漫画『リアル』の世界をリアルに体験!車椅子バスケを観にいこう!

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スポーティ

漫画『リアル』(*)で話題の車椅子バスケットボールですが、実際に観戦したことがある方はあまり多くないと思います。そんな人にうってつけの観戦チャンスがまもなく、千葉市にやってきます。10月10日から17日まで「三菱電機2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」が千葉ポートアリーナで開催されます。来年のリオデジャネイロ・パラリンピックの地区予選も兼ねた国際大会で、男子は12カ国で3枚、女子は3カ国で1枚のリオ切符を争うという真剣勝負を目の当たりにできます。

車椅子バスケを「リアル」に観戦できるまたとないこのチャンスを存分に楽しむために、ここでルールや見どころを解説します。

(*)車椅子バスケットボールをテーマにした井上雄彦氏作の連載漫画

ルールも迫力も、一般のバスケとほぼ同じ

車椅子バスケは選手が車椅子に乗ってプレイする、という原則以外は、一般のバスケットボールとルールはほぼ同じです。脚を使って走るのではなく、車椅子を動かして移動するという違いだけで、その迫力やスピードは一般的なバスケットボールに勝るとも劣りません。 

選手にはスピードや敏捷性、持久力が求められます。急激なターンやダッシュ、ストップの繰り返しで、車椅子のタイヤが床にこすれてゴムの焦げた匂いが漂います。激しいプレイで車椅子ごと転倒する選手も少なくなく、タイヤがパンクすることもあります。ベンチ裏には担当スタッフが交換用のタイヤとともに待機。パンクした選手のもとに駆け付け、すばやく交換する様は、F1レースのピットインのようです。

ここで、基本ルールを確認しておきましょう。1チームは5人でゴールにボールを投げ入れて得点を競います。ボールもコートもゴールも一般のバスケと同じものを使い、得点もスリーポイントラインより内側からのゴールは2点、外側からのゴールは3点、フリースローは1点と同じです。スリーポイントショットやフリースローのときは、体がラインを越えなければ、前輪(キャスター)はラインを越えてもルール違反とはなりません。

試合時間は40分間で、10分間のピリオドを4回行います。第1ピリオドと第2ピリオドの間、第3ピリオドと第4ピリオドの間に、それぞれ2分間のインターバルがあり、ハーフタイムは10分(または15分)です。第4ピリオド終了時点で同点の場合は5分間の延長戦を勝敗が決するまで行います。第1ピリオドはセンターサークル内でのタップオフで始まりますが、その他のピリオドはセンターライン外からのスローインで始まります。

ファウルに対する考え方も一般のバスケと同様で、選手同士の身体接触は基本的には避けなければなりません。相手の体や車椅子を押したり(プッシング)、手や腕を使って相手の体や車椅子の動きを妨げたり(ホールディング)することは反則となり、相手にスローイン、またはフリースローが与えられます。

主なルール

■バイオレーション

トラベリング ボールを保持したまま3回以上続けて車椅子をこぐ(プッシュ)とトラベリングになる。
違反すると、相手チームにボールが与えられ、スローインでゲームが再開される。
2回こいでドリブルし、またこぐのはOK。したがって、ダブルドリブルの反則はない。
3秒ルール 攻撃側の選手は、相手ゴール下の制限区域内に3秒以上、とどまってはならない。
5秒ルール スローインやフリースローのとき、審判からボールを渡されたら5秒以内に、または、ショットするまでの間に相手に近接して防御され、パスやドリブルなどができなくなった場合。
8秒ルール ボールをコントロールしたら、そのチームは8秒以内にバックコートからフロントコートにボールを進めなければならない。
24秒ルール ボールをコントロールしてから24秒以内にシュートしなければならない。
バックバスの禁止 フロントコートに進めたボールをバックコートに返してはならない。違反すると、相手チームのスローインで再開。

■ファウル

プッシング 手や体、または車椅子で相手や車椅子を無理に押して動かすこと。
イリーガル・ユース・オブ・ハンズ 手で相手をたたくこと。
ホールディング 体や車椅子を使って相手選手の行動の自由を妨げること。

押さえておきたい2つの特徴

一般のバスケと異なる特徴は主に2つあります。ひとつは「トラベリング」です。ボールを保持している選手が連続して車椅子をこげるのは2回まで。3回目には反則となり、相手にボールが移ります。ただし、2回こいだあとにドリブルを行えば、再び2回までこぐことができます。

それぞれの役割をもつ選手たち。ボール以外の動きにも注目!

それぞれの役割をもつ選手たち。ボール以外の動きにも注目!

したがって、一般のバスケにある「ダブルドリブル」の反則は車椅子バスケにはありません。選手は車椅子操作とドリブルを巧みに組み合わせ、すばやく移動しゴールへと向かっていきます。

もうひとつの特徴はもちろん、車椅子を操作する(チェアワーク)という点です。選手はすばやいターンができるようにタイヤがハの字型に開いたバスケット専用の車椅子を使います。公平性を保つため、シートやフットレストの高さ、車輪(後輪)の直径などには規定がありますが、規定の範囲内ならカスタマイズも認められています。

選手は自分のイメージ通りの動きができるよう、体のサイズや乗り心地から、障害の程度や体の残存機能などに合わせ、座面の傾きや背もたれの高さ、フットレストの位置などを慎重に調整します。ベストなポジションを探れるように、車椅子はフルオーダー式から微調整可能なアジャスト式などのタイプがあり、値段は1台30万円前後が主流です。

