【ブエルタ・エスパーニャ2019】山岳とファンが主役のビルバオ・ステージ

【ブエルタ・エスパーニャ2019】山岳とファンが主役のビルバオ・ステージ WATCH

【ブエルタ・エスパーニャ2019】山岳とファンが主役のビルバオ・ステージ

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ブエルタ・エスパーニャのちょうど中間地点となった、今年のバスクステージ。ビルバオがゴールとスタートとなった第12・第13ステージは、バスク中の自転車ファンが、ビルバオの中心街に集合し、熱い盛り上がりを見せました。今年のビルバオでの様子をレポートします。

TOP写真:今年もブエルタを盛り上げるコロンビア人サイクリストたち。第13ステージのスタート直後。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ベテランと若手の対決となった第12ステージ


第12ステージ優勝のフィリップ・ジルベール選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ビルバオに選手たちが到着したのは、第12ステージ。ナバラ・サーキットをスタート地点とした距離171㎞のコースのゴール地点が、ビルバオの中心街でした。この日のコースの登りは、すべてが3級山岳。そのため、バスクでのステージにしては、山岳が控えめなステージとなりました。

この日の前半では、メイン集団をコントロールする有力チームが、ことごとく逃げに乗りたい選手の動きを封じ込めることに成功します。そのため、やっと逃げる先頭集団が形成されるころには、レースはすでにゴールまで70㎞の地点に差し掛かっていました。

ゴールのビルバオ市内に入る前に、選手たちを待ち受けるのは、バスク地方によく見られる道幅が細く、斜度があり、距離が短い登りの数々です。

こうしたコースは、有力選手のいる大人数のメイン集団よりも、その前で少人数で逃げている選手のたちの方に有利に働くことがしばしばあります。そして、この日もその例外ではありませんでした。

ゴールまでラスト10㎞を過ぎたころ、逃げ集団からフィリップ・ジルベール(Philippe Gilbert/ Deceuninck-Quick Step)選手が飛び出します。その動きに反応したのは、現在絶好調の2人のスペイン人若手選手。アレックス・アランブル(Alex Aranburu/Caja Rural Seguros)選手とフェルナンド・バルセロ(FernandoBarcelo/Euskadi Basque Country Murias)選手が、ジルベール選手の後を追います。

若手スペイン人選手2人と、ベテランのジルベール選手との差は、わずか10秒ほど。しかし、そのタイム差はジルベール選手がゴールするまで縮まることはありませんでした。

この日ステージ優勝を飾ったジルベール選手は、今年37歳。優勝後の記者会見で年齢について質問されると、このようにコメントをしました。

僕より年上のアレハンドロ・バルベルデ選手は、まだバリバリの現役だからね。これから数年は、僕もしばらくはこのレベルでのレースができると思う。

一方、ジルベール選手にわずかに及ばなかった、若手スペイン人2選手。両選手とも、すでに今年のブエルタ・エスパ―ニャでTOP10に入ったステージがあり、現在絶好調です。


2着争いを演じたスペイン人若手サイクリスト。バルセロ選手(左)とアランブル選手(右)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

特にアランブル選手は、このブエルタ・エスパーニャの前哨戦から2着となるレースが続いていました。そのため、この日の2着に関しても、かれのチームの反応は、“また2着? 本当に惜しかったなぁ”というもの。

一方、バルセロ選手所属のエウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス(Euskadi Basque Country Murias)はこの前日に、ミケル・イツリア(Mikel Iturria)選手がステージ優勝を飾っていました。チームとしては連日のステージ優勝を狙っていました。

“やっぱり、2日連続で同じチームがステージ優勝するのは難しいよね。でも今日もいいレースができたと思うよ。”と語るバルセロ選手。

同チームのジョン・オルディオゾラ(Jon Ordiozola)監督は、以下のように宣言しました。

このチームは、まだまだ勝てるチームだと思う。これからも積極的にレースを動かします。

この日も山岳賞ジャージを維持したのは、アンヘル・マドラソ(Angel Madurazo/Burgos BH)選手。この日は応援に駆け付けた息子さんと一緒に、表彰台に上がります。

実は第8ステージのスタート前、マドラソ選手にプレイステーション4がプレゼントされていました。というのも、第5ステージ区間優勝後の記者会見でマドラソ選手が、次のように話をしていました。

(自分の)奥さんに「プレステ4買って」とずっと頼んでいるんだけど、まだ「だめ」って言われているんです。今日の優勝のご褒美として、プレステ買ってもらえたらうれしいな。


息子さんと表彰台に上るマドラゾ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ブエルタ・エスパーニャが終わったら、お父さんが獲得したプレーステーションで遊ぶことを楽しみにしている息子さんなのでした。

サン・マメ・スタジアムからレースがスタートした第13ステージ


バスク人ファンの応援に笑顔を見せるジョン・デゲンコルブ(John Degenkolb/Trek-Segafredo) 選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

翌日の第13ステージはビルバオ市内からのスタート。サッカーチームのアスレチィック・ビルバオの本拠地であるサン・マメ・スタジアムがスタート地点となりました。

スタジアムに隣接する広い駐車場に集まった熱心なバスクの自転車ファンを前に、選手たちもいつもより上機嫌で観客との2ショットやサインのお願いに応えます。


サインに応えるホセ・ホアキン・ロハス(José Joaquín Rojas/Movistar)選手。 Photo by Yukari TSUSHIMA.

この日2番目に出走サイン台に姿を現したのは、リーダージャージを手にしたプリモッシュ・ログリッジ(Primož Roglič/Jumbo-Visma)選手。第2週目に彼がリーダージャージを手にした後は、チームがうまくレースをコントロールし、他の有力選手とのタイム差を順調に広げます。


リーダージャージのログリッジ選手。Photo byYukari TSUSHIMA.

この日のレースのコースでは、選手たちはスタート直後に、サン・マメ・スタジアムの中を自転車で1周した後、外のコースに出ることになっていました。

その様子をアスレティク・ビルバオ側が撮影したものが次のビデオです。このサッカーチームのユニホームを着てスタジアム内で先頭を走るのは、この地域出身のオマール・フレイレ(Omar Freire/Astana)選手、ジョナサン・ラストラ(Jonathan Lastra/ Caja Rural Seguros RGA)選手、ミケル・ビズカラ(Mikel Bizkarra/ Euskadi Basque Country Murias)選手の3人。


アスレチック・ビルバオが作成したブエルタ・エスパ―ニャ第16ステージのスタートの様子。

この日は6カ所の山岳を登る難コース。特にゴール前のマチュコの登りが多くの選手を苦しめました。最終的にこのステージで優勝したのは、若きクライマーのタデイ・ポガチャル(Tadej Pogacar/ UAE Team Emirates)選手。ログリッジ選手に先着し、第9ステージに続く、2回目のステージ優勝を手にしました。


タデイ・ポガチャル選手。写真は第15ステージのもの。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ログリッジ選手と他の有力選手とのタイム差が確実に広がる一方で、それでも総合上位に望みをつなぎたいチームと、ステージ優勝を積極的に狙うチームが明らかになってきました。

また、リーダージャージ以外の特別賞ジャージについても、候補者がほぼ絞られてきた感じのあるビルバオ・ステージとなりました。