スポーツ中の疲労の原因は何?競技別に疲労の原因を解説

スポーツ中の疲労の原因は何?競技別に疲労の原因を解説 DO

スポーツ中の疲労の原因は何?競技別に疲労の原因を解説

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スポーツを行っていると必ず「疲労」が生じます。疲れは目に見えるものではないので抽象的な印象を受けるかもしれません。近年では、運動をすることで、体内で様々な変化が起こり、それが原因となって、疲労が生じるということが科学的に分かっています。ここでは競技別にどのような要因によって運動中の疲労が生じるのかを紹介していきたいと思います。

マラソンでは、グリコーゲンの枯渇が疲労をもたらす。

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マラソンは、中強度の速度で、長時間走り続ける競技なので、主要なエネルギー源は、体内に蓄えられた糖質であるグリコーゲンになります。グリコーゲンは、体内に1500kcal程度しか蓄えることができません。

マラソンの後半に生じる「30kmの壁」と呼ばれる疲れは、メインとなるエネルギー源であるグリコーゲンが枯渇することで生じます。そのためマラソンでは、スタート前にどれだけグリコーゲンを蓄えられるかが重要となります。

他に、グリコーゲンを節約するために、エネルギー源として、脂肪を使えるようにトレーニングすることも重要となります。また、走っていると汗をかいて水分が失われていきます。すると、血流が悪くなり、エネルギーをうまく作ることができなくなってしまうので、マラソンでは多量の水分の損失も疲労の原因となります。

チームゲームには、2種類の疲労が存在する。

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マラソンと違い、サッカーやバスケ、ラグビーなどのチームで行う競技には、2種類の疲労があります。一つは、ボールを取りに行ったり相手からボールを奪ったりするために、ダッシュをした後に感じる一時的な疲労です。ダッシュをする際には、クレアチンリン酸という物質を分解することで、瞬発的に、エネルギーを取り出しています。ダッシュを繰り返すと、クレアチンリン酸が枯渇し、瞬発的な力を発揮できなくなるため、疲労を感じます。また、強度の高い運動を行うと筋肉内が酸性へと傾き、エネルギーがうまく作れなくなります。こうしたことも一時的な疲労の原因となっています。

もう一つは、ゲームの後半にかけて感じる進行性の疲労です。サッカーやバスケ、ラグビーといった球技は、途中で休憩を挟んだりするものの、1つの試合で、運動する時間は、合計で1〜2時間となります。これだけ長い時間何度もダッシュを繰り返し、運動を続けていると試合終盤ではグリコーゲンが枯渇し、疲労を感じます。

格闘技では、相手の攻撃も関係する。

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格闘技でも、瞬間的な疲労と進行性の疲労の2種類が存在します。格闘技もパンチ等を連続的に打ち続ける強度の高い運動が何度も繰り返されます。そのため瞬発的な力を発揮するために、クレアチンリン酸がエネルギー源として使われますが、何度も繰り返すことでクレアチンリン酸が枯渇し、瞬発的な力を発揮できなくなります。後半になると、グリコーゲンが枯渇してくるので、エネルギー源がなくなり、力を発揮できなくなっていきます。また、試合の終盤にかけて、筋肉が酸性に傾き、エネルギーがうまく作れなくなることで疲労に繋がります。

この他に、格闘技では、相手の攻撃を受けるということが疲労と関係してきます。相手の攻撃を受けることで、痛みが徐々に蓄積し、うまく体を動かせなくなります。また、痛みを感じることで相手への恐怖心を感じてしまうと精神的に追い詰められ、交感神経系が過剰に反応してしまい、疲労へと繋がります。

こうしたことを考えると、格闘技では、相手にプレッシャーを与え、精神的に追い詰めることも試合に勝つには重要になってきます。また、格闘技では、体重別で試合が行われるため、試合前に減量をしますが、適切な減量ができていないと、筋肉が衰えてしまい、試合結果に影響を及ぼすことがあります。筋肉の分解を抑えつつ体重を落とすことも重要となってきます。

水泳や陸上は、距離により疲労の原因が異なる。

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水泳は、距離が50m、100m、200m、400m、1500m、陸上も距離が、短距離から長距離まで距離がいくつかに分かれています。決まった距離を、全力で走りきる競技では、距離によって疲労の原因が異なってきます。

水泳の50mや陸上の100m、200mといった短距離は、10〜30秒で競技が終了するので、運動中に「しんどい、きつい」と感じることは少ないかもしれませんが、体は確実に疲労しています。スタート時と比べて、ゴール直前では発揮できるパワーは、確実に減少することはよく知られています。これは、瞬発的なエネルギーを作るために、必要なクレアチンリン酸が、枯渇することが原因です。この他に、筋肉が酸性へ傾き、うまくエネルギーを作れなくなることも原因となっています。

水泳の100mや200m、陸上の400mや800mといった中距離は、1〜2分程度全力に近い速度を出す必要があります。こうした競技では、レースの後半では、うまく体を動かせなくなりますが、それは筋肉のカルシウム動態が変化することが、疲労の大きな原因となっています。

筋肉には、筋小胞体という器官があります。脳から筋収縮の命令を受け取ると、筋小胞体がカルシウムを放出し、筋肉を収縮させます。しかし、強度の高い運動を続けているとリン酸が蓄積し、これがカルシウムと結合して、筋肉を収縮させる働きを阻害することで疲労が生じます。この他に、細胞外へカリウムが蓄積することも疲労の原因として挙げられます。筋肉は、細胞内外のナトリウム、カリウム濃度をうまく調節することで、神経からの電気刺激を伝えています。しかし、激しい運動を行うと、細胞外へカリウムが漏れ出し、濃度の調節がうまくいかず、神経からの刺激をうまく伝えることができなくなってしまい、疲労が生じます。

水泳の1500mや陸上の5000m、10000mはある程度高い強度で、20分程度運動を続けなければなりません。こうした運動でも、先に述べたカルシウム動態が、変化することで疲労の原因となります。この他に、運動をする際に、メインで働く筋肉に、酸素が送られることで、脳への酸素供給が少なくなることや筋肉が酸性に傾き、うまくエネルギーが作れなくなることも疲労の原因となっています。もう少し長い時間運動を続ける競技になってくると、試合前のグリコーゲン量の状態も影響してきます。グリコーゲンの貯蓄が少ないと、レースの後半の疲労に繋がってきます。

運動中の疲労の原因を知ることは、スポーツを科学的に捉えたり、今行っているトレーニングを見直したりするのに役に立ちます。また、スポーツを観戦する際にも、科学的な視点から観戦することができます。是非こうした知識を今後のスポーツライフに取り入れてみてください。