5人の日本人選手も力走、UCIシクロクロス・ワールドカップ ベニドルム大会
WATCH5人の日本人選手も力走、UCIシクロクロス・ワールドカップ ベニドルム大会
2025年1月19日、スペインの代表的なリゾート地であるベニドルムで、UCIシクロクロス・ワールドカップが開催されました。今年で3回目の開催を迎えたこの大会には日本人選手が5人出走し、世界トップクラスの選手と同じコースの上でレースを戦うことになりました。
この日の大会の様子をスペインからレポートします。
TOP写真:男子ジュニアのカテゴリーに出走した、山田駿太郎選手(写真右)と田島綾人選手(同左)。Photo by Yukari TSUSHIMA
スペインにおけるシクロクロスとは
スペイン・シクロクロス界のエース、フェリペ・オルツ(写真右)。Photo by Yukari TSUSHIMA
シクロクロスとは自転車競技の一種で、一周2㎞~3㎞のオフロードコースを走る競技です。冬に開催される競技で、選手たちは泥だらけになりながらレースをします。場合によっては、雪の中を走ることも少なくありません。
スペインは自転車競技が盛んな国ですが、伝統的に人気があるのはロードレースであったため、かつてシクロクロスはそれほど競技人口の多い競技ではありませんでした。
しかし、その傾向はこの10年ほどで一気に変わります。多くのロードレースの選手が冬のシーズンオフにトレーニングと気分転換を兼ねてシクロクロスのレースを走ることが増えたことに加え、スペイン人選手のフェリペ・オルツがヨーロッパのシクロクロスのレースで活躍するようになったことで、多くのサイクリストがシクロクロスに参戦するようになりました。
いまでは、スペイン国内で開催されるシクロクロスのレースでは、必ずと言ってもよいほど子供たちのレースが開催されており、小さなころからシクロクロスを経験できる環境が整っています。
ベニドルムの大会でも、コースを走る親子サイクリストを数多く見ることに。Photo by Yukari TSUSHIMA
今回のベニドルムの大会では、男子ジュニアカテゴリーでスペイン人選手のベンジャミン・ノバル選手が4位に入って会場を大きく沸かせ、スペインでもシクロクロスを楽しむ人が確実に増えていることを感じさせました。
急斜面の公園がレースの舞台に
男子アンダー23カテゴリーに出走した遠藤紘介選手。レース会場となったのは、ベニドルム市内の丘の上にある公園とスポーツセンターが隣接する場所。Photo by Yukari TSUSHIMA
ベニドルムでUCIのシクロクロス・ワールドカップが開催されるのは、今年で3回目。過去2回と同様に、市内の高台にある公園とスポーツセンターが併設された敷地に、コースが設定されました。
ベニドルムは港町であるため、海に向かって下り坂が続きます。そのため、今回のシクロクロスの会場の中だけでも高低差がかなりあり、場所によっては観戦が禁止されるほど急な下り坂の区間もありました。
海辺の街ということもあり、当初は風の影響も心配されました。しかしレース当日は風もなく、気温も14度まで上昇。青空のもとで大会が開催されることになりました。
レースの前々日にベニドルムに雨が降ったものの、基本的にはコースはドライなコンディション。湿気も気にするほど高くなく、非常に走りやすいレースコンディションでした。
日本人選手が5人出走
織田聖選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
今回のベニドルムの大会には、5人の日本人選手が出走しました。
午前9時という早い時間のスタートとなった男子ジュニアカテゴリーでは、山田駿太郎選手と田島綾人選手の2人が出走しました。
山田駿太郎選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
今回の大会のコースがシクロクロスとしては比較的コースの幅が広いこともあり、レース中の平均時速は26.11㎞にまで達するスピードレースとなりましたが山田選手も田島選手も無事に完走し、今後のレースでの活躍に期待を持つことができる結果となりました。
田島綾斗選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
男子アンダー23カテゴリーには遠藤紘介選手が出走しました。しかし、体調不良もあり、レースを途中でリタイアすることになってしまいました。レース後、遠藤選手は「最初の一周を走ってみて、今日の自分の体調で走りきれるような簡単なコースではないことがわかった。」と語り、この日のコースの厳しさを強く感じていることが伺われました。
この日のメインレースとも言える男子のエリートカテゴリーには、日本チャンピオンの織田聖選手と梶鉄輝選手の2人が出走しました。50人の選手が出走したこの日の男子エリートカテゴリーの平均時速は、27.26㎞のスピードを記録します。加えて、先頭集団のスピードがほとんど落ちることなく後半もレースが進みました。
梶鉄輝選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
こうした速いレース展開に対し、日本人2選手は終始非常に苦しい戦いを強いられます。その結果、梶選手はレースを途中棄権し、織田選手はトップから4分遅れの38位でゴールしました。
Olanda Baseの活動
前述の通り、今回のベニドルムの大会では5人の日本人選手が出走しました。彼らの走りを裏方としてバックアップしていたのが、Olanda Baseという日本人のグループでした。
ベニドルムのレースに出走した梶選手を中心とするOlanda Baseは、ヨーロッパでレースをする日本人選手をサポートする活動をしており、今回のレースではベニドルム近辺のトレーニング環境を実際に見るという目的もあったとのことでした。
さまざまな形でヨーロッパのレースに挑戦する日本人選手が増えていることを改めて実感する、ベニドルムでのシクロクロスの一日となりました。