【ブエルタ・エスパーニャ 2019】新城幸也選手が出走中。アリカンテ・ステージ・レポート
WATCH【ブエルタ・エスパーニャ 2019】新城幸也選手が出走中。アリカンテ・ステージ・レポート
8月24日からスペインで開催されているブエルタ・エスパーニャ (La Vuelta a España) 。今年は、スペイン南部の塩田の町のサリーナス・デ・トレビエハ (Salinas de Torrevieja)から、3週間のレースがスタートしました。
今回の記事では、バレンシア地方のアリカンテ周辺が舞台となった第1ステージから第3ステージまでの様子をレポートします。
TOP写真:第2ステージのゴール直後の新城幸也選手(右)。他の選手と比較すると比較的余裕のある表情でゴール。Photo by Yukari TSUSHIMA.
第1ステージ 波乱含みのチームタイムトライアル
選手たちの後ろにあるのは巨大な塩の山。Photo by Yukari TSUSHIMA
チームタイムトライアルで幕を開けた、今年のブエルタ・エスパーニャ。スタート地点となったのは、サリーナス・デ・トレビエハ(Salinas de Torrevieja)という塩の産地。スタート地点にある塩田と、そこから生産された塩の山が選手たちを迎えます。
距離は14㎞弱と短い、この第1ステージ。しかしコースの難易度は、過去のブエルタのタイムトライアルと比べても、トップクラスのもの。町の中を走るため、短い距離でカーブが絶え間なく続きます。また海沿いを走るので、風の影響は避けられません。
とにかく見通しの悪いカーブが多い。それに、ゴールに向かう最後の直線では向かい風が結構強くてね。かなり難しいコースだよ。
そう話していたのは、今年ブエルタ初出走のフェルナンド・バルセロ(Fernando Barceló/ Euskadi Basque Country Murias)選手。
ブエルタ初出走の選手も多い、エウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス。Photo by Yukari TSUSHIMA
バルセロ選手の言葉を裏付けるように、この日のレースでは数々のアクシデントが発生しました。まず、前述のエウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアスのチームカーがこの日コースアウトし、道路脇の壁に衝突します。
続いてUAEエミレーツ (UAE Emirats)の選手たちがレース中に転倒し、フェルナンド・ガビリア(Fernando Gaviria)選手やファビオ・アル(Fabio Aru)選手が負傷。
そして、この日の優勝候補だったジュンボ・ビズマ(Jumbo-Visma)には、自転車の機材トラブルに見舞われた直後に、選手の大半が巻き込まれる落車が発生。その結果、大幅にタイムをロスしてしまいました。
波乱続きのこの日のタイムトライアルを制したのは、いつも通りチームタイムトライアルを走ったアスタナ(Astana Pro Team)。総合優勝候補の一人であるミゲル・アンヘル・ロペス(Miguel Ángel López)選手が、初日からリーダージャージに袖を通しました。
第1ステージでリーダージャージを手にしたロペス選手。写真は第2ステージのもの。Photo by Yukari TSUSHIMA.
なお、この日のレース後、各チームからこの日のコース設定について厳しい意見が聞かれたのは、当然と言えるでしょう。
第2ステージ 総合上位を狙う選手が動いたステージ
第2ステージ優勝のナイロ・キンタナ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.
波乱の幕開けとなった第1ステージの翌日。スペイン有数のリゾート地であるベニドルム(Benidorm)から、第2ステージがスタートしました。
ゴール地点はカルぺ(Calpe)という街で、距離は199.6km。この日も朝から気温が高く、選手たちが出走前サイン台に集まる時点で気温はすでに30度近くに上がっていました。
アレハンドロ・バルベルデ(Alejandro Valverde/Team Movistar)選手はリラックスモード。Photo by Yukari TSUSHIMA.
この日のコースは前半に2級及び3級山岳があり、後半にも3級山岳がそびえるというもの。基本的にはクライマー向きのコースでしたが、積極的にレースを動かしたのは総合優勝を狙う選手たちでした。
前半は逃げ集団が飛び出したものの、レースが動いたのはゴールまで20㎞を切ってから。ナイロ・キンタナ(Nairo Quintana/Team Movistar)選手やニコラ・ロッシェ(Nicola Roche/Sunweb)選手、リゴベルト・ウラン選手(Rigoberto uran /Education First)をはじめとする総合上位を狙う数人の選手が飛び出します。
この集団から抜け出したのが、キンタナ選手。最後は独走し、第2ステージの区間優勝をものにしました。なお、リーダージャージを着ていたロペス選手も第2集団内でゴール。しかしこの日、第1集団でゴールしたロッシェ選手にリーダージャージを渡すことになりました。
集団ゴールのロペス選手(写真右から3番目)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
この日、ゴール地点の気温は40度近く。加えて、海沿いのレースが続くため、湿度も高くなります。そのため選手の中には、この時点で呼吸困難になりかけていた選手もいました。そして、この暑さがどこまで選手たちの体力を消耗させるのか、各チームが気にし始めていました。
第3ステージ 数少ないチャンスをものにしたスプリンターは?
第3ステージで優勝したサム・ベネット選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.
第3ステージはイビ(Ibi)からアリカンテ(Alicante)までの188km。コースは比較的平坦であるため、スプリンター向けのステージです。
今年のブエルタは、別名「スプリンター殺し」と呼ばれるほど山岳主体のコース設定です。そのため、スプリンターにとって、こうした平坦基調のコースは貴重なチャンス。スタート前から、各チームのスプリンターが気合十分で区間優勝を狙います。
そうしたスプリンターに交じって、一人さえない表情で出走前サイン台に現れたのは、UAEエミレーツのガビリア選手。初日のチームタイムトライアルでの転倒の影響が残る彼は、この日終始後方でレースを進めることになりました。
インタビュー中のガビリア選手。初日のチームタイムトライアルで左ひざと左腕を負傷。写真は第2ステージのもの。Photo by Yukari TSUSHIMA.
とは言え、この日のレース自体は順調に進みます。総合上位を目指す選手やクライマーは大きな問題もなくこの日のステージを乗り切り、ゴール前は予想通りのスプリント合戦。その結果、サム・ベネット(Sam Bennett/Bora Hansgrohe)選手が第2ステージを制しました。
アリカンテを中心とした最初の3ステージでは、海からの強烈な風と高い湿度に苦しむ数人の選手が見受けられました。
しかし、本格的な山岳が始まると、こうした選手たちの体調も徐々に上がっていくでしょう。とはいえ、例年よりも気温の高い日が続く今年のスペイン。今年のブエルタでは、上手に体調管理ができた選手が総合上位に名前を連ねることになるのではないでしょうか。