「持ち点制」を知れば、面白さもさらにアップ

車椅子バスケを楽しむために、知っておきたいルールに「持ち点制」があります。選手はそれぞれ障害の程度に応じて4クラスに分けられ、クラスごとに持ち点が与えられています。障害の重い順にクラス1(持ち点1.0、1.5)、クラス2(2.0、2.5)、クラス3(3.0、3.5)、クラス4(4.0、4.5)となります。0.5点は各クラス内で運動機能が上位の選手に対してプラスされます。

体の機能には個人差があるので、クラス分けは単に障害の部位や状態だけでなく、車椅子操作やドリブル、シュートといったバスケット動作のほか、車椅子に座ったときの体幹のバランス能力やボールコントロール範囲なども加味して判断されます。

「持ち点制」で重要なのは、試合中コート内でプレイできる5選手の持ち点の合計が「14点を超えてはならない」というルールです。つまり、上限を設けることで、障害の軽い選手だけを集めたチーム編成はできず、障害の重い選手にも等しく出場機会を与えているというわけです。また、各チーム間の公平性も保つことができます。

車椅子バスケでは、障害の重い選手をローポインターといい、軽い選手をハイポインターといいます。選手の持ち点を判断する目安のひとつに、車椅子の高さや座り方の違いがあります。ローポインターは一般的に安定性を重視した低い車椅子を使用し、背中をシートにもたれかけるように座っています。ハイポインターは高めの車椅子を使い、上半身を自由に動かしてプレイします。

ハイポインター(左)とローポインター(右)のゴール下の攻防

ハイポインター(左)とローポインター(右)のゴール下の攻防

「持ち点制」は車椅子バスケを面白くする重要なポイントでもあります。例えば、体の動きの自由度が大きく、得点力の高いハイポインターに比べ、ローポインターには得点の機会は少ないかもしれません。でも、敵のディフェンスの動きを封じることで、ハイポインターの進路やシュートチャンスをつくり出すことが期待されています。また、体の機能には個人差があり、ローポインターの中にも比較的運動量の多い選手もいるため、チーム編成に有利な「キープレイヤー」にもなりえます。

このように、どの選手にもチームの中で必ず役割分担があります。誰と誰を組み合わせて起用するのかというベンチワークは、一般のバスケにはない工夫や戦略が必要であり、それが車椅子バスケの醍醐味のひとつにもなっています。試合観戦の際にはローポインターの動きや選手交代にも、ぜひ注目してください。

クラスと持ち点

クラス 体の機能など
1.0、
1.5
腹筋や背筋、体幹の機能がなく、前後左右への体の動きをコントロールできず、回旋できない。座位バランスがとれないため、背もたれから体を起こせない。バランスを崩して体を元の位置に戻すときは上肢(手)を使わなくてはならない。
2.0、
2.5
腹筋や背筋、体幹の機能はある程度あり、前傾姿勢はとれる。不十分ながら、体幹を回旋できるため、ボールの方向などに体上部を向けることができる。側方への動きはコントロールできない。
3.0、
3.5
体幹の前方への動きはよく、前傾しても上肢を使わずに起き上がれる。下肢にもわずかな筋力があり、足を閉じることができる。側方への動きはコントロールできない。
4.0 体幹の動きは正常だが、切断など下肢のどちらかに制約があるため、片側の側方への動きのコントロールが困難。股関節の外転を使って、少なくとも片側への体幹の側屈運動ができる。
4.5 すべての方向において体幹の動きは正常で、側方への動きも両方向とも制限なくできる。ごく軽度の下肢障害を持つ選手など、どんな状況であっても両側への体幹の側屈運動ができる。

さあ、観にいこう!

車椅子バスケを楽しむ基礎編が分かったところで、さあ、次はいよいよ、応用編です。実際の試合を観に行きましょう。冒頭でもご案内した、「三菱電機2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」は、車椅子バスケの迫力やスピード感、そして手に汗握るドキドキ感などを「リアル」に体験できる、絶好のチャンスです。

男子日本代表合宿に激励に訪れた井上雄彦氏(右端)と、前列左から、女子日本代表・網本麻里選手、男子日本代表・藤本怜央選手、後列左から、女子日本代表・橘香織ヘッドコーチ、男子日本代表・東野智弥コーチ、同及川晋平ヘッドコーチ

男子日本代表合宿に激励に訪れた井上雄彦氏(右端)と、前列左から、女子日本代表・網本麻里選手、男子日本代表・藤本怜央選手、後列左から、女子日本代表・橘香織ヘッドコーチ、男子日本代表・東野智弥コーチ、同及川晋平ヘッドコーチ

今大会は特に、『リアル』の作者である井上雄彦氏が日本代表を全面バックアップしています。多くの観客とともに代表を後押ししようと、千葉市内を走る千葉モノレールの車体ラッピングや車内ポスター、大会来場者に配布される特製の日本代表応援ブック(数量限定)など、『リアル』とコラボした大会プロモーションが展開されるそうです。

「この大会は絶対に負けられない試合。井上先生のポスターを見て多くの観客に来てもらいたい。多くの応援を受けて、リオ・パラリンピックのチケットをぜひ獲得したい」


と男子日本代表の及川晋平ヘッドコーチもいうように、観客の応援はまちがいなく選手の力にもなります。ぜひ会場に足を運んで、リオ・パラリンピック出場を目指す日本代表に大きなエールを送ってください。

井上雄彦氏が書き下ろした大会プロモーション用イラスト

井上雄彦氏が書き下ろした大会プロモーション用イラスト


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