ブエルタ・エスパーニャ2020がコース変更。近年まれに見る長距離ステージが与える影響は?

ブエルタ・エスパーニャ2020がコース変更。近年まれに見る長距離ステージが与える影響は? WATCH

ブエルタ・エスパーニャ2020がコース変更。近年まれに見る長距離ステージが与える影響は?

スポーティ

6月12日に2020年のブエルタ・エスパーニャのコースが正式発表されました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、当初予定されていたオランダとポルトガルのステージが省略され、今年は全18ステージで争われることになります。

今回の記事では、現地を良く知る地元チームの監督や現役選手の意見を参考に、大きく変更された今年のブエルタのコースについて分析します。

TOP写真:2020年のブエルタ・エスパーニャの全コースマップ。北スペインがレースの舞台。https://www.lavuelta.es/es/ より

ブエルタ・エスパーニャ2020 全18ステージ

2020年のブエルタ・エスパーニャ全18ステージのスタートおよびゴール地点は以下の表の通りです。

日付
ステージ
スタート/ ゴール
10/20
1
イルン/アラッテ・エイバル(169.5km)
10/21
2
パンプローナ/レクンベリ(151km)
10/22
3
ロドーサ/ラ・ラグーナ・ネグラ・デ・ビヌエサ(163.8km)
10/23
4
ガライ・ヌマンシア/エへ・デ・ロス・カバリェロス (190km)
10/24
5
ウエスカ /サビニャニゴ(190km)
10/25
6
ビエスカ /コル・デ・ツルマレー(135.6km)
10/26
休養日
10/27
7
ビトリア・ガステイス /ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア(160.4km)
10/28
8
ログローニョ/アルト・デ・モンカルビーリョ(164.5km)
10/29
9
B.M.シッド・カンポアモール・カスティーリョ・デル・バル/アギラール・デル・カンポー (163.6km)
10/30
10
カストロ・ウルディアレス/スアンセス(187.4km)
10/31
11
ビリャビシオサ/アルト・デ・ラ・パラポナ・ラゴス・デ・ソミエド(170.2km)
11/1
12
ラ・ポラ・リャビアナ/アルト・デ・アングリル(109.2km)
11/2
休養日
11/3
13
ムロス/ミラドール・デ・エーザロ・ドゥンブリア(33.5km・個人タイムトライアル)
11/4
14
ルーゴ/オーレンセ(205.8km)
11/5
15
モス/プエブラ・デ・サナブリア(234km)
11/6
16
サラマンカ/シウダード・ロドリゴ(162km)
11/7
17
セケーロス/アルト・デ・ラ・コバディーリャ(175.8km)
11/8
18
イポドロモ・デ・サルスエラ/マドリード(125.4km)

https://www.lavuelta.es/es/より筆者翻訳

当初予定されていたオランダでの3ステージが省略されました。またポルトガルを通る予定だった2ステージが、スペイン国内のルートに変更された結果、今年のブエルタは全18ステージとなります。

オランダでの平坦ステージがなくなったため、第1ステージは10月20日、スペインとフランスの国境沿いの町のイルン(Irún)からスタートし、バスク地方の登りの名所アラッテ(Arrate)が最初のゴール地点となります。

第15ステージは距離234kmの長丁場

2019年ブエルタ・エスパーニャ第21ステージにて。Photo by Ykari TSUSHIMA.

大きな変更があったのは、ブエルタ最終週となる第15及び第16ステージです。

まず、第15ステージのゴール地点がカスティーリャ・イ・レオン地方のプエブラ・デ・サナブリア(Puebla de Sanabria)へと変更され、この日の距離は234kmまで伸びることになりました。そのため、ブエルタ第3週目の前半の舞台となるガリシア地方のコースへの注目度が上がることになりました。

スペイン北西部のガリシア地方がレースの舞台となるのは、最後の休養日明けの第13ステージから第15ステージまで。この3日間に、今年のブエルタでは唯一の個人タイムトライアルと200km以上のラインレースが2日間続きます。

かつてプロサイクリストとして活躍し、今はこの地域を活動拠点とするUCIコンチネンタル・チーム「ジオス・キューイ・アトランティコ(Gios Kiwi Atlántico)」の監督であるエンリケ・サルゲイロ(Enrique Salgueiro)氏に、ガリシアの3ステージの解説をお願いしました。

写真中央がサルゲイロ監督。Photo by Yukari TSUSHIMA

第13ステージの個人タイムトライアルの見所は、ゴール前のミラドール・デ・エーザロ・ドゥンブリア (Mirador de Ézaro. Dumbria) の上りです。ここはプロの選手でもタイムトライアル用の自転車では上れない場所なので、通常の自転車に交換する必要があるでしょう。そのため、このステージは上りに強い選手が有利になると思いますし、おそらく総合優勝を狙う選手が上位に食い込んでくることになるでしょうね。

第14ステージは、それほど難しいレースにならないと思います。とはいえ翌日のステージが長丁場なので、総合優勝候補を抱えるチームには少し神経質な1日になるかもしれません。

第15ステージは、僕も良く知っていますが、とにかく上り下りが連続していて平坦な道がほとんどないルートです。3km 上って3km下って、その後4km上った直後に5km下って、とアップダウンがずっと続きます。加えてこの日は距離も非常に長いので、選手にとっては相当厳しいステージになると思います。

第16ステージが今年のブエルタの総合優勝者を決めるか。

2018年のブエルタ・エスパーニャ第9ステージ。ゴールのラ・コバディーリャに向かう先頭集団。Photo by Yukari TSUSHIMA

ガリシア地方を終えた選手たちは、カスティーリャ・イ・レオン地方のサラマンカを舞台に最後の勝負を繰り広げることになります。特に第16ステージのには注意が必要と語るのは、今年のブエルタに出走予定のコフィディス(Cofdis)所属のフェルナンド・バルセロ(Fernando Barceló)選手です。

昨年はチーム・ムーリアスの選手としてブエルタを完走したバルセロ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

サラマンカからスタートする第16ステージは、かなり危険なステージです。総合優勝を狙える選手を抱えたチームは、この日のスタート直後から逃げ集団に選手を送り込むはずなので、一日中緊迫感のあるレース展開になると思います。めまぐるしく展開も変わると思うので、TVで観戦していても本当に目が離せない1日になるでしょうね。

前日の第15ステージは、確かにアップダウンもありますし、距離も長いですね。でも、基本的には逃げ集団がそのままゴールする形になるかと思います。有力選手たちは、第16ステージのことを考えて少しでも体力を温存しておきたいところでしょうから。

オランダ・ユトレヒトは2022年のブエルタのスタート地点に

2019年ブエルタ・エスパーニャ第21ステージにて。Photo by Yukari TSUSHIMA

なお、今年のブエルタのスタート地点となる予定だったオランダのユトレヒトは、今回のコース変更を受けた結果、2022年のブエルタのスタート地点となることが報道されています*¹。

とにかく異例尽くめの今年のブエルタ・エスパーニャ。無事にスタートの日を迎えることが今の関係者全員の願いであることはいうまでもありません。

*¹:https://www.rtve.es/noticias/20200429/coronavirus-ciclismo-vuelta-holanda-cancelada/2012995.shtml

スペイン ブエルタ・エスパーニャ2020 ロードバイク