忙しい人に朗報! 週末だけの運動にも健康効果はある

忙しい人に朗報! 週末だけの運動にも健康効果はある
世界保健機関(WHO)が2020年に発表したガイドライン(*1)では、一般的な成人(18~64歳)であれば、週に150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動、またはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施することを推奨しています。
*1. WHO身体活動・座位行動ガイドライン(日本語版要約)
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/337001/9789240014886-jpn.pdf
1回30分の運動を週5回すれば、最低ラインには届きます。さほど高いハードルだとは思いません。しかし、WHOの調査によると、成人の約27.5%、若い世代に至っては約81%がこの基準を満たしていないのだそうです。多くの人が運動不足なのです。そのことによる医療費の増大や労働力の不足は世界的な課題だと言えるでしょう。
WHOに警告されるまでもなく、心身ともに健康でいるためには、定期的に運動をする習慣を身につけることが望ましいのは言うまでもありません。とは言っても、多忙でそれだけの時間を確保しづらい人も多いでしょう。やむなく、週末だけジムに通ったり、あるいは走ったりして運動量の帳尻を合わせる人のことを、英語ではよく”Weekend Warriors”と表現します。
週の大半を不活動で過ごし、1日か2日だけ運動をするというのは、けっして理想的な状態ではありません。それでも何もしないでいるよりはるかにマシです。それどころか、ある側面においては、定期的に運動をすることと等しい効果を期待できることが、最近いくつかの研究で明らかになっています。
研究1:Weekend Warriorsにもダイエット効果はある
痩せることは必ずしも健康になることと同義ではありませんが、肥満が健康にさまざまな悪影響を及ぼすことは確かです。
2024年4月版の『The Obesity Society』誌に掲載された研究(*2)によると、いわゆるWeekend Warriorsスタイルでも、定期的に運動するスタイルと同程度に、体脂肪の減少や腹部脂肪の削減に効果があることが明らかになりました。
*2. The associations of “weekend warrior” and regularly active physical activity with abdominal and general adiposity in US adults
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/oby.23986
この研究は、米国の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを基に、20~59歳の約9,600人を対象に行われ、デュアルエネルギーX線吸収測定法(DXAスキャン)を用いて体脂肪を正確に測定しました。
772人のWeekend Warriorsグループ(A)、3,277人の定期的に運動をするグループ(B)、そして5,580人の運動不足のグループ(C)を比較したところ、AとBの間で腹部脂肪や全身の脂肪量、BMI(体格指数)において有意な差は認められなかったということです。容易に想像がつくことですが、Cはすべての分野において高い数値を示しました。
この研究結果は、忙しくて定期的な運動時間を確保できない人々にとって、週に1日か2日にまとめて運動することが有効なダイエット手段となり得ることを示唆しています。
研究2:Weekend Warriorsにも脳とメンタルに効果がある
運動は身体だけではなく精神的な健康にも良い効果をもたらすこと自体はさまざまな研究で明らかです。
2024年8月21日に『Nature Aging』誌に掲載された研究(*3)は、脳とメンタルの分野においてもWeekend Warriorsには定期的な運動をすることと同等の健康効果があることを示唆しています。
*3. Accelerometer-derived ‘weekend warrior’ physical activity pattern and brain health
https://www.nature.com/articles/s43587-024-00688-y
この研究は英国のUKバイオバンクに登録された約75,500人(平均年齢62歳)を対象に、リストバンド型のアクティビティトラッカーで運動量を測定し、Weekend Warriorsグループ(A)、定期的に運動をするグループ(B)、そして運動不足のグループ(C)に分けて、認知症やメンタルヘルスの疾病リスクを比較しました。
ここでも、AとBの間に有意な差は見つかりませんでした。Cと比較した結果は以下の通りです。
- 認知症リスク26%減
- 脳卒中リスク21%減
- パーキンソン病リスク45%減
- うつ病リスク40%減
- 不安障害リスク37%減
運動をするとアタマがすっきりとする感覚を味わったことがある人は多いでしょう。その効果は思いのほか長持ちするようです。
研究3:Weekend Warriorsでもあらゆる原因の死亡リスクを下げる
少し古いデータになりますが、Weekend Warriorsとそうでない人の死亡リスクを調べた大規模研究もあります。
2022年7月5日付で『JAMA Internal Medicine』誌に掲載された研究(*4)の調査対象は1997〜2013年に米国のNational Health Interview Survey(NHIS)に参加した350,978人(平均年齢41.6歳、54%女性)。死亡記録は2015年末まで追跡したものです。
*4. Association of the “Weekend Warrior” and Other Leisure-time Physical Activity Patterns With All-Cause and Cause-Specific Mortality.
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2794038
ここでもWeekend Warriorsと定期的に運動する人々の間で大きな差はありませんでした。運動不足が総死亡率を高めていることも同様です。原因別で見ると、心血管疾患とがんの死亡率が運動不足グループにおいて顕著に高くなりました。
週末にまとめて運動する「Weekend Warriors型」でも、定期的に運動する場合と同様に死亡リスクを下げることを示唆していると、論文著者らは結論で述べています。
まとめ
なにも週末に限るわけではありませんが、週に1日か2日しか運動をする時間をとれなくても、悲観するにはあたりません。まとめた運動でも、肥満、メンタルヘルスの問題、そしてあらゆる原因の疾病と死亡リスクを減らすことは十分に可能です。
ポイントはどうやら運動の「頻度」より総量と強度のようです。むろん、毎日運動できれば、それに越したことはありませんけど。