いちばん安いのは、今季初昇格のあのクラブ! プレミアリーグの胸スポンサーの業種&お値段調査
WATCHいちばん安いのは、今季初昇格のあのクラブ! プレミアリーグの胸スポンサーの業種&お値段調査
胸スポンサー契約料1位のシボレーは、何と年間73億円!
実は、1979年、リヴァプールがユニフォームの胸に「HITACHI」のロゴを入れたのが、胸スポンサー第1号とご存知でしたか?
プレミアリーグのクラブの胸スポンサーというと、どの会社を思い出すでしょうか。
昨夏、チェルシーとの契約が話題となった横浜ゴム、アーセナルですっかりおなじみとなったエミレーツ、あるいはマンチェスター・シティのエティハドあたりを思い浮かべる方が多いかもしれません。
テレビ中継を見ながら、「クラブには、スポンサーからどのくらいのお金が支払われているのだろう?」「知らないロゴが入っているのだけれど、どんな企業なのだろう」といった疑問を感じたことがある方もいらっしゃるでしょう。
今回は、プレミアリーグ2015-16シーズンの20クラブのスポンサーについて、契約額と企業プロフィールを探っていきます。契約料が高い順にまいりましょう。
イギリス紙「デイリー・ミラー」によると、プレミアリーグNo.1は世界一でもあります。マンチェスター・ユナイテッドと2014年から7年という長期契約を結んだのは「シボレー」。社名でいえば、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモータースです。1982年に日本企業のシャープが初めてユニフォームスポンサーとなったマンチェスター・ユナイテッドは、携帯電話のVodafoneの後、AIG、AONと保険業界が続き、現在のシボレーが5代め。年間4700万ポンド(約72億9000万円)という年間契約料は、先代AONの2倍以上と伝えられています。
横浜ゴムとチェルシーの高額契約は、3ヵ月で締結というスピード契約でした
チェルシーを支える「横浜ゴム」は世界第2位!
2015年2月、2015-16シーズンからのチェルシーへのスポンサードを発表したのが「横浜ゴム」。5年契約で、年間4000万ポンド(約62億円)は、世界第2位です。こちらも、前季までのスポンサー、サムスンの年間契約料1800万ポンドの倍以上。プレミアリーグ王者と契約を締結した際は、まさかクラブが年末まで下位に低迷し、4月になってもヨーロッパリーグ出場権に届かない10位に留まるとは想像していなかったでしょう。
代わって来季チャンピオンズリーグ出場権をほぼ手中にしたトッテナムは、以前にマンチェスター・ユナイテッドのスポンサーだったAIGのアジア部門から独立した保険グループの「AIA」と契約しており、こちらは1600万ポンド(約24億8000万円)。
同じロンドンのクラブで、チャンピオンズリーグ出場権獲得をめざせる6位につけているウェストハムは、オンラインカジノの「Betway」と600万ポンド(約9億3000万円)。今季の戦績や、2016-17シーズンの欧州大会出場という注目度をみると、チェルシーに比べてこの2クラブのスポンサー料はお得にみえます。
ウェストハムは、昨シーズンの1月にイギリスの大手FX取引業者「アルパリ」の破たんで、胸スポンサーを失うという悲劇を経験したばかり。しかし今季はビリッチ新監督の下、チェルシーやリヴァプールの上に立つ躍進を見せ、アップトン・パークのラストイヤーということも重なってスタジアムの観客収容率はリーグ1位。来季から6万人が入るオリンピックスタジアムへの移転が決まっており、Betway社にとっては相当お買い得な広告枠だったのではないでしょうか。
「破たんしたアルパリのロゴの上から貼っただけ?」と話題になった、ウェストハムのBetway社ロゴ入りユニフォーム
ビッグクラブは「自動車」「航空会社」「金融」
高額ランキングの紹介に戻りましょう。マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーに続く高額スポンサー第3位は、アーセナルの「エミレーツ航空」。ご存じUAEの航空会社で、3000万ポンド(約46億5000万円)。
リヴァプールと「スタンダードチャータード銀行」は、昨年の4月に2018-19シーズンまでの契約延長に合意しており、2500万ポンド(約38億8000万円)。
次いでマンチェスター・シティと「エティハド航空」が2000万ポンド(約31億円)となっており、この後にトッテナムのAIAが続きます。強豪といわれるクラブに多額のお金を払っているのは、自動車、航空会社、金融といった業種の多国籍企業なのです
さて、7位のウェストハム以下は、年間費用が10億円を下回り、企業の顔ぶれも多彩になってきます。ウェストハムのBetway社と同額の600万ポンドで並んでいるのは、ニューカッスルの「Wonga」で、2012年10月に彼らの契約締結が発表された際には、物議を醸しました。
この会社は、イギリスで社会問題化していた高金利のローン会社。「お金を貸して利子を得ることを禁止しているイスラム教圏出身の選手がクラブを離れるのではないか」「いや、プレミアリーグスポンサーのバークレイ銀行とWongaは本質的には変わらない。問題はないだろう」などと、賛否両論さまざまな意見がメディアを賑わしましたが、ニューカッスルと彼らの関係は現在も続いています。
「Wonga」のロゴが入ったユニフォームは、パピス・シセが着用を拒否したと話題になりました
アジア系とオンラインカジノが多い中堅・弱小クラブ
9位以下になると、アジア系の企業とオンラインカジノが増えてきます。タイのビール会社「Chang Beer」から530万ポンド(約8億2000万円)を得ているのはエヴァートン。彼らは2004年から続いており、これは現在プレミアリーグに所属するクラブにおける最長のスポンサーシップです。
