【東京パラリンピック2020に向けてPART3】自転車王国・バスク地方で開催されたパラサイクリング・ビラ2019
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来年の東京パラリンピックに向けたスペイン人選手の動向をお伝えしているこの企画。今回はスペインのバスク地方で開催されたレースの様子をお伝えします。
スペイン国外からも数多くの参加者が集まったこのレースには、東京パラリンピックの表彰台を狙う選手が集合し、熱い戦いが繰り広げられました。
TOP 写真:スペイン・ パラサイクリング界のエース、リカルド・テン (Ricardo Ten) 選手。東京パラリンピックでも金メダルに最も近い選手の一人。Photo by Yukari TSUSHIMA.
PART1 >>スペイン・パラサイクリング・レポート
PART2 >>パラサイクリング スペイン選手権
自転車王国・バスク地方でのパラサイクリングのレース
トリシクロ(三輪自転車)のスペイン代表選手の一人、ジョアン・レイノソ(Joan Reinoso)選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.
ヨーロッパの中でも特に自転車レースが盛んな地域として知られる、スペイン・バスク地方。とは言え、この地方で毎年パラサイクリングの国際大会が開催されていることを知る人は、決して多くはありません。
その大会が、パラサイクリング・ビラ(Paracycling Bira)。今年で21回目の開催となります。スペインのパラサイクリング界では最も歴史のある大会の一つです。今年この大会は、来年の東京パラリンピックの出場選手を決めるためのUCI(Unión Ciclista Internacional:国際自転車連盟)ポイントが付くレースとなっていました。
レースは2日間にわたって開催され、自転車・三輪車・タンデム・ハンドバイクの選手がタイムトライアルとロードレースに挑みました。初日と2日目のレース会場はまったく別の場所でしたが、共にスタート直後に厳しい登りがあるという、共通点がありました。
スタート直後に登りがあると、特にパラサイクリングの選手はレースのペースをつかむ前に、坂を登らなくてはなりません。その結果、なかなか走るリズムがつかめず、不完全燃焼のままレースが終わってしまう選手も少なくないのです。
Photo by Yukari TSUSHIMA
加えて、特にハンドバイクの場合は、ロードレースのコースが街中に設定されることが多く、今回の大会もその例外ではありませんでした。
そのため狭く見通しの良くない急カーブを連続して曲がることにもなり、ハンドバイクの選手がこのように話をしてくれました。
坂と難しいカーブが続くコース。持久力とテクニックの両方が要求されるレースだよ。
国際色豊かなサイクリストたち
オランダのミッチ・バリズ(Mitch Valize)選手(左)とポルトガルのルイ・コスタ(Luis Costa)選手のゴール前スプリント(右)。Photo by Yukari TSUSHIMA
前述のとおり、来年のパラリンピックへの出場へ向けて、重要なレースとなったこの大会。そのためスペイン国内だけでなく、ポルトガルやフランス、ポーランド、オランダ、そして南米ベネズエラからも有力な参加者が集まりました。
一般的にヨーロッパでは自転車競技が盛んですが、パラサイクリングになると、若干状況が異なります。やはりヨーロッパでもパラサイクリングの競技人口は少ないところが多いのです。
そんな彼らにとって、レースができる機会はとても大切なもの。そしてレースの場で競うことができるライバルが存在するというのは、とても幸せなことなのです。
ポーランドのレナタ・カル―ザ(Renata Kaluza)選手(左)とオランダのシャンタル・ハエネン(Chantal Haenen) 選手(右)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
また、今回の大会の特徴の一つとして、選手同士のデットヒートがレース中に数多く見られたことが挙げられます。
自国内ならほとんどライバルのいない選手であっても、国際大会となれば状況は変わります。例えカテゴリーは違っても、互いに目標としあい、競うことができるライバルが出現するのです。
レース経験豊富なフランス人パラサイクリスト ドリアン・フォーロン選手
ウルト・ベロ・ソワサント・カトルのサイクリストたち。右から2番目がフォーロン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
この日のバスクでのレースには、フランスから数人のパラサイクリストたちが参加してました。彼らのチーム名はウルト・ベロ・ソワサント・カトル(Urt Velo64)。1991年に結成されたクラブチームで、フランスバスクのバイヨンヌからほど近い村で活動しています。
このチームのエースはドリアン・フォーロン(Dorian Foulon)選手。フランスチャンピオンジャージを着る長身の彼は、MC5カテゴリーのパラサイクリストであると同時に、スペインの自転車チームのカハルラル・セグロス・RGA(Caja Rural Seguros RGA)のアンダー23/エリートのチームに所属する選手でもあります。
表彰台に立つフォーロン選手(写真中央)。Photo by Yukari TSUSHIMA
体格にも恵まれた彼の強さはずば抜けており、タイムトライアルでは2位の選手に1分以上の大差をつけて優勝。
ロードレースでは、スタート直後にチームメートのノア・パル(Noah Palud)選手と共に集団を抜け出すと、一度は集団に捕まるもゴール前のスプリントに勝利。パル選手に次ぐ2着でレースを終えました。
タムトライアルのスタート前のフォーロン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
彼の当面の目標は今年9月に開催されるパラサイクリングの世界選手権で優勝することです。しかし、もちろん来年の東京での表彰台も彼の視野に入っています。
東京パラリンピックのMC5の自転車レースでは、この背の高いフランス人選手の活躍にもご注目下さい。