ブエルタ・エスパーニャ2022・レースレポート オランダでの3日間のあと、スペイン・バスク地方からレースが再開

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ブエルタ・エスパーニャ2022・レースレポート オランダでの3日間のあと、スペイン・バスク地方からレースが再開

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2022年8月19日から、ブエルタ・エスパーニャが始まりました。今年は最初の3日間をオランダで開催し、その後1日の移動日を挟んでから、スペインでレースが開催されるという少々変則的なブエルタ第1週目となりました。そんなブエルタ第1週目の様子を現地スペインからお届けします。

TOP写真:第5ステージ終了後、ブエルタ・エスパーニャの総合首位に立ったルディ・モラール選手(写真左。グルパマ・エフデジ)。翌日のビルバオのスタート前には、彼を見るために朝早くから大勢の観客が集まりました。Photo by Yukari TSUSHIMA

ルイス・アンヘル・マテ選手「僕は逃げて、木を植える」

第5ステージ終了直後のマテ選手(写真右)Photo by Yukari TSUSHIMA

今年の夏も暑い日が続くスペイン。特に8月上旬から中旬にかけては、スペイン全土で気温が45度近くにまで気温が上がりました。それに加えて、最近3か月ほどはほとんど雨も降っておらず、畑や山はかなり乾燥していた状態にありました。

夏のスペインで、こうした状況が続くと心配されることの一つが「山火事」です。今年のスペインも例外ではなく、この夏は多くの地域で山火事が発生し、大きな被害をもたらしています。

こうした山火事の深刻な被害を受けた地域の一つが、アンダルシア地方のマラガの近くにある、シエラ・ベルメハと呼ばれる山間部でした。7月に発生したこの地域の山火事は、4800ヘクタールの森林を焼き尽くしました。

このシエラ・ベルメハの山火事被害に、とても心を痛めていた一人の自転車選手がルイス・アンヘル・マテ選手(エウスカルテル・エウスカディ)です。この地域が地元で、日ごろトレーニングでよく走るコースにもなっているシエラ・ベルメハの山火事被害を目にしたマテ選手は、ある「キャンペーン」をブエルタ開催中に実行することを発表します。

そのキャンペーンとは、「僕(マテ選手)がブエルタ・エスパ―ニャ開催中に、メイン集団から抜け出して逃げた距離を計測し、1㎞逃げるごとに1本の木を寄付してシエラ・ベルメハに植樹します。」というものでした。

マテ選手のこのキャンペーンはブエルタ開催前から話題となり、多くの人が彼の逃げに注目しています。今年のブエルタ開催直後のオランダの3日間では、平地で風が強いというコンディションのため、マテ選手の逃げは発揮されずに終わりました。しかし、山岳に強く、スペイン人選手の中でもプロとして長年の経験を持つマテ選手は、スペイン国内ならいつでも集団を飛びだして、逃げ集団を作ることができます。

今年のブエルタでは、マテ選手の逃げにどうかご注目下さい。

スペインで総合上位を狙う選手たちが本格始動

スペインで最初のステージはプリモッシュ・ログリッジが優勝。翌日リーダージャージのマイヨ・ロホを着ることに。Photo by Yukari TSUSHIMA

オランダの3日間は、主にスプリンターたちがレースの主役となりました。しかし、スペインに入ると、状況は一転し、今年のブエルタで総合優勝を狙う選手たちの動きが、一気に活発になります。

第4ステージのラグアルダがゴール地点となった中級山岳の152㎞では、今回のブエルタの総合優勝の大本命をみられているプリモ・ログリッジ選手(ジュンボ・ビズマ)がステージ優勝。レース4日目にして、総合順位のトップに躍り出ました。

しかし、この第4レース終了後、やはり総合で上位入賞を目指すスペイン人選手の一人であるエンリック・マス選手(モービースター)が、観客の一人から野次を飛ばされ、その野次に強く激しい口調で反応したことがSNS等で話題になりました。この影響がマス選手や彼のチームに対して、どのような影響が出るのかが注目されています。

また、今年のブエルタ・エスパーニャには過去にブエルタを総合優勝したことがある選手が6人もいることが話題になっています。

その中でも、最も注目を集めているのが、今年がプロの自転車選手として最後の年になるアレハンドロ・バルベルデ選手(モービースター)です。スタート地点に彼の姿が現れると、観客はひときわ大きな歓声と拍手が彼を迎えます。

特にスペインの中でも自転車レースが盛んなバスク地方では、バルデルデ選手は特に人気のある選手です。しかし、バスクの観客の中からは、バルベルデ選手の引退を惜しむ声以上に、彼が今まで第一戦でプロの自転車選手として戦ってきたことへの尊敬の声の方が多い印象がありました。

オランダと北スペインが舞台のブエルタ第1週

第6ステージのスタート前、ビルバオにて。Photo by Yukari TSUSHIMA

今年のブエルタは、最初の3日間ではオランダがレースの舞台になりました。もともと3週間のレースでは最初の数日は非常に神経質なレース状況になりがちですが、道も狭く、風も強く、そのうえ石畳も多いオランダのコースは、選手の間の緊張感を一層高めることになりました。実際に走っていた選手の中でも、「オランダでのレースは、緊張感が強くて、ぴりぴりしている選手が多かった。レース中も落車の恐怖がいつもあった。」という選手もいたほどでした。

スペインに戻ってきたブエルタは、スペイン北部のバスク地方からレースをスタートしました。いつもバスクのファンは自転車レースがあると、大勢の観客が沿道に出て熱狂的に選手たちを応援しますが、ブエルタもその例外ではありません。

第5ステージのゴール地点となったビルバオでは、通称「グラン・ビア」と呼ばれる市内の目抜き通りがゴールとなりまいた。車の交通がほとんど封鎖された状態のビルバオの中心地に選手たちが入ってくると、観客が大きな歓声と共に出迎えました。

Photo by Yukari TSUSHIMA

ブエルタの第1週はオランダからバスク地方・カンタブリア地方・アストリアス地方といった北スペインの山岳地帯がその舞台になりました。標高が高く雨が多いこの地域でのレースは、8月でも選手にとっては気温の低さと戦いながらのレースとなりました。

ブエルタの第2週はスペイン南部がレースの舞台となります。北部とは違い、南部は9月の初旬でも気温が30度を超える日が珍しくありません。北部と南部の気温・気候の極端な違いが選手の体調にどのような影響を与えるのかが注目されます。

スペイン ブエルタ・エスパーニャ ロードレース