スウォンジーの胸に「金道」とあるのは中国の金融サービス「Goldenway(金道)」傘下の「GWFX」で、全体の13位にあたる400万ポンド(約6億2000万円)。
オンラインカジノでは、500万ポンド(約7億8000万円)で10位に並んでいるアストン・ヴィラの「Dafabet」とクリスタル・パレスの「Mansion」は、それぞれフィリピンとイギリス領ジブラルタルに拠点を持つ企業。14位ストークの「Bet365(300万ポンド)」、15位ワトフォードの「138.com(140万ポンド)」もオンラインカジノです。
キングパワーのヴィチャイ・スリヴァッダナプラバCEOは、胸スポンサーに留まらず、クラブの借金返済と経営権獲得に220億円以上を投じて2010年にオーナーに就任
少し毛色の違うところでは、アストン・ヴィラやクリスタル・パレスと同じ500ポンドをサンダーランドに出しているのは、南アフリカの商社「Bidvest」。
レスターの快進撃で一躍有名となった「キングパワー」は、タイにある大規模な免税店で、売上2800億円をめざす企業がレスターに払った年間費用はたったの100万ポンド(約1億6000万円)です。
WBAについている会計ソフト「QuickBooks(社名はIntuit)」や、サウサンプトンの地元エレクトロニクス企業「Veho」、ノリッジに出資したイギリスの生命保険会社「AVIVA」は、どこも100万〜120万ポンド。
ここまで紹介してきたプレミアリーグの胸スポンサー事情をまとめると、こうなります。
・強豪クラブには自動車、航空会社、金融などの世界的企業がついており、1600万〜4700万ポンド
・中堅以下に多いのは、アジア系企業とオンラインカジノで、100万〜600万ポンド
アジア系企業とオンラインカジノが増えた背景には、「インターネットを通じて、世界中のサッカーファンがプレミアリーグをはじめとするサッカー中継を楽しめるようになったこと」があります。アジアには、広告規制でCMを流せなかったり、時間帯が制限されている国があるのですが、プレミアリーグのクラブをスポンサードすることによって、海外の番組を通じて自国の消費者にサービス認知を促すことができるわけです。世界にプレミアリーグを知るファンが増えたことで、オンラインベッティングを楽しむ会員を増やそうとするカジノにとっても、ピッチの上で社名を宣伝する価値が高まりました。
以前は欧米や日本の企業が多かったスポンサーの世界も、時代の流れによって勢力図が塗り替わっているのがよくわかります。
お気づきの方もいるかもしれませんが、ここまで紹介したクラブの数は19です。最後に、「プレミアリーグで最もスポンサーの年間契約料が安いクラブ」を紹介しましょう。
クリスタル・パレスと同じMansion社がスポンサーのボーンマスは、75万ポンド(約1億2000万円)。ボーンマスにMansion社が払う金額よりも、日本で高級マンションを購入するほうが高いようです。
日本企業の広告宣伝担当者のみなさん、あるいは熱狂的なプレミアリーグファンの方は、スポンサードを検討してみてもいいかもしれません。
【プレミアリーグ 胸スポンサー契約料 ランキング】
1位/マンチェスター・ユナイテッド(Chevrolet/自動車/アメリカ)
4700万ポンド(約72億9000万円)/年
2位/チェルシー(横浜ゴム/ゴム製品/日本)
4000万ポンド(約62億円)/年
3位/アーセナル(Emirates/航空/UAE)
3000万ポンド(約46億5000万円)/年
4位/リヴァプール(Standard Chartered Bank/銀行/イギリス)
2500万ポンド(約38億8000万円)/年
5位/マンチェスター・シティ(Etihad Airways/航空/ UAE)
2000万ポンド(約31億円)/年
6位/トッテナム(AIA/保険/香港)
1600万ポンド(約24億8000万円)/年
7位/ウェスト・ハム(Betway/オンラインカジノ/イギリス)
600万ポンド(約9億3000万円)/年
7位/ニューカッスル(Wonga/金融/イギリス)
600万ポンド(約9億3000万円)/年
9位/エヴァートン(Chang Beer/アルコール飲料/タイ)
530万ポンド(約8億2000万円)/年
10位/アストン・ヴィラ(Dafabet/オンラインカジノ/フィリピン)
500万ポンド(約7億8000万円)/年
10位/クリスタル・パレス(Mansion/オンラインカジノ/ジブラルタル)
500万ポンド(約7億8000万円)/年
10位/サンダーランド(Bidvest/商社/南アフリカ)
500万ポンド(約7億8000万円)/年
13位/スウォンジー(GWFX/金融/中国)
400万ポンド(約6億2000万円)/年
14位/ストーク(Bet365/オンラインカジノ/イギリス)
300万ポンド(約4億7000万円)/年
15位/ワトフォード(138.com/オンラインカジノ/フィリピン)
140万ポンド(約2億2000万円)/年
16位/WBA(Intuit/IT/アメリカ)
120万ポンド(約1億9000万円)/年
17位/レスター(King Power/免税店/タイ)
100万ポンド(約1億6000万円)/年
18位/サウサンプトン(Veho/IT/イギリス)
100万ポンド(約1億6000万円)/年
19位/ノリッジ(Aviva/保険/イギリス)
100万ポンド(約1億6000万円)/年
20位/ボーンマス(Mansion/オンラインカジノ/ジブラルタル)
75万ポンド(約1億2000万円)/年