【東京パラリンピックに向けてPART5】パラサイクリング・スペイン選手権(トラックレース)

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【東京パラリンピックに向けてPART5】パラサイクリング・スペイン選手権(トラックレース)

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約半年後に迫った東京パラリンピックに向けて、スペインのパラサイクリングのレース情報をレポートしているこの企画。今回の記事では、1月に開催された、トラックレースのパラサイクリングのスペイン選手権の様子をレポートします。

毎年この時期に開催されるトラックのスペイン選手権ですが、今年は2つの大きな国際大会へ参加する選手を決める重要な場となりました。

TOP写真:ロードはもちろん、トラックレースでも現役の世界チャンピオンのリカルド・テン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

前回記事>>PART4「パラリンピックで観戦できる自転車競技を一挙紹介」

カナダ・ミルトンでの世界選手権


女子のタンデムのレース中。Photo by Yukari TSUSHIMA

スペインの長いお正月休みがやっと終わった1月中旬、マドリードでパラサイクリングのスペイン選手権が開催されました。この日マドリード北部のベロドロームに集まったのは、スペインのトップクラスの二輪自転車とタンデム自転車のサイクリストたちです。

今回のスペイン選手権は1月30日からカナダのミルトン(Milton)で開催される世界選手権の選考会も兼ねたものでした。しかし、世界選手権に出場するサイクリストの多くは、東京パラリンピックでも有力なメダル候補となります。そのため、間接的にではあっても、この日のスペイン選手権は、今年の夏のパラリンピックへも標準を合わせたものとなりました。

この日のマドリードは快晴でも気温は低め。レース会場となったベロドロームは室内でしたが、外部と通路が直接つながっていることもあり、内部の気温はやはり低め。そのため「あけましておめでとう、寒いよねぇ」という言葉が、選手同士の定番のあいさつでした。

男女混合チームも走る、パラサイクリングのチームスプリント


カタルーニャ選抜チームのチームスプリント。スタート前。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今回のスペイン選手権でも実施されたチームスプリントは、二輪自転車のサイクリスト3人による団体戦です。この競技では、出走するチームはトラックを3周走ります。

1周目が終わると最初に先頭を引いていたサイクリストがレースから離れます。そして2周目が終わると今度は2番目にチームの先頭を引いていた選手がレースを離れ、3周目は最後に残ったサイクリストが一人でゴールを目指します。

パラサイクリングのチームスプリントでは、男女混合のチームの参加が可能です。しかし、男子選手と女子選手が同じレースを走るなら、男子選手の記録の方が良いことが多いはずです。にもかかわらず、なぜ男女混合のチーム編成が認められているのでしょうか。

実はチームスプリントに限らず、パラサイクリングの団体競技では、男女混合のチームを組むことが公式にも認められています*¹。というのも、パラサイクリングの場合には、男女差以上に、障がいのカテゴリーの違いが選手の走力の差を大きく決定する要因になる、と考えられているためです。

パラサイクリング、特に二輪自転車の場合では、障がいの程度に応じたカテゴリーはC1 からC5までの5段階に分類されます。C1が最もハンディキャップが重く、数字が大きくなるごとに障がいの程度が軽くなります。

ハンディキャップが同じカテゴリー内の競争となる場合(例えばC5の選手だけによるレース)であれば、男子選手が女子選手よりも速く走る可能性が高いといえます。

しかし、障がいのカテゴリーが違う選手が競争すると、必ずしも男子選手が有利というわけではなくなります。例えば、C2の男子選手よりも、C5の女子選手の方が速い場合もあり得るわけです。こうした点も考慮したうえで、各チームのチームスプリントの選手が選考されるのです。


今年のチームスプリントのスペインチャンピオンとなった、ヒュンダイ・キョロカー。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年のスペイン選手権のチーム・スプリントを制したのは、世界チャンピオンのリカルド・テン(Ricardo Ten)選手を擁するヒュンダイ・キョーロカー(Hyunday Kyoro Car)。抜群の強さを発揮し、8年連続でこの種目のスペインチャンピオンとなりました。

*¹:https://www.jsad.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_13.pdf

パラサイクリングのスクラッチ


スクラッチのスタート直後。異なるカテゴリーの選手が一緒に走ります。Photo by Yukari TSUSHIMA.

前述のとおり、この日のスペイン選手権はカナダでの世界選手権の選考会を兼ねたものでした。もちろん、パラリンピックの世界選手権で実施されるほとんどの種目は、東京パラリンピックでも観戦できるものです。

しかし、パラリンピックの世界選手権で観戦できても、東京パラリンピックでは見ることができない種目が1つあります。それが「スクラッチ」と呼ばれるレースです。

スクラッチのルール自体は難しいものではありません。参加選手が一斉にスタートし、既定の距離を走り切った選手の間で順位が決定します。

パラサイクリングの世界選手権では、スクラッチは「C1・C2・C3」の選手が走るレースと、「C4・C5」の選手が出走するレースの2種類に分かれています。

出走選手の多いC4・C5のスクラッチレースでは、白熱したレースが展開されます。このカテゴリーの選手たちは障がいの程度が比較的軽いため、彼らはトラックのプロサイクリストに負けないくらいのスピードでレースを繰り広げます。

東京パラリンピックでは、残念ながらスクラッチのレースは実施されません。しかし、ほかの種目のC4・C5のカテゴリーのレースでも、スピーディーで迫力のあるレースを観戦することができるでしょう。

狙うは金メダル。C3のサイクリストのエドアルド・サントス選手


表彰台の中央に立つサントス選手。東京パラリンピックでも表彰台の有力候補。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年の東京パラリンピックで表彰台を狙うスペイン人選手の一人が、このエドゥアルド・サントス(Eduardo Santos)選手です。

スペインのC3カテゴリーではロードレースでも、そしてトラックレースでも敵なしのサントス選手はスペイン北部のナバラ地方出身。もちろん、世界選手権でも表彰台の常連選手です。

そんな彼が東京パラリンピックで狙うのはずばり、金メダル。トラックレースではタイムトライアルとパーシュートを得意とする彼ですが、そのスピードを生かしたロードレースでも表彰台に上る可能性が高い選手です。8月の東京パラリンピックでは、ロードとトラックのC3カテゴリーのレースにご注目ください。

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