氷上で弾けろ!ニッポンのガールズパワー。カーリング LS北見×浅田舞

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氷上で弾けろ!ニッポンのガールズパワー。カーリング LS北見×浅田舞

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2017年9月、平昌オリンピック代表決定戦を制し、見事日本代表の座を射止めた女子カーリングチーム、LS北見。試合中にピンマイクを通して聞こえてくる彼女たちの会話は常にポジティブ。どんな困難な局面でも明るさを忘れない彼女たちのプレーは、見ている人たちを幸せにする力があります。そんなLS北見の練習拠点を浅田舞さんが訪れ、実際にカーリングに挑戦。笑いの絶えなかったその一部始終を、映像と共にお楽しみください!

動画①基礎編

動画②ゲーム編

カーリングの道具ってどんなもの?

――まずはカーリングの道具についての説明から。試合を見ているだけではわからない道具の秘密に、浅田さん、興味津々です。

浅田 まずはカーリングに使う道具について教えてもらってもいいですか?

本橋 はい。主に3つあります。1つ目はこのカーリングブラシです。これでアイスをこすって、一瞬氷を溶かして、水の膜を作ってストーンを滑らせます。

浅田 ちなみにこの裏はどうなってるんですか?

本橋 布ですね。

浅田 あ、サラサラしてる。

本橋 今は全メーカー、みんな同じ布を使って試合をします。
2つ目はカーリングシューズです。靴底には滑り止めがついている側と、サーッて滑る側があります。

浅田 左右は決まってるんですか?

本橋 はい。右手でストーンを投げる人は、必ず左足にこの滑るほうを履きます。そして3つ目。一番大事なのがこの、かわいいコロコロしたカーリングストーンです。

浅田 だいたい何kgぐらいなんですか?

本橋 1個20kgです。

浅田 20kg!!

本橋 石の重さを聞いてみなさん驚かれますね。で、必ず持ち上げようとします(笑)。

浅田 持ち上げちゃいました、私(笑)

カーリングのルールと楽しみ方

浅田 では次に、カーリングのルールについて伺いたいと思います。氷上のチェスとも呼ばれていますよね。

本橋 まず試合に出る選手は4人です。そして、ここにある8投の石(ストーン)を両チームで投げ合います。簡単に言うと全部を投げ終わった時、どっちのチームが「ハウス」と言われる丸い円の中心に石を残せたかで点数が決まります。

本橋 そして、最後の形に行くまでにすごく入念な作戦があります。「ハウスに届かなかったから、あれはミスなの?」なんて聞かれることもあるんですが、実はあえて手前で止めて、ハウスの中の石を隠すために置いたりするんです。本当に最後の最後まで相手をちょっと悩ませるところに、石をみんなで一生懸命置いていくのも作戦の一つです。

浅田 へえー。攻めるだけじゃなくて、守りもあるんですね。

本橋 そうなんです。さまざまな駆け引きを積み重ねて、最後に点を取るか取られるかというドキドキの場面に、カーリングでは数多く出会うことができます。「勝ったな」と思ったほうが負けちゃう可能性もかなりあるので、最後までお互いが本当に緊張しながらやっています。

浅田 だから氷上のチェスなんですね。

本橋 そうだと思います。チェスをやったことがないので、よくわからないですけど(笑)。

「ウォー」「ヤップ」のかけ声の意味は?

浅田 続いて、スイープの技術についてお伺いします。強く掃けば掃くほど進むってことですか?

吉田夕 そうですね、女子ではたぶん1〜2メートルぐらい距離を伸ばせると思います。

浅田 そんなに変わってくるんですか!

吉田知 コツは、ブラシの頭だけに全体重を乗せるんですよ。

浅田 結構これ、腰にもくるし、腕にもくる感じですねー。スイープする時の掛け声も決まってるんですか?

吉田夕 はい。

藤澤 「イエス」とか「ヤップ」とかって言ってます。「こすって」「掃いて」って意味ですね。

鈴木 そして、「ウォー」って言われたら、やめます。

浅田 ゴシゴシと細かく掃いている時と、ゆっくりの時とあるように感じるんですけど、それは何か違いとかあるんですか?

