東京パラリンピック2020に向けてPART2 -パラサイクリングのスペイン選手権とタンデムの世界チャンピオン-
WATCH東京パラリンピック2020に向けてPART2 -パラサイクリングのスペイン選手権とタンデムの世界チャンピオン-
2020年の東京パラリンピックに向けて、スペインの自転車選手についてのレポートをお届けするこの企画。
第2弾の今回は、5月上旬にサラマンカ(Salamanca)で開催されたパラサイクリングのスペイン選手権をレポートします。
このレースでの優勝者は、1年間スペイン・チャンピオンジャージを着て国内外のレースに参加することが許されます。この大会の様子を、東京パラリンピックのメダル候補であるスペイン人・タンデムチームの紹介ともにお送りします。
TOP写真 Photo by Yukari TSUSHIMA
パラ・サイクリング独自の団体競技-チーム・リレー
チーム・リレーのスタート地点 Photo by Yukari TSUSHIMA
今回のスペイン選手権は、パラサイクリング独自の競技であるチーム・リレーで幕を開けました。このリレーを走るのは、3人のハンドバイクの選手たち。特にカテゴリーがH2からH5までのサイクリストが出走します。
コースは、1周約1.5㎞のサーキットコース。このコースを一人3周することを3回繰り返します。つまり、第1走者(3周)→第2走者(3周)→第3走者(3周)を3回繰り返すのです。
今回はカタルーニャ、マドリード、ガリシア、カステーィヤ・ラ・マンチャの4地方の代表チームがレースを繰り広げました。チームリレーでは、次を走るサイクリストはスタートライン近くにある待機場所で自分のスタートを待ちます。そして前走者が規定された距離を走り終わった後に審判からの合図を受けて、スタートするのです。
次の走者のスタート前。Photo by Yukari TSUSHIMA
そのため、陸上競技のリレーのようにバトンパスがあるわけではありません。各サイクリスト個々の走力がチームの結果に直接結びつくリレーなのです。
加えて、今回のチーム・リレーのコースはカーブが多く、非常にテクニカルなものでした。しかし、そのようなコースでも、選手たちは時速45㎞ほどで走り抜けます。
今年のチームリレーでスペイン・チャンピオンなったのは、カタルーニャのチームでした。以前の記事でご紹介したセルジオ・ガロッテ(Sergio Garrote)選手が所属するチームです。抜群の強さを発揮し、5年連続でスペインチャンピオンに輝きました。
チーム・リレーで優勝したカタルーニャ代表チーム。Photo by Yukari TSUSHIMA
このカタルーニャのハンドバイク・チームはガロッテ選手をはじめとして、マルティン・ベルチェシ(Martin Berchesi)選手、イスラエル・ライダー(Israel Rider)選手の3選手すべてがスペイン代表経験がある強豪チームです。ヨーロッパでも有数のチームの圧倒的な勝利に、他のチームも脱帽するしかありませんでした。
砂漠帰りのタンデム世界チャンピオン-アビラ/フォント組
レース前のアビラ/フォント組。Photo by Yukari TSUSHIMA
この大会には、8組の男子タンデムのチームが参加していました。その中で、最も注目を集めていたのが、イグナシオ・アビラ(Ignacio Avila)/ジョン・フォント(Joan Font)組。フォント選手がパイロット役です。
彼らは昨年のイタリアで開催されたロードレースの世界選手権で優勝した、現役のタンデムの世界チャンピオンです。また、同時に3年前のリオ・デ・ジャネイロ・パラリンピックでもロードレースで銀メダルを獲得しています。
また、彼らの活躍はロードレースにとどまりません。トラック競技でも世界レベルのサイクリストであるこのコンビ。今年オランダで開催された世界選手権のパーシュートでも、金メダルを獲得しています。加えて、この2人はマウンテンバイクのレースでも非常に有名なタンデムのコンビなのです。
毎年四月下旬に、サハラ砂漠で『ガーミン・タイタン・デザート(Garmin Taitan Desert)』という、6日間のマウンテンバイクによるステージレースが開催されます。今年このレースの最終第6ステージで、アビラ/フォント組はステージ優勝し、同時に総合でも第6位に入賞しました。
今年のこのサハラ砂漠でのレースには、元プロ・サイクリストが数多く参加していました。例えば、昨年引退したフランス人サイクリストのシルバン・シャバネル(Sylvain Chavanel)、スペイン人サイクリストのホアキン・プリート・ロドリゲス(Joaquim “Purito” Rodríguez)やハイマー・ツベルディア(Haimar Zubeldia)。
そして、昨年まで日本のチーム右京に所属していたオスカー・プジョル(Oscar Oujol)等々、豪華な顔ぶれがアビラ/フォント組のライバルたちでした。その中でのステージ優勝と総合6位は、高く評価されるべき結果と言えるでしょう。
Photo by Yukari TSUSHIMA
今回、アビラ/フォント組はこのサハラ砂漠でのレースが終わった2日後にサラマンカに到着。休む間もなく、このスペイン選手権に出走しました。サラマンカでのレース前に『ガーミン・タイタン・デザート』の感想を伺ったところ、
砂漠って、意外と終日風が強いんです。おまけに砂嵐も頻繁に起こるし。ロードレースと同じように、砂漠でも風が最大の敵です(フォント選手)
タンデム自転車は、砂に埋まりやすくてね。だから、レース中は何回も自転車を降りて、砂から車輪を掘り出さなきゃいけなかったんだ(アビラ選手)。
そして、来年の東京パラリンピックについては、
来年の目標は東京のパラリンピックで、表彰台に上ること。でも、本当に取りたいのは金メダル。可能性はあると思っています。(アビラ選手)
ヨーロッパのレースでは、表彰台の常連であるアビラ/フォント組。しかし、2人はこの日のレースを途中で辞めることを決断せざるを得ませんでした。やはり、サハラ砂漠でのレースによる疲労がかなり残っている印象でした。
日本期待のタンデム・コンビ-鹿沼・田中組-
日本代表のタンデムコンビとして、東京2020パラリンピックでメダルを期待されているのが、鹿沼由理恵・田中まい組です。
2013年からコンビを組んでいるこの二人は、2014年の世界選手権での優勝者であり、リオ・デ・ジャネイロ・パラリンピックのロード・タイムトライアルで銀メダルに輝いた名コンビです。
東京2020パラリンピックでは、タンデムの選手にご注目下さい!!