マトリックスパワータグも参戦。 ブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン

マトリックスパワータグも参戦。 ブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン WATCH

マトリックスパワータグも参戦。 ブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン

スポーティ

日本からマトリックスパワータグも参戦した、2019年のブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン(Vuelta a Castilla y León)。今年は全ステージ強風の中でのレースとなりました。

今回の記事では、この3日間のレースの模様を、マトリックスパワータグの奮闘ぶりとともにご紹介いたします。

TOP写真:スタート前のマトリックスパワータグ。選手の後ろにあるのは、第2次世界大戦で実際に使われた戦車。Photo by Yukari TSUSHIMA

サイクリストの最大の敵との戦い


地元ブルゴス出身のカルロス・バルベロ(Carlos Barbero)選手(写真右)。ダニエレ・べンナティ(Daniele Bennati)選手はとにかく風が気になる様子(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

4月の最終週に開催されたブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン。今年はブルゴス(Burgos)・パレンシア (Palencia)・レオン (León)という、スペイン北東の内陸部にある3都市がこのレースの舞台となりました。

このレースの大会主催者に今年のコースについてインタビューしたところ、

登りがほとんどなくて、とにかく平地が続くコース。スプリンターのためのレースだよ。

しかし、ただの平地のレースで終わることがないのが、スペインのロードレース。実はこの地域はもともと風の強い場所として、サイクリストの間で有名な地域です。加えて、このレース期間中は地元の人でさえ驚くほどの強風が終日吹き続けました。

第1ステージのスタート地点にある国旗が、力強くはためきます。


自転車選手はこの風景に恐怖を感じるそうです。Photo by Yukari TSUSHIMA

自転車選手にとって、最大の敵は「風」です。特に向かい風に向かって走るときなどは、集団が分裂されるリスクが付きまとうため、選手たちは、大変な緊張感の中でレースを戦うことになります。

そうした状況では、選手の体力・集中力も奪われやすく、その結果として、落車をはじめとするアクシデントが発生する確率が高くなります。また、この日、第1ステージのスタート前にはすでに、レース中の雨が降るとの天気予報もありました。

今日はハードなレースになるよ。

スタート前、多くの選手からこのような言葉が聞かれました。

マトリックスパワータグの参戦


出走前サイン台を降りるマトリックスの選手たち。Photo by Yukari TSUSHIMA

このレースに、日本からマトリックスパワータグが参戦していました。出場選手は、ゼッケン番号順にホセ ビセンテ・トリビオ選手、フランシスコ・マンセボ選手、安原大貴選手、小森亮平選手、オールイス・アウラール選手の5人。今回のレースでは、トリビオ選手とマンセボ選手の二人のスペイン人選手が、チームの存在を強くアピールしました。

まず、強風の第1ステージで、逃げる先頭集団に加わったのがトリビオ選手。強風だけでなく、強烈な雨も選手たちを苦しめたこの日のステージ。そんな過酷なコンディションのなか、トリビオ選手は100㎞以上を逃げ続けました。


久しぶりのスペインでのレースに笑顔のトリビオ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

また、アウラール選手もこの日は最後まで先頭集団でレースを終え、チームをアピールしました。そして、第2ステージ。今度飛び出したのは、ベテランのマンセボ選手。レース開始直後から逃げ集団に入り、140㎞以上を逃げ続けます。一時はメイン集団から7分近くのタイム差を付けることに成功しました。


第2ステージ40㎞地点。マンセボ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

そして、最終日の第3ステージ。この日のスタートラインの最前列にいたのは安原選手。最終日の逃げ集団を形成しようとアタックを試みます。しかし、残念なことに、この日は目的達成とはなりませんでした。


第3ステージスタート前の安原選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

レース前日にスペイン入国というハードスケジュールでこの日のレースに挑んだマトリックスパワータグ。また、初日のスタート前には、チームカーが故障するというハプニングにも見舞われていました。


他チームのスペイン人メカニックと話す小森選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

しかし、レースの合間に他のチームのスペイン人スタッフと話すなど、日本とは全く異なるスペインでのレースに対応しようとする姿勢が強くみられたことが印象的でした。

スプリンターの総合優勝


総合優勝したダビッデ・チモライ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

今年のこのレースで総合優勝したのは、初日からリーダージャージを着ていたダビッデ・チモライ(Davide Cimolai/ Israel Cycling Academy)選手。レース前の大会関係者の言葉通り、スプリンターによる総合優勝となりました。

しかし、何かと騒動の多かった今年のブエルタ・カスティーリャ・イ・レオン。2つのステージで順位の降格や選手の除外など、審判団による処分が下されました。

第1ステージでは、モービースター(Movistar)所属のカルロス・バルベロ(Carlos Barbero)選手が第1位でゴール。しかしその後、最後の直線でほかの選手の進路を妨害したということで、同選手は第5位に降格。

その結果、チモライ選手が第1ステージの優勝者となりました。ちなみに、バルベロ選手は第3ステージでチームメートのベンナティ選手とともに転倒、病院へ搬送されることになりました。


第2ステージスタート前のバルベロ選手。前日のゴール前の状況をほかの選手に説明中。Photo by Yukari TSUSHIMA

また、翌日の第2ステージでは、エドゥアルド・ミカエル・グロス(Eduardo Michael Grosu/Delko Marseille Provance) 選手がダビッド・デ・ラ・フエンテ(David de la Fuente/Lodofoods Louletano Aviludo)選手につかみかかり、転倒させるという事件が起きます。

このステージでグロス選手は第2位でゴールしましたが、最終的に、ゴールの順位は取り消され、レースを除外されることになりました。


ルーベン・フェルナンデス選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

全ステージ終了後、モービースターのルーベン・フェルナンデス(Rubén Fernández)選手にこのレースの感想を伺ったところ、彼の答えは次のようなものでした。

今回のレースはかなりきつかった。強風がずっと吹き続けていたからね。もちろん、この地域の風が強いことは知っていたよ。でも、レース中にここまで強くなるとは思っていなかった。

風に翻弄された今年のブエルタ・カスティーリャ・イ・レオンだったと言えるのではないでしょうか。