太陽のレース「 ブエルタ・アンダルシア・レース」レポート

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毎年2月に開催されるブエルタ・アンダルシア・ルータ・デル・ソル(Vuelta a Andalucia: Ruta del SOL)。登りが得意な選手が多く出走するレースです。

今回、2019年のブエルタ・アンダルシア・レースをレポートします。

TOP写真:第4ステージを制したサイモン・イェテス (Simón Yates/Michelton Scott) 選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

セビリヤでの自転車盗難事件


実はこの日の主役だった、ビタル・コンセプト・ビーアンドビー・ホテルズのサイクリスト。Photo by Yukari TSUSHIMA.

昨年のこのレースの総合優勝者のティム・ウエレンス(Tim Wellens/LOTTO SOUDAL)選手の第1ステージ制覇で幕を開けた、今年のブエルタ・アンダルシア。しかし、その翌日のスタート地点であるセビリヤのスペイン広場では、早朝からあるニュースが大会関係者の間を駆け巡っていました。

それは、「ビタル・コンセプト・ビーアンドビー・ホテルズ(Vital Concepto-B&B Hoteles)のチームの自転車が全部盗まれた!」というもの。

この日のレースのスタートは、朝10時。ビタル・コンセプト・ビーアンドビー・ホテルズは、スタートまでに、少なくても6台の自転車を確保する必要に迫られました。もちろん確保することは、簡単なことではありません。この日の朝、サイクリストやスタッフたちの表情には、ショックとあきらめの色が漂っていていました。


他のチームも協力を惜しみません。Photo by Yukari TSUSHIMA.

しかし、このような非常事態が起こると、なぜか抜群の対応力を見せるのがスペインの自転車業界というもの。スタート地点にビタル・コンセプト・ビーアンドビー・ホテルズが到着すると、他のチームが次々と機材の提供を申し出ます。

「自転車は調達できたの?」「給水ボトルは? ボトルゲージは足りてる?」「うちの自転車なら、2台貸せるよ。」そして、この大会のニュートラルカーのシクロス・カベーリョス(Ciclos Cabellos)も強力にこのフランスチームをバックアップ。


他のチームから自転車を調達。Photo by Yukari TSUSHIMA.

そうした人々の努力の結果、ビタル・コンセプト・ビーアンドビー・ホテルズは、必要な自転車を無事に調達し、この日のスタートラインに立つことができました。そしてこのチームの選手たちは、借り物の自転車で最終日までレースを続けたのです。

今年のこの大会の第1ステージのスタート前には、選手が走るコース上に油がまかれていたこともありました。幸い、すぐに路面は掃除され、問題なく選手たちは走ることができましたが、「なんでこんなことする人いるのかねぇ」と大会主催者側こぼしていたことは、言うまでもありません。

厳しいタイムトライアルのコース


本当にハードなコースだったのです。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年の第3ステージは、個人タイムトライアル。距離は16㎞と短いのですが、そのコースはとにかくハード。選手が言うには「前半は登りっぱなしで、中盤は下りっぱなし。でもって、ゴール前はずーっと登りっぱなし。」というもの。「平地の区間なんて全くないコースだから、走っている最中には一息入れることもできないよ」という選手も少なくありませんでした。

そんなハードなタイムトライアルの会場となったのは、「ハエン」。この地域の名物であるオリーブ畑の中を、選手たちが走ります。


Photo by Yukari TSUSHIMA.

コースはハードですが、好天に恵まれたこともあってか、選手たちの表情は明るいものでした。レース本番前、コースを試走中の選手にカメラを向けると、すこしだけリラクッスした表情を見せてくれます。


Photo by Yukari TSUSHIMA.

この日のタイムトライアルを制したのは、またまたウエレンス選手。


最後の登りに向かうウエレンス選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年のブエルタ・アンダルシアは、彼の連覇で決まりかと多くの人が考え始めた第3ステージの終了時でした。

レースの流れが変わった第4ステージ


カルロス・バルベロ選手(Carlos Barbero/ Movistar Team) が子供とハイタッチ。Photo by Yukari TSUSHIMA.

第4ステージの舞台は、グラナダ。スタート地点は、グラナダ市内からほど近いアルミ―リャ(Armilla)。スタート地点に集まった地元の自転車スクールの子供たちが、サイン台前に集合します。子供たちの目は、プロのサイクリストたちの自転車にくぎ付けです。


子供たちの目が輝きます。Photo by Yukari TSUSHIMA.

この日のレースはいわゆる、クイーン・ステージ。シエラネバダ山脈が、選手たちを苦しめます。そして、ミチェルトン・スコットとアスタナの連合軍が協力してペースを作った結果、ウエレンス選手は、総合優勝ジャージを手放すことになりました。

「いやぁ、残念だったよね。途中で落車もしちゃったしさ」とウエレンス選手が語る一方で、「作戦成功。よかったよねぇ。」と喜ぶのは、リーダージャージに袖を通したヤコブ・フルサン(Jakob Fuglsang / ASTANA PRO TEAM)選手。


リーダージャージを着たフルサン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

結局、今年のブエルタ・アンダルシアを制したのは、このフルサン選手。今年絶好調のアスタナのチーム力を見せつけた形になりました。

ちなみに現在、ヨーロッパ各地での自転車レースが続いていますが、各レースで総合上位陣に入っている選手の多くは、このアンダルシアのレースでも上位を占めていた選手が大半です。

今年前半のヨーロッパの自転車レースの流れを見ることができるのが、このブエルタ・アンダルシア。今年もその例外ではありませんでした。

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