストンマラソンの出場資格タイムを突破した人のことを”BQ” (Boston Qualified)と呼び、大きな名誉であるとされています。

その為、ボストンマラソンでは、優勝を争うようなエリートランナー達だけではなく、このレースに参加した市民ランナーの様々なエピソードがマスコミに取り上げられます。

今年はそうして話題となった1人にクロスフィットの世界大会に経験もあるオースティン・マレオロ氏がいました。マレオロ氏は、まず早朝に自己新記録となる600パウンド(272キロ)のデッドリフトを成功させ、その同じ日にボストンマラソンを完走したのです。

*¹:サブ3とは、フルマラソン 42.195㎞を3時間未満のタイムで走るという意味

公式プロフィールによると、マレオロ氏は、身長約165センチ、体重約81キロです。マレオロ氏が持ち上げた272キロとは、体重の3倍を優に超えます。筋トレを真剣にやっている人はその凄さがわかるでしょう。

一般的に、デッドリフトの最大挙上重量は初心者で自分の体重と同じぐらい、中級者でも2倍ぐらいだとされています。3倍ともなれば、その難易度はフルマラソンをサブ3で走るに等しいと思います。それなのに、体重3倍以上の重さを挙げた直後にフルマラソンを走る?信じられないような快挙です。

どんな体になりたいか?

デッドリフトに必要なのは、瞬間的に発揮する爆発的なパワー。筋肥大は欠かせませんので、これを真剣にやれば当然のごとく体は大きくなります。

一方で、マラソンのような長距離走は、体重が軽ければ軽いほど有利なスポーツです。エリートランナー達のように極限まで絞られた体ではなくても、市民ランナーでもフルマラソンを完走する人は、スリムな体型をしていることが殆どです。サブ3、サブ4となれば尚更です。

つまり普通に考えると、デッドリフトとマラソンでは、目指す体は真逆なのです。人によってなりたい理想の体は様々です。

あなたはパワーリフターのように体を大きくしたいですか?それとも長距離ランナーのように痩せたいですか?と問われたとしましょう。

迷うことなくどちらかを選ぶ人もいるかもしれませんが、そのどちらにもなりたくない、あるいはなれないと答える人もまた多いのではないでしょうか。

筋トレとランニングを両方やる人達のコミュニティー

少し専門的な話になりますが、筋線維には、速筋と遅筋のタイプがあります。速筋はさらに2つに分かれますが、簡単に言えば、重いものを持ち上げるのに使われるのは速筋、マラソンなどの持久力に使われるのは遅筋です。

速筋と遅筋の比率は生まれつきで、変わることはないらしいのですが、そのどちらもトレーニングによって、レベルを上げることは可能です。

筋肉をしっかりつけるけど、長距離走だって走りたい。あるいは長距離走がメインだけど、筋肉もつけたい。出来ればその両方で真剣に記録を狙っていきたい。そんな人たちが集まったコミュニティーに”LHRL” (Lift Heavy Run Long)というものがあり、様々なレベルの実践者たちがトレーニング例やイベントなどの情報交換を行っています。

そのコミュニティーの中に、特に上級者向けだとされているのが、50-400 Club と呼ばれるグループです。これは50マイル(約80.5キロ)以上のウルトラマラソンを完走し、且つ400パウンド(約181.4キロ)のデッドリフトを成功させた人に入会資格があります。女性のデッドリフト重量は300パウンド(約136キロ)です。

ちなみに筆者は、この50-400 Clubには入会資格がありません。100キロのウルトラマラソンを完走したことはありますが、デッドリフトの最高記録は160キロぐらいなのです。

デッドリフトは筋トレの中でも最も扱う重量が重く、設備が整ったジムでしか行うことが出来ません。約80キロのウルトラマラソンもなかなか気軽に挑むには難しい距離です。

そこで筆者は、もう少しハードルを下げて、「ベンチプレスで100キロ、フルマラソンをサブ4」を代わりに目標として掲げたいと思います。女性のベンチプレス重量は65キロにしておきましょう。

どちらも一般の人でも努力さえすれば、達成可能ではありますが、両方を出来る人はなかなかいません。

怪我を予防する効果も

筋トレとランニングを両方行うことは、どちらかに集中することで引き起こされる蓄積疲労や怪我の危険性を下げる効果もあります。さらには、、精神的な飽きを防ぎ、モチベーションを維持しやすくもなります。



Unbreakable Runner: Unleash the Power of Strength & Conditioning for a Lifetime of Running Strong (英語)/T.J. Murphy & Brian MacKenzie(VeloPress)


上の本は、市民ランナーにケガをする人が多いことに注目し、それに代わる方法論を世間に広く紹介して話題になりました。タイトルの意味は「ケガをしない丈夫なランナー」、そのための方法論です。

LSDに代表される従来の長時間、長距離の練習方法を完全に否定するわけではなく、その効果があることも認めています。そして、走るのは週2、3回にとどめて、残りの日をクロスフィットのトレーニングをすることを奨めています。クロスフィットを筋トレに置き換えてもいいでしょう。

筆者が100キロのウルトラマラソンを走った時には、この本にある3か月のトレーニングメニューをそのまま実行しました。要約すると以下のようになります。

• 月間走行距離は、100キロ以下
• ランの日とクロスフィットの日を交互(週3日づつ)
• 一回に走る最長距離は、ハーフマラソン(21キロ)まで
• 普段の食事は糖質制限。
• レース直前もカーボローディングは一切行わない

結果として、大したタイムではありませんが、100キロを完走しましたし、故障は全くありませんでした。筋トレの重量も体重も極端に落ちることはありませんでした。

痩せすぎず、大きくなり過ぎず、怪我のリスクを下げる。“Lift Heavy Run Long”のやり方を試してみては如何でしょうか? 

二兎を追う者は一兎をも得ずとの格言には真っ向から反しているわけですが、どちらかの専門家を目指すのでなければ、何よりも筋トレとランニングの両方を楽しむことが出来るメソッドです。