プリモ・ログリッジが2連覇達成。ブエルタ・エスパーニャ2020後半戦レースレポート

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プリモ・ログリッジが2連覇達成。ブエルタ・エスパーニャ2020後半戦レースレポート

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10月20日からスペイン北部を舞台にして始まったブエルタ・エスパーニャ。今回はプリモ・ログリッジ(Primož Roglič /Team Jumbo-Visma)選手の2連覇で幕を下ろした、後半戦の様子をレポートします。

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TOP写真:今年のブエルタエスパーニャの総合順位の表彰台にて。写真右から、第2位のリチャード・カラパス選手、優勝のプリモ・ログリッジ選手、第3位のヒュー・カーシー選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

総合優勝を決めたガリシア・ステージ

第14ステージで優勝したティム・ウォレンス選手(左から2番目)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ブエルタ・エスパーニャの第3週の最初の舞台となったのは、スペインの北西部に広がるガリシア地方。個人タイムトライアルと2日間の200km超えのステージが設定されたこの地方が、今年はログリッジ選手の総合優勝を決定的にする舞台となりました。

2回目の休養日明けの翌日に設定された第13ステージの個人タイムトライアルは前半が比較的平坦コースなのに対し、最後の約2kmで斜度20%の激坂が選手たちを待ち構えます。

多くの選手が最後の上りの手前で自転車をタイムトライアル用のものから通常のレースの自転車に変更することを選択、ログリッジ選手も同様に上りの手前で自転車を乗り換えました。

この日のログリッジ選手は、前半の平坦区間では自分のリズムでは走れていないようでしたが、上りで自転車を取り替えると、そこから自力を発揮。激坂を乗り越え、この日のステージ優勝を手にします。しかし、この日ステージ2位だったウィル・バルタ(Will Barta/CCC)選手とのタイム差はわずか1秒。ギリギリでのステージ優勝となりました。

そしてこの日が終わった時点で、総合1位のログリッジ選手と第2位のリチャード・カラパス選手(Richard Carapaz/INEOS Grenadiers)のタイム差は39秒、第3位のヒュー・カーシー選手(Hugh Carthy /EF Pro Cycling)とのタイム差は47秒。決して大きいようには見えないこのタイム差が、後々まで総合上位争いに影響を与えます。

翌日の第14ステージの距離は204km。比較的長めの距離だったにも関わらず、この日ステージ優勝したティム・ウォレンス(Tim Wellens/Lotto Soudal)選手を含む逃げ集団はこの日の平均時速44.3km というハイペースでレースを展開。最終的に優勝候補を含むメイン集団はは先頭から3分44秒差でゴールしますが、この日のレースが翌日の選手たちのコンディションを左右することになりました。

そして翌日第15ステージは今年のブエルタ最長の238km。そしてこの日は朝から雨模様。終始アップダウンが続くこの日の道路と冷たい雨が選手たちの体力を奪います。結局この日は集団スプリントとなり、総合上位陣の間でタイム差がつくことはありませんでした。しかし、この日のレース時間は6時間以上。選手たちは体力をかなり消耗することになりました。

ハードな3ステージとなったガリシア地方。ここでついたタイム差が、後日総合上位の選手の行動に大きな影響を与えることになりました。

総合上位は僅差の勝負。

このブエルタではカラパス選手のアシスト役に徹したクリス・フルーム選手(Chris Froome /INEOS Grenadiers ) 。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ガリシア地方をあとにした選手たちの戦いの舞台は、カスティーリャ・イ・レオン地方の南部の街・サラマンカ近郊へと移動しました。

第17ステージは、距離178kmで最後にラ・コバディーリャの上りゴールが待ち構えます。ブエルタの開幕前には「第16ステージまでには優勝者が決まり、この日はステージ優勝狙いの選手が主役になる。」と予想されていましたが、実際には総合上位3名が1分以内タイム差でこの日を迎えることになりました。

この日のレース終盤、総合2位のカラパス選手と同3位のカーシー選手が、ログリッジ選手とのタイム差を縮めるために、アタックを仕掛けます。2人の選手に立て続けにアタックをされたたため、メイン集団にいたログリッジ選手は、この2選手にゴールで先着を許してしまいますが、タイムロスを20秒近くの最小限に食い止めます。その結果、今年のブエルタの総合優勝はログリッジ選手の手に渡ることになりました。

第18ステージにて。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年は、最終ステージとなった第18ステージ。マドリードの目抜き通りを選手たちが走り抜けます。レースが終わった直後、無事にマドリードに到着できた安堵感が選手だけでなく、チームスタッフの表情からも読み取ることができました。

新型コロナウイルス対策の成果は?

Photo by Yukari TSUSHIMA.

開幕前には、レースが途中で中止される可能性も囁かれた今年のブエルタでしたが、オーガナイザーを始めとする関係各所の努力により、無事にマドリードのゴールへたどり着くことができました。

ブエルタ期間中に、2回実施された選手やチームスタッフ、そして大会関係者へのPCR検査もすべて陰性という結果に終わりました。しかし、マドリードの最終ステージ終了後に実施されたPCR検査で、45人の交通警察官に陽性反応が出ていたことが報道されました。

しかし、幸いなことに11月15日現在、参加選手やチームスタッフにコロナ感染のニュースはまだありません。スペインにおける自転車レースでの新型コロナ対策は、他の国と比べても厳格な条件を課している事が多いとも言われています。しかし、感染の危機は常にあることを改めて思い知る、ブエルタの終了後のニュースとなりました。

2021年のブエルタはブルゴスのカテドラルからスタート。

ブルゴスのカテドラル(大聖堂)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

すでに来年のブエルタ・エスパーニャのスタート地点がブルゴスとなること、そして第1ステージはブルゴスのカテドラル内部をスタート地点とする個人タイムトライアルとなることが発表されています。

加えて、来年の最終ステージのゴール地点は、ガリシアのサンティアゴ・デ・コンポステーラとなる可能性が高いとの報道もあります。

今年の総合優勝を決める舞台となった、ガリシア地方。来年のブエルタでも注目すべき地域であると言えるでしょう。

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