スペインのサッカー・スタジアムを巡る PART4: エスタディオ・デ・バリェカス(Estadio de Vallecas)

スペインのサッカー・スタジアムを巡る  PART4:  エスタディオ・デ・バリェカス(Estadio de Vallecas) WATCH

スペインのサッカー・スタジアムを巡る PART4: エスタディオ・デ・バリェカス(Estadio de Vallecas)

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スペインのサッカー・スタジアムを巡るこの企画、第4回目の今回は、マドリードの下町を代表するチームの一つであるラヨ・バリェカーノ(Rayo Vallecano)の本拠地である、エスタディオ・デ・バリェカスを訪れます。ある意味において、リーガ・エスパニョーラ名物であるこのスタジアム。一度ここで試合を見てみるのも、よいスペイン滞在の思い出となることでしょう。

TOP写真: Photo by Yukari TSUSHIMA

スタジアムの歴史


選手たちのロッカールームへの入口。TOP写真: Photo by Yukari TSUSHIMA

スペインの首都・マドリードの南東側に位置するエスタディオ・デ・バリェカス。マドリードの中心部から地下鉄一本で行くことができるアクセス抜群のスタジアムで、客席数は14505人です。

このスタジアムが建設されたのは1973年。もともとこの場所にはラシン・デ・マドリード(Racing de Madrid)というフットボールチームのスタジアムがありました。このチームが他の場所へスタジアムを移転させたときの跡地に建設されたのがこのエスタディオ・デ・バリェカスです。

このスタジアムは、過去に何度かその名前を変えています。建設当初は「ヌエボ・エステアディオ・デ・バリェカス(Nuevo Estadio de Vallecas)」という名称でした。しかし、1999年、その名前が「カンポ・デ・フットボール・デ・バリェカス・テレサ・リベロ(Campo de Fútbol de Vallecas, Teresa Rivero)」へと変更されます。

このとき、スタジアムの名前となったテレサ・リベロ氏は、1994年から7年間に渡ってラヨ・バリェカーノのチームの会長を務めました。彼女は、リーガエスパニョーラのトップクラスのチームの会長に就任した、最初の女性だったのです。その後、2011年にリベロ氏の会長辞任に伴い、再度スタジアムの名称が変更された結果、現在の名称になりました。

エスタディオ・デ・バリェカス名物の「壁」


名物の「壁」ごしに観客席を眺める。Photo by Yukari TSUSHIMA

実は、このスタジアムは、「壁があるスタジアム」として非常に有名なのです。次の動画をご覧ください。

前半にバルセロナFCが決めたゴールの後ろにご注目ください。そこにあるのは、実は観客席ではなく、大きなポスターです。
つまり、グラウンドの一部が、壁によって囲まれているのです。

スペインでも、このようなスタジアムは他にありません。そのために、このスタジアムはヨーロッパ中で有名なのです。ちなみに、この壁越しにスタジアムを覗いてみると、このような風景を見ることができます。

Photo by Yukari TSUSHIMA

しかし、ここで気になるのが、「壁の向こうには何があるのか」ということではないでしょうか。実は壁の反対側にあるのは、6階建ての普通のマンションなのです。


Photo by Yukari TSUSHIMA

もちろん、このマンションは、このスタジアムで試合が開催されたときの特等席となります。

スタジアムを襲った停電事件


Photo by Yukari TSUSHIMA

もうひとつ、このスタジアムが有名になった理由があります。過去に、ここで開催されるはずだった試合が、スタジアムの停電のために中止されたことがあったのです。

そんな大事件が起こったのは2012年9月23日、そして対戦相手はレアル・マドリードという、大一番のを控えた夜のことでした。すでに両チームの選手たちはこのスタジアムへ到着し、ウォーミング・アップをはじめていました。そのとき、会場の照明へと電気を送る、すべてのケーブルが切断されていることが発覚します。

この時点で、試合開始1時間前。

スタジアム側がなんとか照明を復旧させようとしましたが、その努力はかなわず、結局この日の試合は中止となってしまったのです。リーガ・エスパニョーラの歴史を見ても、このような形での試合の中止は多くはありません。後日、この事件はラヨ・バリェカーノの「ウルトラ」と呼ばれる過激な応援団によるものと判明します。

ちなみにこの停電事件時、状況を説明する当時のラヨ・バリェカーノの会長が記者会見で語った有名な言葉が「テロリズモ・フットボーリスティコ(terrorismo futbolístico)」。日本語に訳すと「フットボール・テロ」という感じになるのでしょうか。

スペイン国内からも「テロリズモ・フットボーリスティコ、っていう表現は、さすがに大げさすぎる」と、しばらく笑い話のネタになっていました。

観戦に行くなら


Photo by Yukari TSUSHIMA

マドリードの中心地からも近いこのスタジアム。アクセスに困ることはほとんどないでしょう。しかし、このスタジアムで試合を観戦するときに注意しなくてはいけないのことが、2点ほどあります。

一つはメトロ(地下鉄)の最寄り駅についてです。この最寄り駅は、本当にスタジアムの足元にあります。しかし、この駅自体は決して大きな駅ではありません。そのため、このスタジアムで試合があったときには、この地下鉄の駅が大変混雑するであろうことが予想されます。試合前後は時間の余裕を見て、行動したほうがよいでしょう。

2点目は、スタジアム周辺の環境についてです。

バリェカス地区自体は、最近になって比較的安全になった地区ではあります。そのため、日中歩く分には、全く問題はありません。しかし、特にスタジアムの周辺は夜になると雰囲気が一変し、若干の危険な雰囲気が漂い始めます。夜の試合を見に行く時は、人通りの多い道を歩き、たくさんの観客が出入りする場所から、スタジアムに入るようしましょう。

そして、試合後には、すぐにホテルなどに戻ることをお勧めします。とはいえ、マドリード市内にありながら、観客と選手との距離が本当に近いエスタディオ・デ・バリェカス。スペインで、リーガ・エスパニョーラの試合を生で見たい人には、お勧めしたいスタジアムのひとつです。

参照:https://www.20minutos.es/deportes/noticia/apagon-vallecas-rayo-madrid-bukaneros-1742767/0/(2019年2月14日)

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