リヴァプールとチェルシーはなぜ強い?プレミアリーグ「好調クラブ」の共通項

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リヴァプールとチェルシーはなぜ強い?プレミアリーグ「好調クラブ」の共通項

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「走るサッカー」「速いサッカー」が主流に

昨年10月、ユルゲン・クロップ監督がリヴァプールの指揮官に就任すると、1月にはペップ・グアルディオラ監督がマンチェスター・シティ入りを発表。マンチェスター・ユナイテッドはモウリーニョ監督を招聘し、チェルシーはイタリア代表で指揮を執っていたアントニオ・コンテ監督と契約を結びました。名将が集まったプレミアリーグのサッカーは、大きく変わろうとしています。

11節までの順位は、1位リヴァプール、2位チェルシー、3位マンチェスター・シティ、4位アーセナル、5位トッテナム。上位のクラブのデータを見ると、いくつかの共通項があるのがわかります。プレミアリーグ公式サイトとデータ集計サイト「Whoscored」から、好調クラブに共通する特徴的な数字を紹介しましょう。

最初に目につくのは、「パス本数の多さ」です。1位リヴァプールは6597本、2位マンチェスター・シティは6545本、3位がアーセナルの6423本、4位チェルシーは5956本と、TOP4が上位を独占。

選手の数字を見ると、リヴァプールのヘンダーソンが904本でトップ、次いでマンチェスター・シティのフェルナンジーニョが834本、3位がレスターのドリンクウォーター、チェルシーのカンテが4位と、中盤の底で前と後ろをつなげるアンカーの選手がチームを支えているのです。ヘンダーソンとカンテは、走行距離が1位と2位の選手でもあり、彼らが細かく動いて適切なポジションを取ることでパスがまわり、試合を優位に進めているのが数字からもわかります。

同じく強豪が上位を占めているのは「ドリブルで仕掛けた数」。こちらはアザールやジエゴ・コスタが縦横無尽に走り回るチェルシーが1位。アグエロ、スターリング、ノリートの速攻が冴えるマンチェスター・シティが2位で、コウチーニョ、フィルミーノ、マネのリヴァプールが3位。敵陣でボールを奪って一気に攻めるシュートカウンターが多いトッテナムがこれに続き、アーセナルは5位となっています。

テンポよくパスをまわして相手の隙を窺いながら、ここぞという場面ではアグレッシブにドリブルで仕掛ける攻撃的なサッカーが、プレミアリーグの上位クラブに共通するスタイルです。

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厳しいプレスと速攻がクロップ&ペップの共通項

ここからは、それぞれのクラブの特徴を見ていきましょう。

データからは、リヴァプールとマンチェスター・シティに共通項が多いのがわかります。走行距離、シュート数、決定的なパスの本数ですべてリヴァプ—ルが1位、マンチェスター・シティが2位。前線から厳しくプレスをかけてボールを奪い、直線的なアタックでシュートに持ち込むのが彼らのサッカーです。

クロップ監督とペップ監督の違いは、リヴァプールが中央からの攻撃が多いのに対して、マンチェスター・シティはサイドアタックの比率が高いことです。サイドのマネとコウチーニョが中に斬り込んでシュートを狙うチームと、スターリング、ノリートとSBが連携してサイドを崩すチームの違いが、中央からの攻撃比率が67%と59%という差に表れています。

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わが道をいくアーセン・ヴェンゲル!?

新指揮官たちが「走るサッカー」「厳しいプレス」「ショートカウンター」を武器に戦っているなかで、アーセナルは独特です。

スルーパス59本は2位のマンチェスター・シティを14本も引き離してトップ。オフサイドの数が1位なのは、最終ラインの裏のスペースを狙うからこそでしょう。パスの総本数では3位に入っているのに、ロングボールの数はリーグ最下位。「Hit woodwork」、すなわちクロスバーやポストに嫌われたシュートの本数が2位なのも、アーセナルらしいといえるでしょう。

8本のうち3本は、今季5ゴールと好調ながら、決定機を外す姿も目立つテオ・ウォルコットです。ボールを支配し、短いパスをつないで攻める自分たちのサッカーを貫きつつ、前に出てボールを奪うアグレッシブな守備から速攻を仕掛けるシーンが増えたアーセナルも、新しい指揮官たちが織りなす「早くゴールに迫るサッカー」のエッセンスを取り入れています。

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勝つ指揮官は誰か?まったく読めないプレミアリーグ

ひと頃、「ポゼッションサッカーVSカウンターサッカー」というような、わかりやすい二元論で語られていた時期がありましたが、現在のプレミアリーグの上位クラブは、「より前でボールを奪って素早く攻める」従来とは異なるアプローチを共通項にし始めています。速攻かサイドか、攻め方をコントロールする役割は、以前は司令塔ともいわれていたトップ下の選手ではなく、幅広いスペースを走り回ってボールに絡むアンカーやインサイドMFに移っています。

リヴァプールの「走るサッカー」、チェルシーの3トップのスピーディな仕掛け、マンチェスター・シティのサイド攻撃とカウンター、スルーパスや高速パスを駆使したアーセナルのアタック…。ハイレベルな混戦となりそうなプレミアリーグ2016-17シーズンは、どの監督の戦術が勝つのかまったく予想できません。

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