欧米で人気急上昇中。Hyrox とDeka Fitは「次のクロスフィット」か
DO欧米で人気急上昇中。Hyrox とDeka Fitは「次のクロスフィット」か
アメリカで『Hyrox』と『Deka Fit』という新しいフィットネス競技の人気がここ数年で急激に高まっています。
Hyroxはドイツ発祥で、第1回目のイベントが行われたのは2017年のことでした。Deka Fitはさらに新しく、障害物レース『スパルタン』の1部門として、2019年から始まりました。つまり、どちらもコロナ禍が始まる少し前に誕生し、パンデミックの苦境を生き残ってきたスポーツだということになります。
HyroxもDeka Fitも中~長距離のランニングとフィットネス種目を組み合わせたレースです。フィットネス種目とは、たとえばバーピー、ランジ、スレッド・プッシュなどのことです。こうした、本来は全身を鍛えることやダイエットを目的とした運動を競技化したのはクロスフィットの功績だと思いますが、これら後発組イベントの人気は今や本家本元を追い抜きそうな勢いです。
クロスフィット指導者の端くれとしては手放しで喜んでいられる状況ではないのですが、ひとりの運動愛好家としては、選択肢が広がることに不満を申し立てるつもりはありません。むしろ、一体どのようなものなのか、少なからず興味がありました。
TOP画像:Stockholm HYROX lunges.jpg
“Stockholm HYROX lunges” by HybridFitty is licensed under CC BY 4.0.
HyroxとDeka Fitはクロスフィットとどのように違うか
Deka Fitイベントで力走する競技者たち
Hyrox とDeka Fitの競技形式はよく似ています。Hyroxは1000m走を8回走ります。そして1回走るごとに、異なるワークアウト種目を行います。Deka Fitは500m走を10回走ります。やはり1回走るごとに、異なるワークアウト種目を行います。ワークアウトの内容もかなりの部分で重なります。詳しくはそれぞれの公式ウェブサイトを見てください。
- Hyroxのワークアウト:https://hyrox.com/the-fitness-race/
- Deka Fitのワークアウト:https://deka.fit/zones/
Hyroxの方が走る距離がやや長く、各ワークアウトの強度も高い印象があります。もっとも、どちらのレースも個人ですべてを行う部門のほかにペアやリレー形式の部門がありますので、必ずしもガチガチのアスリートだけしかお呼びではないというわけではないようです。
Deka Fitイベントを終えたばかりの競技者たち
クロスフィットと大きく異なるのは、HyroxもDeka Fitもレースで何をするかがあらかじめ分かっていることです。そんなこと当たり前でしょ、と思われるかもしれませんが、クロスフィットではそうではありません。
「予測不可能な未知的状況への対応」ができる身体作りを目指すクロスフィットでは、日々のトレーニングも競技も毎回内容が変わり、アスリートはワークアウトを始める直前まで何をするかを知らされないことが普通なのです。
もうひとつクロスフィットとの違いを挙げるならば、HyroxとDeka Fitのワークアウトは体力的にキツイことがあっても、テクニック的にはあまり難しくないことでしょう。
クロスフィット競技で指定されるワークアウトには、逆立ち歩行やマッスルアップなど、人によっては1回もできないような難易度の高い動作が含まれることがあります。重量挙げのような種目でも、私などには絶対に挙げることができない重量を指定されることもあります。
それに対して、HyroxとDeka Fitのワークアウトは誰でもできる動作をランに組み込むことで、シンプルな体力勝負になっているように私には見えます。
巨大コンベンション・センターで行われたDeka Fit
アナハイム・コンベンション・センター
4月20日にカリフォルニア州アナハイムでDeka Fitのレースが行われたので見学してきました。
会場となったコンベンション・センターはディズニーランドのすぐ近く。2017年のウエイトリフティング(重量挙げ)世界選手権はここで行われました。立派な会場です。
巨大な会議場のひとつに作られたコースは500mを走る外周レーンがあり、その内側はワークアウトごとに設けられたゾーンに分けられ、それぞれに用いる器具が並べられています。
ワークアウトのひとつ。重いメディシンボールをバーの向こうに投げることを繰り返す。
雰囲気としては、スパルタンなどの障害物レースに似ている気がします。こちらは屋内ですので、競技者の熱気がよりダイレクトに伝わってきました。
とは言え、どのワークアウトも単調な動作の繰り返しです。やっている方は大変なのでしょうが、他人が頑張っているところを見ていても、正直なところ、それほど面白いものではありません。やはり、これは「見る」より「やる」スポーツだと思います。
どこでもできるDeka Fire
今のところ、HyroxとDeka Fitも日本には未上陸ですが、欧米を中心にアジア各国などにも広がっています。日本のクロスフィット・ジムではHyrox用トレーニングのクラスを新設する動きもあるようです。近い将来、日本でも経験できるようになるのではないでしょうか。
また、Deka Fitは自重種目だけで構成されたオンライン版ワークアウト、Deka Fireを公式ウェブサイト上で公開しています。こちらは5メートルのスペースさえあれば、いつでも誰でもできます。タイムをアップロードして、世界中に散らばる同好の士と競い合うこともできます。
- Deka Fire:https://deka.fit/dekafire/
10個のワークアウト内容は以下の通りです。
1)Zone 1 – リバース・ランジ 30回(片足15回ずつ)
2)Zone 2 – ハンド・リリース・プッシュアップ(地面で手を離す腕立て伏せ) 20回
3)Zone 3 – シットアップ 30回
4)Zone 4 – スクワット・ジャンプ 30回
5)Zone 5 – ベア―・クロール(前方、後方) 50 メートル
6)Zone 6 – シャトル・ラン 100メートル
7)Zone 7 – 横方向ジャンプ 30回(1方向15回ずつ)
8)Zone 8 – プランク・ショルダー・タップ 30回(片方15回ずつ)
9)Zone 9 – 横方向シャッフル 100メートル
10)Zone 10 – バーピー 20回
各動作の説明動画 – Spartan DEKA FIRE
50メートルとか100メートルとかは5メートルのコースを行ったり来たりする合計距離です。ご覧の通り、シンプルで簡単な動作ばかりです。ただ、これをぶっ続けでやると体力的にはかなりキツイことは、実際にやってみれば分かるでしょう。
もちろん、私も試してみました。タイムは大体10分くらいでした。とくに速くも遅くもありません。
Deka Fire挑戦中の筆者
経験から申し上げるとすれば、体力と根性さえあれば、誰でもできます。全身持久力と心肺能力を鍛えるトレーニングとしてもかなり有効だと思います。
興味のある方は、一度試してみては如何でしょうか。