吉田夕 細かく本気で掃いてる時は、「イエス」の指示が出た時。ラインがギリギリだったりもうちょっと距離を伸ばしてほしかったりっていう時です。ゆっくり掃いてるのは、割とラインもよくって、そのままの状態で来てほしい時。氷に落ちてるゴミを取り除くためです。髪の毛とか。

意外にザラザラな氷の表面。その変化を読む力がゲームのカギ。

浅田 もう一つ、このリンクについてもお聞かせください。私、実際に氷の上に立ってみて驚いたんですが、(表面が)結構ボツボツしてるっていうか。

本橋 あ、そうなんですよ。たぶんフィギュアスケートとは全然違う……?

浅田 フィギュアだったらこれ絶対ダメなやつです! ツルツルじゃないといけないので。

本橋 カーリングの場合、このツブツブ(氷の表面に水を撒いて凍らせたもの=ペブル)があることによって、石がベタッとアイスにくっつかずに滑っていきます。

浅田 ええーっ? ツルツルのほうが逆に進むと思っていました。

本橋 全然進まないんですよ。密着しすぎてしまって。そして、2時間半の試合の中でどんどんアイスが変わっていくんです。そこも読みながら試合を進める感じですね。

浅田 時間ごとに変わってきちゃうってことですよね?

本橋 変わります。時間、試合の時間帯によっても違いますし、場所や室温によっても違います。

藤澤 カーリングにおいては、このアイスを読む力がすごく大事です。最初はすごく滑らないアイスだったのに、30分ぐらい経ったらすごく滑るようになって、後半は結構スイープして氷(の表面の粒=ペブル)を溶かしているため、摩擦が増えてまた滑らなくなったり……。また、試合途中で観客が増えたり減ったりしても氷の状態が変化するんです。

浅田 ああー、熱気とか。

藤澤 みんなでその変化を読むっていうのが、カーリングでは結構大事かなって思います。

浅田 対戦相手によって作戦を変えることはありますか?

本橋 攻撃が得意なチームも、守りが得意なチームもあって、試合の中でその特徴を見抜いたりはしますが、相手のスタイルに乗ってしまうと(相手の)思うツボなので、なるべく自分たちの作戦プランをしっかり持ちつつ、相手にも少しアジャストするという感じです。

――LS北見の5人から、カーリングの基礎を教えてもらった浅田さん。次は氷の上での実技にチャレンジ! 笑いあり、スゴ技ありの実技編、ぜひ映像でお楽しみください!

子どものころから慣れ親しんでいたカーリング

――実際の体験を終えて、浅田さんがあらためて、LS北見の5人へインタビュー。それぞれにカーリングについて、オリンピックについて、熱い思いを語っていただきました。

浅田 先ほどは貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。みなさんこの北見市(および旧常呂町)のご出身とのことですが、どのようにカーリングと出会われたんですか?

本橋 私をカーリングに誘ってくださったのは小栗さん(故・小栗祐治氏、常呂カーリング協会初代会長)というコーチです。そしてここにいるほぼ全員が、その方に教わっています。

浅田 地域の人たちにとって、カーリングはどんな存在だったんですか?

本橋 小学校4年生から体育の授業にカーリングが組み込まれていたので、たぶん常呂町民は全員、触れたことがあると思います。

浅田 では、世界で戦いたい、日本代表として活躍したいと意識しはじめたのは、おいくつぐらいからですか?

本橋 私は18歳の時に、翌年開かれるトリノ・オリンピックの代表候補チームに入ることができて、突然オリンピックっていうのが現実味を帯びました。

藤澤 カーリングが1998年の長野大会で正式種目となって以来、オリンピックに出る選手はほとんど常呂町出身の選手で、子どもの頃から練習しに行けばオリンピック選手がいるというくらい、オリンピックを身近に感じていました。

吉田知 私と妹の夕梨花がカーリングを始めたのは、ちょうど長野オリンピックの翌年から。そのあと私が14歳の時には、トリノでカーリング娘旋風を起こした「チーム青森」のみなさんと全日本選手権で戦う機会がありました。その時に、私もいつか日本代表としてオリンピックに出たいなあというように思いました。

吉田夕 長野大会の時、私は5歳でした。それ以来、地元の知っている人たちがたくさんオリンピックに行っていたので、「あ、大きくなれば行けるもんだ」と思ってて……。

LS (笑い)

浅田 鈴木さんはいかがですか?

鈴木 ああー、そうですね……。私は本当、みんなとはちょっと違うというか……。最近3〜4年ぐらい。

浅田 そんなに最近!?

LS (大爆笑)

本橋 このチームの持ち味は個性。はい。鈴木選手は個性の塊なので。

みんなで作ったチーム、成長をサポートするスポーツくじ

浅田 本橋さんはキャプテンとして、このチームをどのように感じていますか?

