異国の地での世界チャンピオン

異国の地での世界チャンピオン WATCH

異国の地での世界チャンピオン

スポーティ

現在、海外で世界チャンピオンになった日本人選手が二人います。一人目は世界スーパーフェザー級チャンピオン伊藤雅雪選手。二人目は世界フライ級チャンピオン木村翔選手。

伊藤雅雪選手はアメリカで、木村翔選手は中国で世界タイトルを獲得しました。また木村翔選手は、今年7月に中国の青島で防衛戦も行いKO勝利で防衛に成功しています。海外での世界戦は難しいとされ、日本人が勝てない時期が長く続いていました。異国での世界タイトル奪取は偉業であり、偉大なチャンピオンと言えます。

そこで、今回は筆者も対戦したことがある木村翔選手に日本人が難しいとされる海外での世界タイトルマッチについてインタビューしました。
(※メイン写真 中央 木村翔選手)

世界フライ級チャンピオン木村翔選手

木村翔選手は、オリンピック金メダリストでもある中国の鄒市明(ゾウ・シミン)選手を上海で2017年7月にTKOで下し世界タイトルを獲得しました。その後、大晦日に日本での防衛戦を経て、2018年7月に中国の青島で二度目の防衛戦に成功し、日本よりも中国で有名な世界チャンピオンと言えます。

ボクサーである筆者とも四年前に試合していますが、四年間で大きく成長し世界チャンピオンになりました。現在、四戦連続でKO勝利中であり、好戦的に攻め続けるファイトスタイルは中国の観客の心をつかみ、目の肥えた日本のボクシングファンからも人気があります。今回は中国での世界戦についてだけではなく、この四年間の変化についても話を聞きました。

アウェイで勝った方がかっこいい

ーー中国での試合は日本と比べてどのような違いがありましたか?

まず、人が多かったです。日本の後楽園ホールも独特の雰囲気がありますが、鄒市明(ゾウ・シミン)選手との世界戦では、15,000人以上の観客で満員だったから熱気がすごかった。記者会見も日本人を倒すという構図があったから盛り上がっていました。ただ、試合のときはボクシングの観戦になれていないようで観客はおとなしかったです。さすがに僕が勝ったときは、ざわついていましたけど。

ーー調整方法などの工夫はしましたか?

現地のホテルの設備が分からないので、日本での調整を丁寧に行い、減量後のリカバリーにも気を使って、日本からお粥、うどんなどの炭水化物を持参しました。でも、中国での試合は時差が少なかったので、直前まで日本で調整できてよかったです。

ーー中国ではあまり緊張などはしませんでしたか?

基本的に緊張はしません。中国での試合では、多くの人に見てもらえることが嬉しかったし、アウェイで勝った方がかっこいいかなと思っていました。

ーー中国での防衛戦は一度目の時と比べて違いはありましたか?

二度目の時のほうが、雰囲気は良かったです。一度目の世界挑戦では、自分は敵視されていましたが、防衛戦では応援してくれました。

ーー海外でやることには抵抗はありませんか?

中国だからといって難しさは感じていないし、やることはいつも一緒です。日本でやるのと同じように調整して、自分のスタイルで試合をするだけです。自分は、性格的に海外での試合が合っているので、どこでも試合をしたいです。

やることはいつも一緒

木村翔選手にとって、中国での試合は、緊張を強いるものではなく、満員の中で試合ができることがうれしいとのことでした。「アウェイで勝った方がかっこいい」「やることはいつも一緒」という言葉からも、木村翔選手のメンタルの強さ、性格が敵地での試合に向いているように感じられます。

また、木村翔選手が所属する青木ジムの会長である有吉将之氏も、性格が合っていると言っており、物怖じしない性格が、アウェイの海外でも日本と同じようにできる強さを生み、中国での試合の結果につながっていることがわかりました。

異国の地で世界チャンピオンになった木村翔選手ですが、四年前までは四回戦*の選手でした。

では、四年前と今ではどのように変化したのか。また、木村翔選手はボクシングをどのように考えているのか、聞きました。
※四回戦、四勝未満の選手。4ラウンドで試合を行う。

ボクシングは最低で最高のスポーツ

ーー四年前と比べて自分自身どこが変わったと思いますか?

持病があり、医者からボクシングは難しいと言われている時期があったので、ボクシングをやり切ろうと思いました。その時まで何も形の残るものがなかったので、ベルトを取ってチャンピオンになろうと覚悟が決まりました。大阪でWBOアジアチャンピオンのベルトを取ることでチャンピオンを自覚するようになり、練習への姿勢も変わりました。

ーー木村選手は、ボクシングをどのように考えていますか?

お金がもらえるスポーツでもないし、すごく大変なスポーツだと思います。でもボクシングは唯一好きになったスポーツで、人生を変えてくれました。だから自分にとっては「最低で最高のスポーツ」だと思います。ボクシングは、一戦一戦が本当に大きくて大切なものです。これからは一戦一戦チャンピオンとして勝っていきます。

価値ある一戦のために

木村翔選手にとって、ボクシングは自分自身を変えてくれた「最高のスポーツ」であり、病気であってもやり続けたいスポーツです。

ボクシングは、他のスポーツと比べると、年間の試合数は少ないですが、日々練習を重ね、多くの時間を費やしています。そのために、一戦一戦の価値は大きなものになります。負ければチャンピオンではなくなるため、木村翔選手にとって、防衛戦の価値はさらに大きなものになります。

ぜひ、大きな価値のあるボクシングの一戦一戦に、選手の費やした日々を重ねながら観て、チャンピオンと挑戦者の強い気持ちがこもったボクシングの世界戦に注目して欲しいです。


ボクシング 世界フライ級 木村翔