FBI スペシャル・エージェント志願者に必須の運動能力テストに挑戦してみた
DOFBI スペシャル・エージェント志願者に必須の運動能力テストに挑戦してみた
FBI(米国連邦捜査局)ほど映画やドラマで頻繁に登場する組織は他にないかもしれません。それでいて、現実にそこで働いているエージェントと接触したことがある人はごく少ないのではないでしょうか。
あなたが米国で複数の州をまたぐ犯罪者ではない限り、FBIのエージェントとは生まれてから一度も見たことも話したこともない、という人がほとんどだと思います。筆者自身も米国に住んで30年以上になりますが、一度もそんな機会はありません。
しかしながら、FBIはけっして架空の存在でも、空想の産物でもありません。れっきとした米国の政府機関で、通年で採用テストを行っています。そのプロセスの一部に運動能力テスト(Physical Fitness Test)があります。
映画ではよく、超エリートとして描かれることが多いFBI スペシャル・エージェント。彼らに課せられている運動能力テストとは一体どんなものか。FBI公式ウェブサイトに詳しく説明が載っていますので、例によって実際に筆者自身の身体を実験台にして試してみました。
TOP写真: “National Night Out 2016 – FBI Baltimore” by Federal Bureau of Investigation (FBI) is marked with CC PDM 1.0.
バナー写真: “FBI Tampa SWAT Day” by Federal Bureau of Investigation (FBI) is marked with CC PDM 1.0. To view the terms,
シンプルな種目、しかしかなり厳しい合格ライン
“FBI agent on sidewalk” by Tim Pierce is marked with CC BY 2.0
運動能力テストに課せられている種目は以下の4種類です。
1) 1分間のシットアップ
2) 300メートル走
3) 連続の腕立て伏せ(時間無制限)
4) 2400メートル走
5) 連続の懸垂(時間無制限)
※懸垂は戦術的採用プログラムの志望者のみ
拍子抜けするほど、シンプルな内容です。ここに書かれた順番で行い、種目ごとの間は最長で5分の休憩が許されます。それぞれの種目には-2 〜 +10までのスコア基準が女性と男性別に定められています。
志願者はこの運動能力テストを2回受けることになります。1回目はFBIアカデミーで基本トレーニングに参加するための条件、2回目は同アカデミーを卒業するための条件です。1回目の合格に必要なスコアは最低9点。但し、1種目でもマイナス点があると不合格になります。2回目の合格スコアは12点以上になります。
ウェブサイトの説明を読んだときは、「な~んだ簡単じゃないか」と正直なところ思いました。しかし、実際にやってみると、それほど甘くはありませんでした。
前述のFBIウェブサイトでは運動能力テストを行う目的を「スペシャル・エージェントの任務を遂行するために必要とされる運動能力レベルを有していることを確認する」ため、としています。その通りで、やることはシンプルでも、必要とされるレベルは決して低くはなかったのです。
■シットアップ
背中と肩を地面に着け、両膝を90度の角度で曲げ、両腕を胸の前でクロスさせた姿勢から始め、両肘が太ももに着くまで上体を起こす。この動作を1分間で最大何回できるかをテストします。スコアは回数です。
合格最低ラインのスコアは女性が35回以上、男性は38回以上です。最高スコアの10点は女性が57回以上、男性は58回以上です。
■300メートル走
通常の400メートル陸上競技トラックだと4分の3周です。ただし、志願者の状況によっては、平らな地面である限りはOKなのだそうです。立った姿勢から、つまりスターティングブロックを使用せずに、スタートすることを求められています。
合格最低ラインのタイムは女性が64.9秒以下、男性は52.4秒以下です。最高スコアの10点は女性が49.9秒以下、男性は40.9秒以下です。
■腕立て伏せ
時間無制限で腕立て伏せの最大連続回数をテストします。両肘を完全に伸ばした状態から、上体を真っ直ぐに保ったままで、上腕が地面と平行になるまで下ろします。途中で休憩することは許されません。
合格最低ラインのスコアは女性が14回以上、男性は30回以上です。最高スコアの10点は女性が45回以上、男性は71回以上です。
■2400メートル走
通常の400メートル陸上競技トラックだと6周です。300メートル走と同じく、志願者の状況によっては、平らな地面である限りはOKなのだそうです。
合格最低ラインのタイムは女性が13分59秒以下、男性は12分24秒以下です。最高スコアの10点は女性が10分34秒以下、男性は8分59秒以下です。
■懸垂
時間無制限で懸垂の最大連続回数をテストします。鉄棒にぶら下がり、両肘を完全に伸ばした状態から、顎が鉄棒の上にくるまで体を持ち上げます。体を揺すって反動を利用することはできません。途中で鉄棒から手を離すことも許されません。
合格最低ラインのスコアは女性が1回以上、男性は2回以上です。最高スコアの10点は女性が10回以上、男性は20回以上です。
市民ランナー+クロスフィッターが試した結果
私は年に何回かフルマラソンかそれ以上の距離を走るランナーですし、クロスフィットを10年以上続けていて、トレーナーとしての資格も持っています。どちらも競技者レベルではまったくありませんが、一般社会では「体力バカ」とか「筋肉オタク」と呼ばれるくらいの市民スポーツマンです。
その私がこのFBI 運動能力テストを試してみた結果は以下の通りでした。
最初の4種目合計のスコアが13点ですので、ギリギリでFBIスペシャル・エージェントになる最低条件(12点以上)はクリアしました。
以前の記事で紹介した米国陸軍兵士になるためのテストを試したときはほぼ満点でしたので、やはりFBIの垣根は高く設定されているようです。
参考記事:とてもシンプル、だけどキツイ!米陸軍が採用する体力テストUS Army Physical Fitness Test
誤解のないように書いておきますが、この運動能力テストは採用されるための一条件に過ぎません。他にも知能レベルや適性を判断するテストに合格しなくてはいけません。決して、これくらいの運動能力があれば誰でもFBIスペシャル・エージェントになれるという訳ではないのです。
そもそも、受験資格が23歳から38歳までの米国市民、大卒以上で2年以上の実務経験があること、となっていますので、私などは国籍でも年齢でも受験資格すらありません。
ただ、話のタネとしてはやってみるのも面白いかな、と思います。興味のある人は試してみてはどうでしょうか。幸いなことに、この運動能力テストには特別な器具は必要ありませんので、誰でも気軽に試すことができます。