スペイン女子自転車レースレポートPart1 「クラシカ・デ・ザルディバール 」

スペイン女子自転車レースレポートPart1 「クラシカ・デ・ザルディバール 」 WATCH

スペイン女子自転車レースレポートPart1 「クラシカ・デ・ザルディバール 」

スポーティ

スペインでは、女子の自転車レースのシーズンも、3月から本格的にスタートします。今年は、日本人サイクリストの萩原麻由子選手がスペインのプロチームのエネイカット・サイクリング・チーム(Eneicat Cycling Team)に加入、活躍が期待されています。

今回は、そんなスペインでの女子のレースの一つであるクラシカ・デ・ザルディバール (Klasika de Zaldibar)というレースの様子を取材しました。

TOP写真 Photo by Yukari TSUSHIMA

バスク地方でのレース


Photo by Yukari TSUSHIMA

世界有数の自転車王国であるスペインのバスク地方。この地の自転車ファンは、選手たちへ非常に熱い応援を送ることで有名です。もちろん、女子のレースもその例外ではありません。

3月中旬にザルディバール(Zaldibar)というバスクの小さな町で開催されたこの日のレースには、ジュニアのカテゴリーからサブ23、そしてプロフェッショナルまでの女子自転車選手が集まりました。

天気は若干の雨模様。しかし、このバスク地方では、雨を恐れていては自転車レースはできません。この日のエリートおよびアンダー23のカテゴリーに出走した選手は103人。レースの距離は短めの約70㎞。

しかし途中で斜度7%近い勾配の峠を3回登るという、かなりハードなもの。ゴール前を選手が3回通過します。「距離はほんと短いけど、楽なコースではない。」というのが、地元の自転車ファンの意見でした。

エネイカット・サイクリング・チーム


ウォーミングアップ中のエネイカット・サイクリング・チーム。Photo by Yukari TSUSHIMA

このレースには、萩原選手が所属するエネイカット・サイクリング・チーム(Eneicat Cycling Team)がら、8人の選手が出走しました。

監督のウンベルト・ゴメス(Humberto Gómez)氏にチームの様子を伺うと、

このまえのバレンシアでの1DAYレースでも、レースの内容自体は悪くなかったし、選手たちの調子も上がってきていると思うよ。

この日のエネイカットで優勝を狙うのは、チーム1の長身のジロッザ・イサシ選手(Zirotza Isashi)。実は彼女の自宅はこのレース会場からわずか8㎞しか離れていません。そのため、このレースにはチームで一番早くこのレース会場に到着しました。もちろん、彼女のご家族も一緒です。


ジロッザ・イサシ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

スタート直前に筆者とおしゃべりしてくれたのは、フランス出身のサンドラ・ドス・サントス(Sandra dos Santos)選手。彼女は以前、日本のチームに2年間所属したことがあり、日本のレースにも多数の出走経験があります。「だからちょっとだけなら、日本語が話せます。」と笑顔を見せてくれました。


サンドラ・ドス・サントス選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

優勝候補と目されていたのは、モービースター・チーム所属のエイダー・メリーノ(Eider Merino)選手。現在のスペイン・女子チャンピオンです。


エイダー・メリーノ選手(写真中央)。Photo by Yukari TSUSHIMA

レースがスタートするとすぐ、イサシ選手を含めた3人の選手で、先頭集団が形成されます。しかし、メイン集団と大きなタイム差を開くまでには至りません。そのメイン集団をコントロールするのは、エネイカット・サイクリング・チーム。


Photo by Yukari TSUSHIMA

その後、一旦先頭集団が吸収されると、大集団のままでレースが進みます。坂の登りになっても、アタックをかけて前に出ようという、積極的な動きを見せる選手は現れません。


Photo by Yukari TSUSHIMA

レースが動いたのは、最後の周回に入ってから。最後の登りで抜け出したメリーノ選手とニコル・ダゴスティン選手(Nicole D’ Agostin/ Bizkaia Durango所属) がゴール前でスプリント勝負の一騎打ち。僅差でメリーノ選手が勝利しました。


ゴール直後のメリーノ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

一方、エネイカット・サイクリング・チームは、レースの終盤にイサシ選手の自転車に機材トラブルが発生。ドス・サントス選手の第5位がチーム最高順位という結果でした。


Photo by Yukari TSUSHIMA

レース終了後、エネイカット・サイクリング・チームのウンベルト監督がこのように語ります。

イサシ選手の機材トラブルで優勝を逃したのは、かなり残念だったよね。でも、今日は集団の前の方でレースを進めることができたし、地元のバスクのチームに対して僕たちのような新しいチームが正面から勝負を挑むことができたのことは評価できることだと思う。

この日のレースには、地元バスクをはじめとする、スペイン北部に本拠地を置く自転車チームが集まっていました。日本ではほとんど知られていないことですが、スペイン北部には歴史のある女子の自転車チームが数多く存在します。

その中で、エネイカット・サイクリング・チームのような新しいチームがレースで存在感を示すことは、決して簡単なことではありません。そのような中でも、一歩一歩、確実に経験を積み重ねていくことを、チームとして重要視しているようでした。

ちなみにエネイカット・サイクリング・チームは5月下旬にバスク地方で開催される4日間のステージレース「WWT・エマクメーン・ビラ(WWT Emakumeen Bira)」に出走します。このレースは、ヨーロッパの女子の自転車レースの中でも重要な大会の1つです。

チームにとって、シーズン前半の大きな山場となるこのレース。日本ではあまり報道されませんが、インターネットなどで、どうかお楽しみください。