こたつに入ってスポーツ!?超高齢化社会に向けた世界ゆるスポーツ協会の挑戦
DOこたつに入ってスポーツ!?超高齢化社会に向けた世界ゆるスポーツ協会の挑戦
“スポーツ弱者を、世界からなくす”をコンセプトに掲げる世界ゆるスポーツ協会。
これまでに世界ゆるスポーツ協会は、ハンドソープボールやゾンビサッカーなど、ゆるスポーツと呼ばれる数々の新しいスポーツを生み出してきました。
これらのスポーツは、意図的に障害を設けることで、運動神経や性別、障害の有無に関わらず皆で一緒に楽しむ事が出来るようになっています。
そんな世界ゆるスポーツ協会が次に挑戦するのは、2025年に訪れると言われている超高齢化社会に対する取り組み。運動不足を始めとする高齢者の抱える様々な課題を、ゆるスポーツで解決することを目指します。
2月29日に、神奈川県にある介護老人保健施設「ひとりざわ」にて、高齢者の課題解決に向けた新たなゆるスポーツの体験会が行われたので取材にいってきました。
体験会は、神奈川県横浜市の介護老人保健施設「ひとりざわ」で行われた
リハビリ効果もある!高齢者向け新ゆるスポーツ
今回披露された新たなゆるスポーツは、「こたつホッケー」「打ち投げ花火」「トントンボイス相撲」の3つ。スポーツと言われてもピンと来ない名前ばかりです。
こたつホッケーで対戦する体験者達
・こたつホッケー
こたつの上に投影されたみかんを、本物の湯のみを持ちながら飛ばし、相手のゴールに入れて得点を競うゆるスポーツです。湯のみには本物のお茶が入っていて、こぼしてしまうと相手の得点になります。こたつ上の本物のみかんは障害物の役割を果たします。
腕の曲げ伸ばしをすることで運動不足を解消することができます。
お孫さんが見守る中、打ち投げ花火を体験する様子。
・打ち投げ花火
天井に投影された的に向かって風船を投げ上げ、その得点を競うというとてもシンプルなスポーツ。風船が的に当たると、花火が打ち上がります。的の中心ほど高得点になっていて、高得点を取るほど花火の演出が豪華になっていきます。座って行う競技のため、車いすの利用者でも気軽に行えるようになっています。
手を上げ下げすることで、普段動かすことがない腕全体の運動を行うことが出来ます。
トントンボイス相撲中、必死に声を出す体験者。土俵は、声の大きさによって明るく光るようになっている。
(紙相撲力士:全国紙相撲倶楽部 提供)
・トントンボイス相撲
その名の通りトントン相撲を声で行うというスポーツです。各プレイヤーが各自のマイクに向かって「トントントントン」と声を出すと、その大きさに応じて土俵が揺れるようになっています。
シニア層の健康において重要な発声を行う事で、ストレス発散などの様々な効果が期待できます。
(今回の3つの競技は世界ゆるスポーツ協会とトンガルマン株式会社によって共同開発されました。)
ゆるスポーツを利用してカラダもココロも健康に
今回の新しいゆるスポーツは、高齢者における慢性的な運動不足の問題の解決策として、自然とリハビリ運動になるように作られているそうです。体験者は競技中に、「疲れたね」や「汗かいて来ちゃったわ」などと口にしていて、運動の効果を実感している様子を見せていました。
こたつホッケーの途中、湯のみのお茶で一息つくシーンも
体験会中印象に残ったのが、体験した高齢者の方々の活き活きとプレーしている姿です。こたつホッケーの体験後、体験者の方が「どうでしたか?腕の疲れは大丈夫ですか?」と質問されると「疲れも気にならないほど、楽しかった!」と元気に答えるシーンが見られました。
また、トントンボイス相撲中には、普段はあまりしゃべらない方が「トントントントン」と大きな声を出している様子も見られました。この時には、周りのみんなも熱中していて、部屋が暑くなるほどでした。
このように、普段は単純動作になってしまい退屈なリハビリを、楽しんで行えるのは、ゆるスポーツならではだと思います。
自分の力士が倒されて悔しがる様子の体験者。体験者はみんな楽しそうに行っていました
今回の高齢者向けゆるスポーツは、運動を楽しく行えるだけでなく、高齢者のメンタル面への配慮もなされています。
打ち投げ花火の花火を使うアイデアは、施設の人のお話をヒントに生まれたそうです。外でしか観る事の出来ない花火のような光景は、普段施設の中で暮らす高齢者の方々にニーズがあるそうです。
このように高齢者の欲求などを理解した上で、高齢者が精神的に充実できるようにデザインされているのも、このゆるスポーツの特徴です。体験会では、天井に鮮やかな花火が上がった際に、「きれい」と呟きながら見とれていた方が何人もいらっしゃいました。
打ち投げられた花火に、思わず笑みがこぼれる体験者達
ゆるスポーツで、誰もが世界チャンピオンに
世界ゆるスポーツ協会のプロジェクト・プロデューサー兼スポーツクリエーターの大瀧さんは、「ゆるスポーツは、シニアの方が出来る前提にしつつも、お孫さんや若者と一緒でも出来るように設計している。」と言います。
そのため、こたつホッケーでは湯のみに入れるお茶の量で、動かす速度を制限し、競技の難しさを調整出来るようになっています。体験会では、お茶を多く入れた職員と高齢者の方が、白熱した試合を行っていました。また、トントンボイス相撲では別のマイクで周囲の音を拾うようになっていて、周りの人も参加出来るようになっています。
このように、周りの人が参加出来るようなゆるスポーツを作ることで、高齢者の周囲が明るい雰囲気になったり、コミュニケーションが増えたりすることも狙いだと言います。
大瀧さんは、今回の体験会の反応について
施設職員の方が(優勝者の方が見せた笑顔に対して)「あんな笑顔は見た事がない。」と言ってくれたときは嬉しかったですね。2位になった人が悔しがっているのも良かったです。次までの目標になると思いますからね。
と振り返りました。
ゆるスポーツ協会の大瀧篤氏
大瀧さんにこれからの、高齢化社会に対するゆるスポーツの取り組みについて尋ねると、
笑顔を生み出すスポーツを薬として、各自の健康にあった形で提供していきたい。超高齢化社会にむかう我々だからこそ、老後の生活の中に全力で楽しめる瞬間を作っていく事はとても大事なことだと思っています。
ゆるスポーツで一番になるということは、そのスポーツの世界一、つまり世界チャンピオンになるということです。
いつか参加する高齢者がそれぞれ活躍出来るゆるスポーツを開発し、全員が何かしらの競技で世界チャンピオンになるという社会を作るというのが目標です
と語ってくれました。
今回の体験会では、奇しくも各ゆるスポーツの優勝者は全員違う人でした。近い将来、本当に誰もがスポーツの世界チャンピオンになれる時代が来るのかもしれません。
INFORMATION
大瀧篤 氏
世界ゆるスポーツ協会 プロジェクト・プロデューサー/ スポーツクリエーター
大学院にて人工知能の研究。現在、広告代理店クリエーティブ職。
テクノロジーや行動デザインの知見を武器に、広告領域に限らない新規プロジェクトの企画・プロデュースに多数携わる。
INFORMATION
ゆるスポーツ協会ホームページ
http://yurusports.com/