SPORTIE.COM

9月17日、スペインの首都マドリードでブエルタ・ア・エスパーニャが最終日を迎え、ジュンボ・ビズマのセプ・クス選手が、総合優勝に輝きました。この記事では、今年のブエルタの様子をレポートします。

TOP写真　今年のブエルタで総合優勝したセプ・クス選手（写真中央）。総合3位となったプリモ・ログリッジ選手（写真右）とともに、第20ステージを走行中。Photo by Yukari TSUSHIMA

ブエルタ・ア・エスパーニャとは何か

ブエルタ・ア・エスパーニャ（以下、ブエルタと省略）は、スペインを舞台にした自転車レースです。3週間かけてスペイン国内の様々な町をめぐりながら、選手たちは自転車レースを繰り広げます。このレースに出走する選手たちは、フランスとスペインの国境にあるピレネー山脈をはじめとして、意外と山々の多いスペイン国内を毎日150km以上走ることになります。

ヨーロッパには、このように3週間かけて行われる自転車レースがブエルタを含めて3種類あります。5月開催のジロ・デ・イタリア、7月に開催されるツール・ド・フランス、そしてこのブエルタは、世界トップレベルの自転車選手だけが参加できるレースなのです。

ブエルタ初日は、大雨の中のタイムトライアルでスタート

第2ステージのスタート前、大雨のステージでチーム紹介を受けるジュンボ・ビズマ。カメラマンのレインコートにも大粒の雨粒が見える。Photo by Yukari TSUSHIMA

今年のブエルタは、8月26日にバルセロナでのチーム・タイムトライアルで幕を開けました。この夏も水不足が心配されるほど晴天と高温の夏が続いていたバルセロナでしたが、ブエルタの舞台となった8月26日と27日は、大雨がほぼ絶え間なく降る日となりました。

初日のチームタイムトライアルはレース開始直前に大粒の雨が降り出し、コースとなっていたバルセロナ市内の一部の道路が冠水した上に町中の明かりも少なくなるなど、出走した選手たちにとって非常に厳しい条件でのレースとなります。そのため、レース中に落車したチームも数多く見られました。

そして翌日の第2ステージのスタート地点となった、マタロという港町でもスタート前から大雨に見舞われます。現地にいた報道陣から、レースの開催自体を心配する声も聞かれましたが、この雨の中、レースはなんとかスタートしました。

この後のステージでも、雨に苦しむ日が数多くあった今年のブエルタでは、日を追うごとに体調不良に苦しめられる選手が増え始めます。咳に苦しむ選手も見られるようになります。

有力選手は体調を維持、ブエルタ後半戦を盛り上げる

今年のブエルタで3ステージを制したレムコ・エヴェネプール（写真中央）。ブエルタ第20ステージにて。Photo by Yukari TSUSHIMA

悪天候による体調不良に苦しむ選手も見られましたが、総合優勝候補と目されていた選手たちは順調に日々のレースを進めます。そんな中で特に注目されていた一人であるレムコ・エヴェネプール選手は、第3ステージを優勝してから3日間総合リーダージャージに袖を通します。しかし、ブエルタ第1週目の後半にあった山岳ステージでは自身が納得するようなレースができず、結果的に第6ステージで総合首位の座を明け渡すことになりました。

休養日明けの第10ステージの個人タイムトライアルでも暗い表情を見せていたエヴェネプール選手でしたが、第2週目の後半から、ステージ優勝と山岳賞ジャージの獲得に目標を切り替えると、快進撃を開始。結果的に今年のブエルタでは3つのステージで優勝しただけでなく、目標としていた山岳賞ジャージも獲得することになりました。

ジュンボ・ビズマの3選手が表彰台を独占

ブエルタ最終日、マドリードの街を走るセプ・クス選手（写真右）。Photo by Yukari TSUSHIMA

その一方で、今年のジロの優勝者のプリモ・ログリッジ選手とツールの優勝者のヨナス・ヴィンゲゴー選手を擁するジュンボ・ビズマは、第3の男と目されていたセプ・クス選手が大活躍。第8ステージからリーダージャージを手にすると13日間総合首位を守り続け、最終日にマドリードのゴールへ到着しました。

また、今回総合第2位にはヨナス・ヴィンゲゴー選手、第3位にプリモ・ログリッジ選手とセプ・クス選手のチームメイトが表彰台を独占することになったジュンボ・ビズマ。同じチームの選手が表彰台を独占することは、3週間のレースの中でもほとんど見られることではなく、快挙といってもよいでしょう。

加えてこのブエルタの総合優勝により、ジュンボ・ビズマは今年のジロ・ツール・・ブエルタと3週間のレースすべてで、総合優勝者を送り出すという快挙も成し遂げたことになります。
今年のブエルタは、ジュンボ・ビズマの突出したチーム力とレムコ・エヴェネプール選手の強さが際立った3週間となりました。

2024年はポルトガル・リスボンがスタート地点に

また、ブエルタの最終日には、2024年のブエルタ・ア・エスパーニャのスタート地点が、ポルトガルの首都・リスボンとなることが正式に発表されました。

リスボンは1997年にもブエルタのスタート地点となったことがあり、選手たちは石畳と坂の町からスペインに向かって走ることになります。