スポーツの効果を最大化するスポーツファシリテーター「AIR PRODUCER」
SUPPORTスポーツの効果を最大化するスポーツファシリテーター「AIR PRODUCER」
中立の立場を取り、会議を円滑に進めることをミッションとする「ファシリテーター」。
ビジネスの場での重要性については広く知られていますが、スポーツ活動の場においても円滑な進行や、誰もが楽しめる雰囲気作りのために、重要な役割を果たすという認識が高まっています。
今回、スポーツから生み出される副産物というテーマで、スポーツにおけるファシリテーターの役割について、ディスカッションを行う場が設けられました。
この場に集まったのは、「スポーツ弱者を世界からなくす」をテーマに誰もが出来るスポーツの開発を行う世界ゆるスポーツ協会の代表澤田智洋氏、都内を中心に様々なニュースポーツを体験するイベントを企画するNPO法人スポコレの代表理事八所和己氏、JFAが主催する夢先生などで活躍するハンドボール元日本代表キャプテン東俊介氏とスポーツファシリテーションの経験が豊富なそれぞれの団体のメンバーです。
左:東俊介氏、右:八所和己氏
スポーツには「思わぬ価値」がある
会の進行にあたって、まず再確認したことは、「スポーツには様々な副産物がある」という点です。
スポーツを行なうことによる成果・目的としてはまず勝利や栄誉。そして体を動かすことによる健康維持などの効果がわかりやすいものとしてあげられます。
しかし、多くの人にDOスポーツを楽しんでもらう活動を行っている参加メンバーからは、他にも数多くの効果があるという意見があがりました。例えば、コミュニケーション。スポーツを行うことにより、新たな友人が出来たり、今まで知ることのなかった仲間の一面を知ることが出来ます。また、心の健康という点も見逃せません。体を動かすことによるストレスの発散効果。目的を達成することによる達成感。そして様々な人達と場を共有することにより得られる一体感。これらはスポーツの効用として無視することが出来ない内容となります。
これらの効果を最大化するためにスポーツファシリテーターの役割が重要であるという認識を改めて共有しました。
誰もが楽しめるスポーツを行う為に重要なこと
その後はそれぞれの持っているノウハウを元に、スポーツイベントの現場においての具体的な手法についての議論が行われました。
「誰もが楽しめる」ということをテーマとしたイベントで問題となるのが、スポーツ経験や運動能力、それぞれの志向(思いっきりやりたいのか楽しくやりたいのか等)のギャップです。
今回のディスカッションの中では、ある程度のギャップは織り込み済みの中で、全体の底上げを行うことが重要ではないかという意見が出ました。
その際に重要なポイントとして上がったのは以下の内容です。
- 方向性を揃える
- 今回は何を目的としているイベントなのかを全体に再認識させることが重要となります。「競技性を高める場」なのか、「思いっきりスポーツをやる場」なのか、それとも「参加者全員が楽しんでもらう場」なのかを事前に参加者に説明を行います。また、小学生などについては「ふざけない(独りよがりの楽しみにならない)」、「人の話をきちんと聞く」といったルールを事前に提示することがポイントであると、夢先生などの活動を通して幅広い年代への指導が豊富な東氏からは意見が出ました。
- 参加者が参加者をフォローできるようにする
- 上手な参加者はむしろ運営側の視点を持ってもらうように誘導するという手法を話してくれたのは八所氏。参加者の中でも経験や技術を持っているプレイヤーに対しては、運営側のフォローをして欲しいというように伝えるそうです。それにより、未経験者や苦手なプレイヤーにも手厚いフォローをすることが可能となります。
- 許容する雰囲気作り
- 誰もが出来るスポーツを数多く開発してきた澤田氏は、失敗した時に雰囲気を盛り下げないという点についての重要性を語りました。自身がスポーツが得意でなかったという経験からゆるスポーツを開発した澤田氏は、スポーツが苦手な人は失敗した際に萎縮してしまい負のスパイラルに嵌ってしまうと言います。その為、ゆるスポーツでは失敗したプレイヤーがむしろ「おいしい」と思われるような仕掛けを用意しているそうです。
参考:ブラックホール卓球
スポーツファシリテーターは変幻自在のAIR PRODUCER
今回のディスカッションで最もクローズアップされたのは、スポーツにおけるファシリテーションのポイントは日本人独特のニュアンスである「空気」を作るという点でした。
この「空気」をコントロールし、グループ全体を推進するという意味で、スポーツファシリテーターを「AIR PRODUCER」と呼ぶことが決定しました。
このAIR PRODUCERは、状況に応じて様々な役割を果すことが求められます。ある時は全体のバランスを管理するBALANCER、またある時はイベント・チームの方向を決めるDIRECTOR、教育をする立場のEDUCATORであったり、参加者をフォローするSUPPORTORであったりもします。時には、場を盛り上げるために笑いを提供するCOMEDIANの役割をすることもあれば、参加者を盛り上げるため、ライブを行うMUSICIANとして振る舞うことも必要となってきます。
このようなスキルはスポーツ活動だけに留まらずビジネスの場や生活における対人関係についても非常に汎用性が高いものと言えるのではないでしょうか。「スポーツから生み出される副産物」は参加者だけでなく、イベントを進行するAIR PRODUCERにとっても大きな成果となるのです。
最後に、今回の参加者全員が共通していたことは、イベントを実施する毎に新たな発見があるという点でした。もしかしたらAIR PRODUCERのスキルとして、もっとも大事な素養は、いつまでもSTUDENTであるということを忘れない点かもしれません。
TOP画像 Photo by 越智貴雄