本橋 いつか自分のチームが作れたらいいなという願いを抱いてから、一人ひとりの個性が消えないようなチームを作りたいとずっと思っていました。チームを作るということは、絶対に一人ではできないことだからです。みんな一人ずつこのチームにどんどん入ってきてくれて、いろんな人にサポートされて、チームLS北見っていうのがかなり今大きくなって、あったかいチームになってきているな、と感じています。

浅田 ではキャプテンの本橋さんに、スポーツくじの助成について、お伺いしたいと思います。スポーツくじは、さまざまなスポーツを支援しています。カーリングでは選手達へのアスリート助成、日本ジュニアカーリング選手権大会への助成などがあります。そのことについて、どのように感じていますか?

本橋 カーリングという技を見せ合う競技において、やはりスキルを磨く、経験を積むということにはかなりの時間が必要です。時間をかけてチームとして成熟させていく過程で、スポーツくじ助成には本当にお世話になっているので、ありがたく感じています。もちろん、そのようなサポートがあるということが、「よしっやるぞー」という気持ちにもなると思います。もしサポートがなければ、昨年(2016年)の世界選手権銀メダルも実現しなかったと思いますので、もう感謝の気持ちでいっぱいですね。

試合中、何をしゃべっているのかをぜひ聞いてほしい

浅田 カーリングをテレビなどでご覧になる方たちには、どんなところに注目してほしいですか?

鈴木 カーリングは、見れば見るほど面白さを感じていただけるスポーツだと思います。「あ、この石がこう使われるのか」といった作戦のところに注目していただけたらと思います。

吉田夕 その作戦にも関係するんですが、私たちって試合中にすごくいっぱいしゃべっているんです。その声をマイクが拾ってくれているので、私たちが試合中に何をしゃべっているのかっていうのも注目してください!

吉田知 私たちは昨年、世界選手権で日本勢初めての銀メダルを獲ることができたんですけれど、カーリング大国カナダの観客はいつの間にかみんな私たちを応援してくれていました。私たちのパフォーマンスや、氷の上で起こっていることをいちいち楽しんだりする姿を、面白いと感じていただけたそうです。ですからそういうところに、私たちの魅力があるんじゃないかなと思っています。

世界一の事前準備をしていれば必ず結果はついてくる

浅田 平昌オリンピックに向けてそれぞれ意気込みを一言ずついただいてもいいですか。

本橋 本当に誰が勝ってもおかしくないような舞台がオリンピックだと思っています。日本の国旗を胸に掲げ、選手だけでなく、各選手の所属の会社の人や家族たちも合わせて、「みんなで勝ちに行くぞ」っていう気持ちで、一戦一戦を迎えたいと思います。

藤澤 大会が始まるまで、合宿や遠征などで一つずつしっかり課題をクリアしていって、やるべきことはすべてやって、自信を持って平昌オリンピックに臨みたいです。そして、見ている方にも楽しんでもらえるような試合ができればなって思います。

吉田知 オリンピックまでの期間、世界一の事前準備をしていれば必ず結果はついてくると思っているので、オリンピックの舞台で私たち史上最高のゲームが更新されるように、1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。

吉田夕 オリンピックというすごく大きな夢の舞台に立てるワクワク感があります。しっかりと氷と向き合い、自分たちのベストパフォーマンスがそこでできればいいなって思います。

鈴木 やり残したことはないと言えるぐらい準備して臨んで、私たちらしく前向きにやっていければいいなと思っています。

浅田 ありがとうございます。みなさんの笑顔が平昌で輝くことを祈りつつ、日本からしっかり応援させてください。頑張って、気をつけて行ってきてください。……行くまでまだ数ヶ月ありますけどね(笑)

LS あはははははは!

LS北見(えるえす きたみ)

2010年、元チーム青森所属の本橋麻里選手により、北見市常呂町出身者5名で結成。以降、吉田知那美選手、藤澤五月選手の加入を経て、現在のチーム編成となる。2016年3月の世界選手権では日本勢初の準優勝。2017年、中部電力との平昌オリンピック日本代表決定戦を3-1で制し、2018年の平昌オリンピック出場を射止めた。練習拠点は5人の地元、北見市にあるアドヴィックス常呂カーリングホール。LSは「ロコ・ソラーレ」のことで、「ローカル」と「常呂っ子」から「ロコ」+イタリア語で太陽を意味する「ソラーレ」に由来し、「太陽の常呂っ子」という意味が込められている。

(左から)